第一章 温泉と山登り

1-①

 今は、彼女の事を忘れる為の旅の途中で、とある県のとある温泉町おんせんまちに居る。あの時、急に彼女に別れを告げられてから二年が経つ。

 はあ……、と溜息を吐き、下を向きながらこの温泉街おんせんがいの道を歩く。


 ドンッ……。

 ぶつかった。相手が持っていたコンビニエンスストアのビニル袋からペットボトル飲料やお弁当等などが転がっていく。

「痛てて。あ、すいません。」

 いつもこうだ。人とぶつかった時はいつも相手に先に謝られる。自分も先に謝ろうとしているがボーッととして居ることが多く、口と体が即座に動かない。

「こちらこそすいません、僕がボーッとしていたから……。あと、弁当ぐちゃぐちゃになっちゃって、本当にすいません。」

 地面に落ち、ぐちゃぐちゃになった弁当と一部分がへこんだペットボトル飲料を拾い相手に渡すと、相手は「いえいえ、こちらこそ、すいませんでした。」と言いながら歩いて行ってしまった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る