Rev.xxx 困惑
どうしたら、いいのだろうか。
俺は再び資料館の前に戻されて動けなくなった。何が正しいか分からなくなったのだ。
改めて考えてみると俺達がしてきた事は、物語の進行には必要な事だったが、俺達自身にとって本当に必要だったかと言われると疑問であった。進行しなければ延々と時間がループするのは、デメリットでもあるが、その後何が起きるか分からないという事であれば、それはメリットにも成り得る。係員はそう言いたいのだろう。その気持ちも理解出来る。
何より恐ろしいのは、物語の完結後が全く想像出来ない事だ。この二時間を延々にループし続ける限り、俺が俺である事を自覚出来る。だがこの話が終わったらどうなる?分からない。そもそもこの話が始まったであろう今から一時間前、それよりも前の記憶もあやふやというか、本当に自分が体験した記憶かが疑わしく感じられた。となれば、作品が完結してしまったら、どうなってしまうのか。背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「…怖いわね。」
声子も青い顔で言った。同じ事を考えていたようだ。
資料館に入れない。入ったところでどうするというのか、どうなるというのか、どうすべきなのか。俺達は無言でじっと考え続けていた。このまま二時間じっとしていた方が良いのだろうか。それとも、話を進めるべきなのだろうか。俺の答えは出ない。
「…どうする?」
声子に問うが、答えはない。彼女も考え込んでいた。どうすべきかを。
そう、ここで決断しなければならない。
進むべきか、進まざるべきか。
それを決断するには、創作物の住人という立場を改めて自覚し、その上でそれが生きるというのはどういう事なのかを考えるしか無かった。
それには相応の時間–––隕石が落下し、住人が食い荒らされるまで–––が必要であった。
そして、また資料館の入り口へと戻ってきた。
「…行こう。」
俺は声子に言った。
「…どうするつもり?」
彼女は尋ねた。
俺は、しばし目を瞑り、そして自分の決断を口にした。
「話を進める。世界を、救う。」
「いいの?ループが終わった後どうなるか分からないのよ?」
「…いい、と思う。俺はそう考えた。説明するから、着いてきてくれ。」
あの係員を説得するためにも、彼の前で話した方が良いと思ったのだ。彼女は静かに肯くと、俺達は資料館の中へと足を踏み入れた。
結論を出すために。
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