Rev.2
川沿いには人が溢れていた。どこに逃げれば良いかと慌てふためき泣き叫ぶ者、ここぞとばかりに簒奪に走る者、諦めて地に座し天を仰ぐ者、最後だからと川に入って泳ぐ者。様々な人が各々の終末を迎えんとしていた。
俺と声子はそんな人混みを掻き分けながら、資料館へと走っていた。
「ここよ。」
資料館の前で声子は足を止めた。資料館の周りも中にも人気は無く、誰かが出ていったのか、戸が開け放しになっていた。普通は受付でチケットを買ってから入るのだが、生憎受付にも人が居ない。非常事態という事で、勝手に入らせて貰った。字数が無いんだ。分かって欲しい。
江戸時代の蔵を改築して利用しており、雰囲気を出すために光量の少ない電球を使用していた。漆喰の壁をそのか細い光が照らしている。その壁に沿うように、少々場違いとも言えるショーケースが置かれており、その中にはこの地域に残されていた書物などが飾られていた。
「確か二階だったはず。」
声子の言う通りに順路を辿って二階へ向かった。
二階に上がった先には、まず掛け軸があった。二メートルはあろうかという縦長の大きなものだった。上の方には、鬼のような顔をした巨大な赤い男性が、火を纏い天から降りてくる姿が描かれている。その手には何か球状の物を携えていた。そして下の方には、それを迎撃するかのような格好で、同じく巨大な、こちらは女性の姿が描かれている。その手には槍があった。そしてその足元には木製の家々や蔵が描かれていた。恐らく当時の街並みなのだろう。この掛け軸こそが『炎と海の神の伝説』の書である。俺はこれを見て、昔見て少し怖くなった事を思い出していた。
「おお…改めて見ると何とも素敵ね…。」
リアクションが薄い気もしたが仕方ない。時間と時数の関係だ。
さて問題の槍だが、それらしいショーケースは何処にも無かった。
「…無いね。」
「…無いわね。」
声子が冷めた声で答えた。初回は恍惚としていたのにとんだ変貌ぶりである。結果が分かっているだけに仕方のない事かもしれない。
「さて何処にあるか…。私の記憶だと四箇所くらい心当たりがあるんだけど…。」
彼女はこの街の資料館について話してくれた。その内容を整理してみる。
まずここが川沿いの資料館「一ノ瀬資料館」。一番街の外側にある資料館である。
ここから歩いて十分くらいの場所にあるのが「二宮資料館」。ここは古い家屋を補強した資料館で、展示物は少なく、どちらかと言うと資料館自体が展示物となっている。展示物が無いわけではないが、槍が置いてある可能性は低い。
次に近いのが「三枝展示館」。一ノ瀬資料館から歩いて約二十分くらいの場所にある。ここは一ノ瀬資料館と同じくらいの大きさで、内容も似ている。伝承にも触れているので、展示されている可能性はある。
次が「四谷博物館」。歩いて三十分といったところだろうか。これは俺も知っていた。この街で一番大きな博物館だ。歴史関係の展示物も多い。槍は見た事無いが、気にしていなかっただけで何かしら置いてあってもおかしくはない。
一番遠いのが「五十嵐資料館」。俺はここは行ったことがほとんどないが、声子は良く行っていたらしい。槍の実物が置いてあるのもここが一番可能性が高いという話だった。ただし問題はその位置。一ノ瀬資料館が街の南端で、五十嵐資料館は街の北端といった位置関係にある。歩きだと一時間は掛かるだろう。
「五十嵐資料館は遠すぎるな。」
俺の言葉に声子も同意した。
「そうね。でも一番可能性は高いわよ。」
「ただ時間が惜しい。まずは三枝展示館へ行こう。」
一番手近で、可能性がそこそこある。虱潰しに探すとループの回数が増えて俺達の気が滅入るので、可能性が高く近い場所から行った方がいいだろう。声子もその考えに同意した。
「そうね。本当は五十嵐資料館が一番いいんだけど…。」
俺達は二階の窓から外を眺めた。街の中は騒がしく、街の中央を通る広めの車道にも人が溢れていた。この車道沿いに歩いていくのが五十嵐資料館への近道なのだが、それは叶いそうにない。タクシーもおよそ通れるようなものではないだろう。
「どこに行くにも苦労しそうだな。」
溜息を吐くと、俺達は階段を降り、未だ人がいない受付の横を通って、喧騒の中へと戻っていった。
「というところで後200文字無いって所ね。」
「くそっ、時間切れか。」
俺は舌打ちをした。世界が暗転する。
『今回はいい感じに進行できたので、そのまま進めてくれ。』
作者が言う。何様だ。…作者か。
『後、すまんが行動はあまり変えないで欲しい。特に掛け軸に対する反応。声子のキャラを描写する上でも、掛け軸に対する反応は必要だと思うのだ。』
「次から気をつけてあげるわ。今回はアンタが後で直しなさい。」
声子は諦めたように答え
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