第一章 x=2:そしするほうほうをさがそう
Rev.1
俺は、二人残された教室に呆然と立ち尽くしながら、同じく残された声子と目を合わせて言った。
「これからどうしたもんだろう。」
声子は答えた。
「まだ死にたくはないわ。とにかくあの隕石を破壊しましょう。」
無茶苦茶を言うな、と思った。俺はただの学生である。何か魔法を使えたり、異世界の住人の転生体というわけでもない。そんなただの人間に何が出来るというんだ。大体、あと一時間しかない。たった一時間で、どこに着弾するか分からない隕石を破壊しろと言われても、はい頑張りますと言って出来るようなものではなかろう。
俺は外をもう一度見た。赤い石が空に浮かんでいた。それは徐々に大地へと近づいている。
「あー、まぁそうよね。でも、このまま諦めたら、ただ私達はまた死ぬだけになるじゃない。」
"また"とか言うな。没にされるぞ。
「仕方ないでしょ。どうせ初回からあの作者が成立した話を書けるわけないじゃない。」
散々な物言いであるが仕方ないだろう。というかお前直接喋れるんだな。
「さっきまでは他の生徒が居たからテレパシー使っていただけよ。」
しかし心は読めるものなのか。中々厄介ではある。
テレパシーと聞き、ふと俺の頭に一つの考えが浮かんだ。
「テレパシーが使えるなら、それで何とか出来たりしないのか?」
それを聞いて声子は掌を天に掲げた。所謂お手上げのポーズだ。
「会話とか他人の思考の読み取りくらいよ。それも見える範囲だけ。・・・なんだつまらんとか思ってんじゃ無いわよ。」
読まれていた。俺はばつの悪い顔をした後、改めて考え始めた。どうするべきか。どの道一時間しかないのであれば、隕石の元に行く事も難しいのではないだろうか。
『やっぱり一時間は短すぎただろうか。しかしそのくらい唐突で無いとみんな慌てないと思って設定したのだが、裏目に出たようだ。』
何やら天から声が聞こえてきた。俺が驚くのと対照的に、声子は平然としていた。彼女は俺に「作者よ。」と呟いた。このように干渉してくるとは思っていなかった。
『計算が間違っていた事にするか。』
作者の呟きに俺は否定を加えた。
「いや待て。折角出来た最初の1000文字を早速台無しにするのは止めろ。というかまた同じ教師の授業聞きたくない。」
そうよそうよと声子が同意する。作者の声色には明らかに困惑の色が見えた。
『その気持ちはよく分かるが、しかしどうしろというんだ。』
「じゃあこうしましょう。」
声子はある提案をした。それを元に作者は物語を綴り始めた。
隕石を見つめていると、突然テレビから音がし始めた。あの騒ぎで誰も消していなかったらしい。そこには先程消えていったアナウンサーが、顔が真っ青で、目を腹して立っていた。目元には滴がまだ残っていた。
『さ、先程は、た、大変失礼致しました。え、えー、先程のニュースに、その、訂正が、ございます。後一時間で地球に衝突、とお伝えしましたが、こちらは誤報になります。』
俺は安堵した。それはそうだろう。地球に衝突する隕石があれば、全国各地の天文台が気付いてもっと早くに広報しているだろう。
『た、正しくは、後三時間で地球に衝突します。各国は、既に隕石に対し、ミサイルを発射しましたが、い、隕石の軌道は変わらず、・・・その落下速度も、一切変化無かった、との事です。』
誤報は時間だけかよ、と俺は心の中で突っ込んだ。そしておまけ程度に提示された追加情報が余りに絶望的であった。既に世界各国が手を打ち、それが失敗に終わったという事だ。
『み、皆さん、とにかく、慌てず、受け入れましょう。これは世界の、終焉です。生き延びる事は、出来ないでしょう。・・・さようなら。』
そして耳障りな砂嵐へと画面が変わった。
「状況が悪化してるじゃねーか!!」
俺は思わず叫んだ。
「時間が延びただけで、絶望的な状況なのは変わらねぇじゃねぇか!!」
「そうよ!!私が言ったのは『誤報ってことにして時間を延ばしたらどう?』って事だけよ?ミサイルの効果を無くせとまでは言ってないわよ!!」
『いや、人々がパニックになる描写は必要かと思って。』
作者が軽く答える。他人事だからだろうが、こちらとしてはまた死ぬ羽目になるのは御免である。俺は今回での解決は諦め、一つ提案をした。
「分かった分かった。まず三時間に延びたのは良しとしよう。次はどうすれば壊せるのか考えよう。」
作者も同意したようで、幾つか提案をしてきた。
『通常の手法では壊せない特殊な隕石、という事には出来る。隕石を壊す何かを封印した古代遺跡を出すのはどうだろう。或いは何か超能力に目覚めるとか。』
後者は避けるべきだと思う。唐突すぎる。前者の方が唐突だが幾分かマシだ。
『ではその辺りを整理して書き直すとしよう。』
ちょっと待てまだ消さな
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