Rev.7 案2:隕石襲来

 木造の教室の中で、教師の発話とノートを取る音だけが響いている。時折他の生徒のいびきが聞こえてくるが、教師はそれを無視して淡々と説明を続けている。学校の授業というのは退屈な物だとつくづく思う。教師の間延びした説明を欠伸をしながら聞いていた。

 欠伸が終わった瞬間、正にその時、俺は、この世界がもう少しで滅びる事に気付いた。理由は分からない。だが気付いてしまったのだ。

 窓の外を見た。ミサイルか?いや何も無い。ただ青い空と白い雲だけが広がっている。太陽の膨張か?確かに太陽は燦々と大地を照らしている。だがその光が急激に強くなったわけでもなく、また人類が生存出来ない程に気温が上がり始めたわけでも無かった。


 いや、違う。よく見ると青い空の中に赤い何かが煌めいている。

「ありゃなんだ?」

 思わず声を上げた。教室の視線が突き刺さる。こっちではない、向こうを見ろと俺が指を差すと、視線は自然とそちらへ向かった。老輩の教師の声は何処か、室内の生徒達は全員窓へ近づいていった。

「隕石・・・?」

 誰かが口にした。それは到底信じられない言葉であった。だがそれは通常の場合である。今正に実物としか思えぬものを目の当たりにして、信じない者は居なかった。教師は慌ててテレビを点け、何人かの生徒はスマートフォンで情報を探る。結論はどちらも同じであった。

『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。先程政府は、地球に隕石が衝突する事を発表しました。この隕石は極めて巨大であり、衝突時の衝撃で…その、地球が砕けるとの、事、です。…これは誤報じゃないのか?…し、失礼しました、正しい情報との事です。計算では後一時間で地球に衝突し、その場合、人類が生存出来る見込みは…』

 テレビとスマートフォンの両方で、同じアナウンサーの発表が再生されていた。そしてその報道は突然途切れた。アナウンサーが暴れ出し、放送を放棄して逃げ出したからだ。

 教室内が絶望に包まれた。今の放送が事実である事が理解出来たからだ。

 次の瞬間に起きたのはパニックであった。生徒達も教師も全員が急いで教室を出て行った。机や椅子を蹴り飛ばし、転んで擦り傷を作る者も居たが、そんな事に構っている暇は無いというように全員が急いで出て行った。教室にはバラバラに倒れた机と椅子、散乱した教科書、そして俺と、俺の後ろの席に居た天乃声子だけが残された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る