Rev.6 案1:異世界転移

 木造の教室の中で、教師の発話とノートを取る音だけが響いている。時折他の生徒のいびきが聞こえてくるが、教師はそれを無視して淡々と説明を続けている。学校の授業というのは退屈な物だとつくづく思う。教師の間延びした説明を欠伸をしながら聞いていた。

 欠伸が終わった瞬間、正にその時、俺は、この世界がもう少しで滅びる事に気付いた。理由は分からない。だが気付いてしまったのだ。

 窓の外を見た。ミサイルか?いや何も無い。ただ青い空と白い雲だけが広がっている。太陽の膨張か?確かに太陽は燦々と大地を照らしている。だがその光が急激に強くなったわけでもなく、また人類が生存出来ない程に気温が上がり始めたわけでも無かった。


 いや待て、何かおかしい。俺は良く目を凝らした。横にいた同級生が「何見てんだよ」という表情でこちらを見てきたが無視する事にする。俺はその先の、窓の外の景色をよく見てみた。俺の教室の窓の外には、運動場が広がっているはずである。だがそこには何故か草木が生えていた。ただの草木ではない。針葉樹でも広葉樹でも無く、まるで二本の幹がくるくると交差している、新種の樹々のように見えた。俺が知らない・見た事ないだけなのだろうか。

 更に目を凝らすと、何かが蠢いているのが分かった。人では無い。だが何か大きい。熊か何かに見紛う程の何かである。ちょっと見てみろと横の同級生にジェスチャーを送る。すると同級生もそれを認めたようで、何だろうと窓を覗き込んだ。


 瞬間、同級生の頭に槍が突き刺さった。


 頭から血が噴き出し、同級生が叫び声を上げた。教室は一瞬その叫声で満たされ、次にパニックに陥った。机や椅子をガタガタと揺らして生徒達や老輩の教師が慌てて外に出ていった。俺は教室の窓を恐る恐る覗き込む。そこには牙を生やした豚のような顔をした二足歩行の生物が槍を持って立っていた。それも何匹も。その姿は所謂オークと呼ばれる異世界の生物のように見えた。同級生に突き刺さった槍はあのオークが飛ばしてきたものだろう。だが俺はあんなものの実物を見た事がない。

 すると次の瞬間、廊下のガラスが割れて何かが飛び込んでくる音が聞こえた。俺はそろりと廊下を覗き込んだ。それは石だった。紐をくくり付けた石。石には赤い液体が付いていた。そして廊下には、先刻の石が命中したらしい何かが倒れていた。それは頭や体を失い、そこから赤い液体を

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