Rev.4

『またループした。もう、名前なんてどうでもいいじゃない。それよりとっととループの原因を探って、世界の滅亡を阻止しましょうよ。』

 俺の頭に無責任にも責任感があるようにも感じられる声が聞こえてくる。後者は賛成だ。だが前者は、俺の名前がどうでもいいとはなんだ。名前というのは人を指し示す単語であり、そんな足蹴にするようなことをしてはならないと思うのだ。と思う一方でその言葉に理解を示す自分も居た。正直な話名前なんて適当に決めればいいのではないか、俺の心の中の何かがそう囁いたような気がした。

「駄目だ、ちゃんと思い出す!」

 俺はそれらの誘惑を断ち切るかのように叫んだ。俺は元々こういう細かい所をハッキリさせておきたい性格だった。正確にはそういう性格だったような気がするだけだ。だが今は気になって仕方がない。自分の名前が思い出せないなど、まるで記憶喪失のようだ。俺は記憶を失ってなどいない。そう信じたい気持ちも多分に含まれているのは否定しない。

 ふと、辺りから聞こえていた筆記音が突然途絶えたことに驚いた。何があったのだろうかと訝しむ。周りを見回すと、教室内全員の視線が一点、即ち俺の元へ注がれていることに気が付いた。そこで初めて先程の絶叫を思い出した。あまりにあんまりな発言だったので声が出て、おまけに立ち上がっていたのだ。

『突然何を叫んでるのよ。みんなジロジロ見てるじゃない。』

 言い返す言葉も無い。俺はしゅんと鳴りを潜め、呆然と棒立ちしていた。周りの生徒の奇異の目が突き刺さる。俺は教室の後ろ二列目に座っていたので、前の列の生徒がこちらを見ていることがあからさまに分かってしまった。恥ずかしい。後ろからも何か目線が突き刺さるような感触を受けるが、振り向く事も躊躇われた。

 とその時、俺の眼に一人の男性の姿が目に映った。教卓に立っている初老の老人、歴史の教師だ。これだ。

『何がよ。』

 教師であれば俺の名前を知っているはず。つまり、俺の名前を言って注意してくれる、はずだ。

『"君"とかで呼んでくるんじゃないの?諦めて適当につけちゃえばいいじゃない。』

 雑な事を言うな。ちゃんとあるはずだ。さあ、先生、俺を注意してくれ。

『なんかそれだけ聞くとMに聞こえるわね。』

 煩いぞ天の声。


 そして教師はついに口を開けた!!

「あーーーーーーーー、えーーーーーーーーと、四

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