Rev.2

 木造の教室の中で、教師の発話とノートを取る音だけが響いている。時折他の生徒のいびきが聞こえてくるが、教師はそれを無視して淡々と説明を続けている。学校の授業というのは退屈な物だとつくづく思う。教師の間延びした説明を欠伸をしながら聞いていた。

 欠伸が終わった瞬間、正にその時、俺は、この世界がもう少しで滅びる事に気付いた。理由は分からない。だが気付いてしまったのだ。

 と同時に、先刻、という表現が正しいかはさておき、その記憶が蘇ってきた。俺が自宅に戻ってパソコンを立ち上げ、その、えっと、公には口に出来ないような物を起動した瞬間に意識が途切れた、という一連の流れが脳裏に舞い降りた。これは前世の記憶だろうか。それとも夢だろうか。

『それは前回の記憶だこのエロガキが。』

 俺の脳裏に声が響く。同じ声を前世でも聞いた気がする。

『気がするんじゃないわよ。聞いてるの。聞いた上であんたはそれを無視して家に戻ったんでしょうが。』

 その声をあれは夢じゃなかったのか。しかし前回というのはどういう意味なのだろうか。

『私にもよく分からないのだけど、どうやらこの世界はループしているようなの。それも奇妙な事に、世界が滅びる1000文字前から滅びるまでの間をね。』

 1000文字、という単語を聞いて俺は疑問符が浮かんだ。通常、期限とは何分後、何日後、という時間で区切られるものではないか。それなのに文字とはどういう事だ?俺はノートを見た。このつまらない歴史の授業の記録を千文字書くと世界が滅びるとかそういう話なのか。

『私もよく分からないわよ。とにかく千文字っていう区切りがあるみたいなの。その間に滅びの原因と対策を見つけて講じないといけない。私が理解出来るのはそこまで。』

 ちょっと待ってくれ、俺は口に出そうなところを紙一重というところで堪えて頭の中に聞こえてくるその声と会話を続けた。まずお前は誰だ。そして何で俺が選ばれたんだ。俺は・・・。

 自分の名前を言おうとして、俺は口に出来なかった。


 俺の名前はなんだ?


 記憶を辿り、今までの人生を振り返る。或いはノートをめくり、筆記用具を探り、自分の名前が書いていないか探す。だがそのどちらも成功しなかった。俺の名前を指し示すものは一つも無かった。これは一体どういうことなんだ?

『分からない。なーんにも分からない。だから私も困ってあー文字数が足りな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る