風呂で幕間

『ふぅー、よかった。無事に帰れた』

『お疲れ様でしたー。大学、面白かったです!』

『そう? ずっと俺と喋ってたから退屈だったのかと』

『いやいやー。いろんな服装や髪型の人がいて、見てて飽きませんでしたよ。大学って自由でいいですねー。私も行きたかったなー。あの授業は正直、退屈でしたけど』

『まあ、だろうな』

『っていうか、女の子いっぱいいたじゃないですか。なんで彼女作らないんですか?』

『いいじゃん、そんなこと。それよりさ、野村さんって、霊感がある人を探すために家に入って一人ずつ反応を確かめてたんだよね?』

『そうですよ?』

『今思ったんだけどさ、それ、家じゃなくて学校とか会社でやれば手っ取り早かったんじゃ?』

『…………』

『野村さん?』

『いいんです! 無事にこうやって、協力してくれる人に出会えたんですから!』

『ああ……えっと、なんかごめん』

『大丈夫です。それより、気を取り直してお風呂入りましょう!』

『え、なんで? 俺シャワー派だし、憑依終わってからでいいし』

『えー、いいじゃないですかー。私が隅々まで洗ってあげますよー』

『それを聞くとますます遠慮したいんだけど』

『別に、保坂さんの裸を見たいだけじゃなくてですね』

『だけじゃない? だけじゃないって言った?』

『久々に湯船に浸かりたいんです!』

『ああ、そういうこと……』



『うぃーーー、極楽ーーー』

『なんか、おっさんみたいだぞ』

『女子なんて実態はこんなもんですよー。人前では仮面かぶってるだけです』

『猫じゃなくて仮面なのね』

『です。猫は仮面の上からかぶるアクセサリーです』

『なんかよく分かんないけど、分かる気もする』

『彼女ができたらもっと分かるかもしれませんよ?』

『うーん、あんまり分かりたくないかも』

『ギャップが怖いんですか?』

『まあ、そうかもね』

『案外、許容できると思いますけどね。普段は社交的な人が実はシャイだったとしても、別に困らないでしょう? 素顔はなんか違うなーってだけで。仮面をかぶった誰かの姿は、別の誰かの素の姿でもあるわけですよ。完全にオリジナルな個性パーソナリティなんて存在しませんから』

『そういうもんかな……』

『だと思いますよー。ところで話変わりますけど、明後日って土曜日ですよね?』

『ああ』

『できれば復讐を実行したいなーって思ってるんですけど、都合大丈夫ですか?』

『ああ、大丈夫だよ』

『やったぁ! ありがとうございます! じゃ、お礼に体洗いますねー』

『いや、だからいいって』

『うふふっ! ご遠慮なさらず!』

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