第2話 主役になれない日々

 ただし、ハーツクライは最初から強い馬だった訳ではなかった。

 ハーツクライの同期だった馬には、NHKマイルカップと日本ダービー(いわゆる変則二冠)を制し「最強大王」と渾名されたキングカメハメハ、皐月賞を制しその後もマイル〜中距離路線で永く活躍、歴史的名牝ダイワスカーレットの兄としても名を残すダイワメジャーなどがいて、2020年現在から見ても屈指の「強い世代」として競馬ファンからは記憶されている。

 そんな強い世代の中にあって、ハーツクライはデビューから将来を嘱望されてはいたものの、花形の三歳春クラシックではキングカメハメハの引き立て役の域から脱することは出来ず、その後も中々G1を勝つことが出来ない「善戦マン」のまま、雌伏の日々を送っていた。


 しかし、そんな惜敗続きの日々の中でありながらも、ハーツクライは少しずつその晩成の血を開花させていった。

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