魂の咆哮〜英雄をも打倒した馬〜

緋那真意

第1話 繰り返される伝説

 まさかの光景だった。

 2019年12月22日、中山競馬場のメインレースは有馬記念。競馬ファンならずとも一度は名前くらい聞いたこともあるであろう、伝統の年末グランプリ。

 そのレースにて圧倒的な支持を集めていた、前年の三冠牝馬にして国内外のG1レース6勝を誇る歴史的名馬、アーモンドアイ。

 最強の名を欲しいままにしていたそのアーモンドアイが、為すすべも無く敗れ去ったのだ。アーモンドアイは勝馬に抵抗することすら叶わず失速、自己最悪の着順に沈んだ。

 もっとも、アーモンドアイで無くともその日の勝馬を止めることは誰にも出来なかったに違いない。

 勝馬の名はリスグラシュー。その年の初夏に行われたG1宝塚記念の勝馬にして、秋にオーストラリアで開催された南半球でも屈指の大レース、コックスプレートを日本馬として初めて制覇したアーモンドアイに勝るとも劣らない実績を重ねた女傑だった。

 そして、そんな彼女の父親こそ2005年に有馬記念を制している名馬、ハーツクライに他ならない。

 ハーツクライもまた、その当時日本競馬史上最強を謳われた無敗の三冠馬、ディープインパクトを有馬記念の舞台で打倒し、その名を高めた馬だった。

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