第1話 傷害

コンコン。

夜中の12時に教会のドアをノックする音が聞こえる。叩いている人はさぞかし非常識なのだろう。そう思いつつもレオは扉へと向かっていった。

レオは偶然目が覚め、トイレに行こうとしただけなのに、こんなことになるとはレオさえ思ってもみなかったのだ。

しかしまだ完全に覚めきってはなく、泥棒など物騒なものがいるなどとは思いもしない。

ドアを開けると、何か黒いものがレオに飛びかかってきた。


「ひゃッッ!?」


その黒い物体はレオの服を邪魔くさそうに肩のあたりを破き、首元の白い肌を見て舌なめずりした。


「これから、ご馳走になります。」

………

「…へっ???」

「あんた、空気読めないのか?俺、吸血鬼ヴァンパイアなんだけど。ここ最近ロクに食べてなくてさ、だから。」


吸血鬼ヴァンパイアと名乗る少年が、紅い眼をレオに見せつけるように顔を近づけ、


「血、吸わせてよ。そしたら、俺の仲間になってくれよ。」


と、囁いた。


暫くの沈黙の時間が流れ、最初に口を開いたのはレオだった。


「…ねぇ、本当にあなた、吸血鬼ヴァンパイア?」

「は?何言ってんの。この眼見りゃ…」

「だから?新しい強盗の手口?あと、眼もカラーコンタクト入れればそんな色になるし、絵の具だって注射すれば染まる。」

「…そんなに俺が信じられないか。」

「だってさ、ヴァンパイアの人口幾つだと思う?100だよ?この世界にいるかいないかだよ?信じろという方が無茶でしょ。

あ、でもヴァンパイアって傷の治りが速いっけ。試してみよ。」

「なっ、何をするんだ一体!?」

「いいから。早く外に出て。あと、教会から少し離れて。逃げないでよ。」


そう言い残すと、レオは教会の奥へと行ってしまった。

数分すると戻ってきて、手には刃渡り10cm程のナイフを持ってきた。


「…お前、子どもなのに物騒なの持ってるんだな。」

「もしかしてビビってる?まあいいけど。少し痛い目にあってもらうから。」

「俺を傷つけて、早く蘇生するのをこの目で見ようということか。」

「そういうこと。」


レオは言い終わらないうちに自称ヴァンパイアの青年の腹に膝蹴りをかました。


「ッッッ!!」


青年の腹部に激しい痛みが走り、続いてレオは青年を薙ぎ倒した。

レオは青年が倒れている側に近寄り、しゃがんだ。

そしてアキレス腱を思いきり切った。そしてレオは思わず見入ってしまった。

「…あッ……。」

青年の脹脛がジュクジュクと治っていくところを。

暫くして青年は起き上がったが、顔をしかめた。

まだ痛みが残っているのだろうか。

「これであなたはヴァンパイアだと証明がついたね。」

「そんなこと、こんなことをしなくても良いじゃないか…。イタッ…。なぁ、分かったろ。早く飲ませてくれよ…。」

「ダメ。」

「なんでだよ?」

「それは、あなたがヴァンパイアだから。あなた、もう溶けかけてるわよ。」

「溶けかけてって……、なんだこれっ!?」

「聖銅も知らなかった?さっきのナイフは聖銅でできてるの。あなたはもうすぐ消滅する。観念しなさいよ。」

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