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朝陽うさぎ

序章

「ごめーん、遅くなったー。」

「ああ、で、目当ての物は買えた?」

「それがね、売り切れでさ…。でも、予約しといたから大丈夫!」

「えー?何のために付き合わされたんだか…。」

「ねえねえ、タピ飲む?」

「もう飽きたよ…。せめて今日は普通にミルクティー飲みたいんだけど。」

「じゃあ行きつけの店行く?」

「そうしようか。」

陽はまだ南へ向いており、雲一つない青空でも、冬は肌寒く感じられる。

駅前の商店街は昼をやや過ぎているが、それでもまだ賑わっている。

美伽は信明と一緒に中高生の人気ブランド店の福袋を買いに行っていたが、既に売り切れの状態になっていた。

しかし、再入荷するということでその店で働いている知り合いに取って置いて貰うよう頼んだのだ。そして今はそれが終わり、帰りにクレープやらタピオカやら甘いものを食べようという話になっている。

2人が商店街を歩いているとき、1人の男、いや、男性とすれ違った。

格好はテレビ局に勤めているようなディレクターらしき服装で、やけに息が切れている。

すれ違ってしばらく距離が開き、男性は一瞬振り返った。

そしてもと来た道を全力疾走していき、美伽と信明に声を掛けた。

「おーい!そこの少年少女ー!ちょっと待ってー!」

美伽と信明はギョッとして後ろを振り向いた。

それが迫力のある顔でこっちに向かってきたので2人は男性に遠ざかるように逃げていった。

しかし、男性はすぐそこに近づいていたので、捕まり、車に詰められた…、ではなく、2人の手を握って、「頼む!映画に出演てくれないか?」

「……え?」



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