ある言葉

 今から5,6年前のことになる。私が学生だった頃に、教師から言われた言葉がある。ネガティブな意味ではなくて、とてもポジティブな言葉だ。

 教科も、どんな先生だったのかも鮮明に覚えているが、あまり詳しくは書かない。ただ、どちらかと言うと、はっきりとモノをいうタイプの先生で、初めの方は苦手意識があった。最初のテストは、どう勉強していいのか分からず、最悪な点数だった。元々勉強はできる方ではなかったので、余計に落ち込んだ。大学に進学するつもりでいたから、このままでは不味いと思い、テストでいい点数を取れるように勉強した。一応、その努力は実ったのか、回を重ねていく内に点数が上がった。

 ある時に、その先生が私に言った言葉がある。どうしてその言葉を言ってくれたのか、忘れてしまったが。先生は、私に

 「努力しているのを知っている」と言ってくれた。今でも、よく覚えている。努力という言葉を使ったか、ちゃんとしていると言ったのかは、忘れてしまった。でも、その時、自分が認められたような気がして、信頼されたような気がして嬉しかった。

 凄いねとか、そういう言葉ではなくて、あなたの努力をしっかり感じています、知っていますと言われた方が私は何倍も嬉しい。私は、自分に満足できない。きっと、自分に自信がないからだと思う。よく自信をもってとか言われるけれど、私は現状無理だと思っている。そうやって生きてきたから。だから、その言葉はどんな言葉よりも嬉しかった。寄り添ってくれている気がして、信頼されてたような気がして。言ってくれた人は、きっと忘れていると思う。さっぱりした人だったから。でも、私はちゃんと覚えている。それでいい。これから先、他の人にもそういう言葉をあげたいなと思っている。

 追記:苦手な先生と書いてしまったけれど、それ以来はなぜか仲が良くなったのは言うまでもない。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る