第5話




「──擬似魔剣『闇の不知火』」



黒欲が魔力の圧で形状が変化している。そして刀身から放出している黒炎。


そして──


「眼が青い」



アイはどこかその瞳に親しみを感じた。





「膨大な魔力で私が付けた傷の石化を緩和しているのですね」


「『銀翼の白き双竜』は石化する双剣ですが正確には氷結魔法のさらに上位の力が込められている剣です。 つまり氷です。 だから超高熱の炎は有効なんですよ」


「そこまで知っているとは。そしてその『黒炎の剣』……本当に人間なのかと疑ってしまうよ」


「僕は人間ですよ」

前世は違うけど。

しかし対人戦は非常に懐かしい。


「じゃあこれはどうですか~? 」

辺り一面に冷気を感じた。


『アクアルーラの翼』


教会が冷気に満ちている。


ロイザの剣が氷結魔法によって長くなった。まるで結昌の翼の剣だ。


この技は『あの魔女』が使っていた技。


「さっきまでの私とは違いますよ。 それに黒炎でもこの結晶は溶けません」


再びロイザの剣が襲いかかってきた。


「双剣斬撃『銀世界』」


僕は静かに『霞の構え』をした。



「獅炎一式『獅噛み炎魔』」



アイはもはや呆然と立っていた。

ユウの放った技は轟炎の突き。15歳の男の子ができる技ではない。


ロイザはユウの放った技に押し負け膝を着いた。


「君は最初から知っていたんだね。 全てを」


ロイザは双剣を地面に投げ両手を挙げた


「私の息子はどうにか見逃してほしい」


「分かりました。 情報を教えてくれたらどこへでも行ってください」


「あ、ありがとう……『闇の叡智』を探してください。それが近道です」


「闇の……叡智……?」


僕も聞いたことがない言葉だった。


「それはいったいなん──」

聞いた直後のことだった。


「ぐっっ……ふぅ……はぁ……」

ロイザの腹部に二メールほどの焦げた十字架が突き刺さった。


「ダメですよ、ロイザさん。 あの方を裏切っては。燃えなさい『快気炎』 」


紅蓮の炎でロイザを焼き尽くした。

そして十字架が持ち主の元へ自動的に戻った。


ん?……またもおかしい。あの十字架は『俺』たちが倒した始まりの魔王が持っていた武器。魔王と共に消えたはず。


「用件は済みました。 これにて私は帰ります」


何事もなかったかのように男は去っていった。


地面に刺さったロイザの剣を引き抜き、やるせない気持ちを抱いたまま僕たちは帰った。

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