第3話


赤い閃光と燃えさかる炎を目の前に僕とアイさんはその光景をただ見ているだけだった。



怒涛の連続突きを放つキヨさんの攻撃を華麗に防いでいる。しかし敵は反撃する隙がない。さすがキヨさん。


勝てないと踏んだのか敵は間合いを取り、片手を上空に上げた。


「アマリリス」

頭上に巨大な炎の花が出てきた。花びらから赤い雫が手のひらに落ちると眩い光を放出し、いつしか黄金の炎の槍となっていた。

「本気で行く……」


「それが切り札?じゃあ私も」

2本の指で刃をなぞると徐々に刃が黒くなっている。


2人が向かい合う中、空がだんだん曇ってきた。そして最後の攻撃と言わんばかりの膨大な魔力を感じる。


2つの刃が交わろうした瞬間に、僕は黒欲と赤欲を抜いた。


──影の双剣インパクトグラビティ


斬撃を吸収する技だ。 ギリギリ間に合った。


「捕縛って言いましたよ……キヨさん」



キヨさんが僕を睨んでる。

2人は距離を空け剣を下ろした。


「ユウ、何のつもり?こいつは『華炎の虎』よ。隣国のテールグラ王国最強の騎士って言われている人。こんな強者を捕縛なんて難しいじゃない?」


確かにさっきの技は凄まじかった。

「でもアイさんの為にもアジト聞かないと」


「じゃあ取りあえず一時休戦ね。そういえばあなたは何で吸血鬼ハンターの真似をしているの?」

怪訝そうな顔をしながらキヨさんは言った。


「休戦か。分かった……私はテールグラを追放されたのだ。国の方針についていけなくてな。それでやけになってこんな組織に入ってしまったんだ。たった今後悔している。それはさておき、貴様こそ加治屋をしているとは。アマント帝国最強の元騎士団長、雷鳴のキヨ」

高身長と裏腹に可愛らしい声だ。


「明らかに強い人だなって感じましたけどまさかキヨさんが元騎士団長って……凄い……」

アイさんが驚きを隠せず手で口を塞いでいた。

「別に凄くないよ。それにユウの姉とは同期で帝国魔術師の団長してるから」


「アーシャ・エーカーか。私も耳にしたことある」

姉が自分より有能であることを改めて思い知らされた。まさかテールグラの騎士にも知られているとは。


「あなたを手放すなんてあの国も馬鹿ね。吸血鬼ハンターなんか辞めてユウと共に旅でもしてみたら?そしたら次に何がしたいのか見えてくると思う」

キヨさんがこっちを見てアイコンタクトをしてくる。


「僕は全然大丈夫です。アイさんはどうですか?」

「私も全然いいよ。さっきの戦い凄かったし。心強い仲間は大歓迎」

命を狙われたばかりなのに順応性が高過ぎる。


「すまない……ありがとう。一応少年の旅の理由を聞いても良いかい?」

「ユウで大丈夫ですよ。僕はあるものを探しているんです。それが何かまだ言えませんが」

「ありがとう、ユウ。私はヒナノだ」

「ヒナノさんよろしくお願いいたします」

和解が出来てよかった。


「じゃあ今夜はうちの店に泊まって。もう夜だし」


「僕は装備の準備をして明日の夜にハンターたちと戦うつもりなので宿に戻ります。ヒナノさん、明日案内して頂けますか?」



「大丈夫だ。案内しよう。仲間として私が戦力となるところを見せなければ。それにハンターのリーダーは私でも勝てるか分からない位の秘めた力を感じた。注意してくれ」


「先ほどの戦いを見た限りあなたと同等以上の人がいると思うと逆に楽しみです。ありがとうございます」

色々試したくなるな。


アイさんが申し訳なさそうな顔をしている。


「本当に吸血鬼ハンターのアジトを潰すつもり?」

「そうですね。アイさんのためにも世界中にアジトがあるならすべて潰すべきです。他の吸血鬼の方も奴隷にされてしまいますし」


「ありがとう。じゃあ私も連れて行って。だってこれから旅を共にするもの」

アイさんは笑顔で言った。



「私武器なんて持ってないからユウ君の背中にあるその剣貸してくれる?」


「この剣は魔王の呪いの太刀です。呪いを耐えないと死んでしまうこともありますが大丈夫ですか?」


「私の魔力に反応してネックレスの効力が無くなるかもしれないから試してみたい」


僕が剣を渡した瞬間に封印が解かれたみたいにアイさんのネックレスが弾けた。


「ほらね……でもここまで壊れるとは思わなかった」

泣きそう顔をしていた。


青く黒い魔力が剣とアイさんを包み込んでいる。初めは苦しそうにしていたが無事に魔王の剣に認められたようだ。


「剣の主人はアイさんなのでもう返さなくて大丈夫です」

「ありがとう。素人だから修行しないと。あっという間にユウ君より強くなるから」

本当に強くなりそうで怖い。


「じゃあ僕は帰ります。明日またここに来ますね」


皆にそう言い残し宿戻った。




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