第2話


「た、助けて!!」

後方に数人の男たちが追いかけている。

少女は俺の後ろに身を潜めた。


「よう、ボウズ。そこをどいてくれ」

大きな斧を持った大柄の男が笑みを浮かべ言ってきた。

「いいですよ?はい」


吸血鬼なら人間くらい余裕で勝てるはず。


「君はいたいけな女の子を見捨てる気?」

少女が鋭い眼光で睨んできた。

「だって君、吸血鬼だよね?」

「そ、そうだけど戦えないの。魔法が使えないの!これ見て」

少女は両腕を広げた。

ボロボロの服…ずっと逃げていたのか。


「分かりました、助けるよ。けど色々と聞きたいことがあるから終わったら話を聞かせてください。ええっと…」


「私の名前はアイ、アイ・リヴァー・サイセンよ」

ん?サイセン?聞き間違いかな?


「サ、サイセンって言いました?」

「そうだけど何かある?」

その名前を忘れるわけがない。


「お前らさすがに長話がすぎるぞ!」

大柄の男が斧を振りかぶり襲ってきた。


「ハードロック、フェザーウインド」

剣が硬くなる魔法と軽くなる魔法で僕の得意な付与魔法だ。

キヨさんから頂いた黒欲が薄黒く光り、そして男の斧と黒欲の刃が重なった。


斧が柔らかくなっているような錯覚をしてしまうくらい、すんなり切ってしまった。

真っ二つに切れた斧が地面に落ち、男の顔が青くなった。

さすがキヨさんだ。刃こぼれも無し。


「ボウズ、何をした!斧がすんなり切れるわけがないだろ!」

「あなたの斧より強い剣だっただけですよ。後ろの方々も戦いますか?」


男たちがざわついている。おそらくさっきの光景を見て焦っているのだろう。その隙をつかないほど甘くはない。自分の身体にもフェザーウインドを使い、素早さを上げて追撃した。付与魔法の応用だ。

「お、おい!ガキがこっちに来たぞ!」

言い終わる頃には男は倒れていた。

次々と敵を倒していき、あっという間に全員を生け捕りにした。


「ありがとう、君強いんだね。その剣も格好いいし」

「そんなことないですよ。アイさんはお怪我ないですか?」

「君のおかげで無傷だよ。そういえば名前聞いてなかったな」

戦っていたから名乗るの忘れていた。

「遅くなってすみません。ユウと言います」

「へ~ユウ君か。1人で旅してるの?」

怖い笑みで言ってきた。

「そうですけど…」

どうしよう、なんか嫌な予感がする…


「少しの間私を守ってくれない?」

そうなりますよね。だってボロボロだもん。

「大丈夫ですよ。でもどうして魔法が使えないんですか?」

「幼い頃は使えたんだけど、魔法が暴走してしまって。それでお守りにお父様からネックレスを頂いたんだけど、その頃から魔法が使えなくて。原因はなんとなくは気付いていたんだけど…しかもこのネックレスが外れない仕組みになってるの。それにこれは私の宝物だから」

嫌なことを聞いてしまった。



「ところでこの人たちどうするの?」

「とりあえず門番の人に引き渡そう。その後一旦戻って休息したい」

「分かったわ。それにしてもこの森変わり過ぎじゃない?必死で走ってたから今気づいたわ」


この人は馬鹿だった。

そして俺たちは拘束した男たちを街の門番に突き出した。


俺たちはキヨさんのところに行き、さっきの出来事を話した。

「それは吸血鬼ハンターだね…この組織もずいぶん昔からあるね」

キヨさんが真剣な表情で言った。やはりそうだっか。

「そうですね。私は追いかけられる立場だからそんな組織早く潰れたらいいのに…」

確かにその気持ちは分かる。


「そう言えばなぜ君たち2人はここにいるのかな?時間も遅いのに。自分の宿に戻らないの?私も襲われるかもしれないのに」

キヨさんが嫌そうな顔をしていた。

ただ会いたかったとは言えない。

「僕も最初はそう思ったんですけど、ここに来ると落ち着いてお話が出来そうなので。あっ!すみません、紹介が遅れました。隣にいる方はアイさんです」

「アイ・リヴァー・サイセンと言います」

「私はこの鍛冶屋の店主、キヨと言います。武器で困ったらいつでも来て。」

そうだ。アイさんは魔法が使えないから何か武器を持たせた方がいいかな。

「ユウが背負っている剣がとんでもない品物な気がするのは私だけ?」

キヨさんの目が輝いていた。鍛冶師だからかな。

「運良く拾ったんですよ」

「そんなわけないでしょう。君、私に対して少し雑じゃない?」

怒った顔もかわいい。キヨさんは3歳年上の18歳だがなんだろう、愛らしい。


バンッ!

扉が急に開き、その勢いで扉が壊れた。

外には大勢の武装した集団がいた。

「吸血鬼の女の子探しているんだけど。黒い髪の毛で……あっ君だね。」

1番前の男が言ってきた。


「私の店を壊さないでもらってもいいかな?弁償して欲しいな。私の言った通り襲ってきたじゃない」

キヨさんが静かに怒っていた。カウンターの下から箱を取り出した。中には目視で分かる位の魔力が満ちているレイピアだった。


「さて…秒殺……」

キヨさんの目がマジになってる。

「雷掣ーらいげきー」

キヨさんは足元に雷属性の魔法を付与した。

そして雷の如く目に見えないほど速いスピードで店の外に移動して行った。


「火雷ーひのいかずちー」

レイピアにはビリビリと赤い電気が流れている。

速いスピードで1人ずつ倒して行き、敵の傷には電気の熱で燃えて焦げた跡が付いていた。

「本気でヤルまでもなかったな」

「もはやどっちが悪者かわからない」

アイさんが少し怯えいる。

次々とレイピアで敵をなぎたおす姿はまさに雷鬼。

怒らせないようにしよ…


「キヨさーん1人は捕縛したいです!」

聞こえているかな?


最後の1人は手練れの剣士のようだ。金髪で身長が高く、男か女か分からない。

「女か。加減はできないぞ。」

「あなたこそ私に勝つ気?」

火花が散っていた。


「イグニッションファイア」

「火雷ーひのいかずちー」

電気と炎の剣が幾度となく交わる。

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