勇者の師匠の冒険
かかっ
第1話
少年は1人森の中にいた。
周りの木々は腐り果て生き物1匹見当たらない。
だからこそ少年は立ち尽くしているのだ。
「なぜ俺は死んだんだ」と。
朽ちた木の下で剣に語りかけていた。
そして剣の視線の先には少女が走っていた。紅い瞳にかかる長い黒髪を揺らしながら。
すぐそこまで追いかけてきている男たちを背にして。
「助けて!!」
同じ黒髪の少年に叫んだ。
「お父様、お母様行って参ります!」
約束の15歳。やっと旅に行くことができる。
「あなた、やっぱり私も行きます!!」
母さんはやっぱり優しいな。たまに怖いけど。うん、まさに今ヤバい。
「お母様のお気持ちも分かりますがユウの覚悟はもう見てきたはず。それならば笑顔で送ってやりませんか?」
ハルト兄はいつも僕のこと見てくれて世話をやいてくれた。
「ハルトの言う通りだぞ。母親なら笑顔で送ってやれ。それにもしものときはアーシャに言えば良い」
父さんの最後の言葉で母さんは何も言わなくなった。
ちなみにアーシャとは僕の姉だ。帝国魔術師の団長をしている。
「ユウ。あなたは1人じゃないわ。だからいつでも帰ってきて」
「ありがとうございます。お母様」
この家族には申し訳ないと思っている。なぜなら魔法師の有名な家柄で、父さんもハルト兄もA級魔法師だ。
そして俺は幼いときから父さんとハルト兄の魔力量を遥かに超えていたが低位の魔法、付与魔法しか使うことができなかった。
ーあのときと同じ
だから剣術を磨いた。
そして長いようで短い15年が過ぎていた。
子供の体だと大人との戦いがやはり厳しい。そのため最低限の体格まで待った。
剣術の修行と微細な魔術操作の修行を10年近くやったけどあの頃に比べたらかなり実力が落ちてるな。
だがそこら辺の盗賊より強い自信はある。
サポートしてくれた家族には感謝している。優しくて温かかった。
「では、行って参ります」…
旅に出て数日が経過した。
俺はある場所に足を運んだ。それは鍛冶屋「キヨ」。店主の名前もキヨさんだ。
どうやら最近人気があるお店らしい。
旅の途中でモンスターと戦い、剣が折れてしまったので新しい剣を注文した。
重厚な扉の奥にはさまざまな剣や盾、武具が置かれている。そしてカウンターには着物という色鮮やかな服に身を包んだキヨさんが立っていた。
「頼んでた剣できてますか?」
「ああ、できている。だか、その剣はまだ進化する」
「どういうことですか?」
「そのうち分かるよ。でも君がはじめ黒赤鬼の爪、牙、皮膚を持ってきたときは驚いたよ」
黒赤鬼とはこの辺りで最強のモンスターだ。武器の素材的に自分に合った物が出来そうだったため狩ってきた。
「あと、君が持ってきた剣は不思議な壊れ方なんだよな。剣の内から壊れているというか、内側が爆発しているみたいというか…黒赤鬼と戦ってなんかあったの?てかどうやって勝ったの?」
「…たまたまですよ。」
「たまたまって……はいこれ」
白い布に包まれた2本の剣を渡された。
「黒欲と赤欲って名付けてみた。カッコいいでしょう?」
「そ、そうですね」
(まるでヤバい欲求不満みたい)
布をそっと取ると、2つの刀は装飾は何も無く鉄丸出しの刀だった。
1つは黒くもう1つは赤い刀身。名前の通りだ。
そして普通の刀の長さと違って赤欲は少し短い刀で黒欲は少し長い刀…分かりやすく言えば赤欲は小刀よりやや長く黒欲は太刀よりやや短い、と言ったところだと思う。
「これからどこかいくの?」
「決戦の森に行きます。」
「いや、君おかしいでしょう。死にたいの?瘴気を浴びたら終わりよ?」
その通りである。でもちゃんと対策は考えていた。
とりあえず我慢。
「決戦の森」それがこの森の名前だ。
かつて勇者たちと魔王がこの森で戦い、森は荒れ狂った。そして敗れた魔王が呪いとして自らの剣を大地に刺し、瞬く間に森が呪いによって枯れていった。その剣は今だにささったままで森を枯らしている。
三大魔剣の1つだ。
旅の第1目標としてその魔王の剣を手に入れたい。
対策していた「とりあえず我慢」が全然交換がなかったため自分の周囲に風魔法を使い瘴気を浴びないようにした。
決戦の森入って真ん中辺りに大きな木の下に太刀が刺さっている。
そしてもう着いたがあることに迷っていた。
勇者が意味もなくこの森を放置するはすがないと思うけど…
いや、あいつは馬鹿だった。
「よし、抜いてやる。なんかあったらその時だ」
引き抜いた瞬間辺りが明るくなった。木々も生い茂ていく。
「瘴気が無くなっていく…なんだ良かった。抜ける人がいなかっただけか」
「ヒュッ」
矢が飛んできた。
森や大地が変わっていくのに気を取られ完全に不意打ちだった。
まさか素手で矢を掴んで防ぐことになるとは。
でもこれは俺を狙った矢ではなさそうだ。
「た、助けて!誰でもいいから」
真っ直ぐこちらにきている。
「あれは…」
黒い髪に紅い瞳そして八重歯。
神代の時代にさえおとぎ話の中にしかいないダークネスヴァンパイアだ。
「あっ、そこの人!お願い、助けて!!」
(高い魔力を持っているはずなのになぜ戦わないんだ?)
そう思いながら持っていた魔剣背中に新調した剣を握りしめた。
旅に出て初めての対人戦だ。
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