法の番人

ゆきしろ氏

プロローグ

「主文、被告人を懲役二年。執行猶予三年の刑に処する。」


その言葉を聞いた瞬間、握りしめていた両の手から力が抜ける。


意味がわからなかった。どうして。なんで。


ただ呆然と目の前に居る犯人の背中を眺める。


裁判官の口上は私を置き去りにして続いているがそんなことどうでもよかった。


おかしいじゃないか。私の家族の命はそんなちっぽけな重さのものだったのか。



「…かしいだろ。おかしいだろ!なんで!私の家族を死なせておいて!」


叫ばずにはいられなかった。


「傍聴人は静粛に!」



私は見逃さなかった。一瞬犯人の口角が上がったところを。


どこぞの政治家の息子である目の前の犯人のおぞましい表情を。


でも私は無力だった。


人は法のもとに平等であるというのに。


この日私は目に見えない大きな権力という力に負けたのだ。



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法の番人 ゆきしろ氏 @yukisiro1025

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