ヴァムピーラ
『鮮血推戴』……
その昔より、ヴァンパイア族に伝わる、総族長の決定方法の一つ……
総族長を決めるのには、通常は前任の総族長の指名により、総族長急死など不測の事態の時は、各族長の話し合いで決めている。
そうはいっても、いままで各支族の長の互選で決めていた。
ただ過去二回ほど、紛糾したことがあった。
その時、ヴァンパイア族は、力あるものが正義として、強者の理論に従ったのだ。
つまりは手を上げた者のデスマッチ……
我こそはと思うものが出ればいい……
ただし生き残るのは一人である、この者が自分、もしくは誰かを指名すればいい。
『鮮血推戴』で選出された者の意見は絶対である。
ヴァンパイア族の構成員は従う掟となっており、これに異を唱える者は、その家族ともども殺されることになる……
ヴァラヴォルフ族を情け容赦ないといったベルタ・ドンだが、さらにヴァンパイア族は非情なのである。
「開催は私が呼びかけましょう……そして私が出ます」
「それは……あまりに……」
と、ゾーイが云いましたが、
「大丈夫、私は負けません、実は夫以外知るものはいませんが、私はヴァムピーラ――人と吸血鬼の混血といわれている、女性をヴァムピーラといい、男性はダンピールという――なの」
「死んで正真正銘のヴァンパイアになったのよ、その後、夫と結婚したの……ヴァムピーラって、吸血鬼ハンターってことは、知っている?」
「ヴァムピーラ……伝説と思っていました……」
「内緒にしていてね……夫がなくなっても、ゲオルグとカミーラがいますのでね」
「いま忘れました」
くすっと笑ったベルタ・ドンだった。
総族長臨時代理の名前で、『鮮血推戴』が公示されたのは、しばらくたってからだった。
「『鮮血推戴』!またえらいことを公示したものだな……しかし、チャンスだな、総族長になれば、ヴァンパイア族をあげて、ルシファーと袂を分かつことができる」
「しかし族長、あのルシファー様です、黙っているとは思えませんが……」
「ルシファーでよい!怒って我らから造血装置を取り上げるだろうな」
「しかし案ずるな、モンスター共がいる、それに人の凍結した『精子』と『卵子』を、私はかなり持っている」
「それは……」
「どこにあるかはいえぬ、そうであろう?首尾よく総族長になった時、私は食糧を提供できる」
「造血装置を見せつけられ確信した、食い物を支配できれば、それは権力なのだと」
「族長……」
「いわんとすることは分かる、『鮮血推戴』に勝ち残れるのかと、いうことだろう、私は強いぞ、それを見せてやろう」
言葉の響きが終わらぬ間に、ラミア族長は部下の首を手にしていた。
「ラミアの者は命令に服従するのが特徴、お前はうるさいのだよ」
ラミア族長はその後、さらに部下の首に言った。
「な、強いだろう、何といっても、私はダンピールなのだから」
ククチと呼ばれるラミア族長は、死ぬ前はジル・ド・レエ――中世フランスの伝説の虐殺鬼、ジャンヌ・ダルクの片腕としてフランスを救った英雄、その後、快楽のために数百人の少年を陵辱虐殺した――と呼ばれていた。
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