ミコの女たちⅡ ヴィーンゴールヴ・マドモアゼル 【ノーマル版】

一号生徒

　その夜、寄宿舎の自分の部屋で、ラダは物思いにふけっていた……

「お父様……お母様……一号生徒になりました……私を孤児と馬鹿にした人たちを、見返すことが出来そうです……」

　ラダは孤児だった……しかし両親が残してくれた資産、宝石や金のおかげで、何とか生きてこられたのだ……

　それが尽き、ラダはハイスクールを退学して働こうとしていた矢先、惑星ヴィーンゴールヴに移住することになり、全寮制で奨学金がもらえる、ダチア高等女学院のメイド任官課程を目指したのだ……

　そしてとうとう一号生徒……確実に未来が約束された……

　ラダの両親の事は誰も知らない……　

　ラダの祖母はズリーニ・イロナ、祖父はテケリ・イムレ、ハンガリーの貴族でケーシュマールク伯爵、一六九〇年にはトランシルヴァニア公にもなっている。

　祖母のズリーニ・イロナは、遡ればエリザベート・バートリにつながるのである。

　エリザベート・バートリは、いわずと知れたトランシルヴァニアの『血の伯爵夫人』。

　エリザベート・バートリの一族の紋章、三本の龍の牙は、ブラッド・メアリーの徽章に採用されている。

　ラダの母はテケリ・エルジェーベト、一六八三年に生まれたが、一六八八年に夭折したことになっている。

　エリザベート・バートリの血が色濃く出たため、死んだことにされ、その後、長くロシアに住んでいた。

　長命のためロシアを転々として、最後はクリミアに落ち着き、そこで恋をし、若い技術者と結婚した、その男はヴァンパイアであった。

　そして二人はアメリカへ……実業家としてこれからと言う時、ラダを残して、両親は爆発事故で死んでしまった……

　車が突如爆発したのだ。

　さすがのヴァンパイアも、一瞬の大爆発には命を保てなかった。

　一九四六年の事であった。

　ヴァンパイア族の内紛によるテロであった……主流派に殺されたのだ。

　この後、ラダを哀れと思ったのか、ヴァンパイアの総族長ヴラド・ドンが後見をしてくれ。

　なんとか正体を隠して生きてきたのだ、そしてヴァンパイア族のハイスクールに通っていた。

　ヴラド・ドンが後見をしてくれなかったら、ラダはどうなっていたことか……

　そしていまラダは一号生徒になった。　

　ダチア高等女学院メイド任官課程一号生徒、卒業すればルシファー様のお側近くにお仕えすることができる……

　それはヴァンパイアの女にとって、最高の名誉となっている。