第五章 ラダの物語 ブラッド・カレー

ダチアの華

 ダチアの華と呼ばれる一号生徒ラダ。

 ある日、対抗戦以来のライバルであり親友でもある鈴姫から、ややこしい相談を受けた。

 二人は総族長の館にご機嫌伺いと称して、訪れることにした……


     * * * * *


 惑星ヴィーンゴールヴに、ヴァンパイア族が初めて移住した時、ラダは十七歳ぐらいに見えた。

 ヴァンパイア族、モンスター族もそうだが、年齢はほとんど意味をなさない……


 まずその数倍は確実に歳を重ねているのは確かである。

 中には数十倍の者もいるはずだ。


 美しい娘であったが、近寄りがたい雰囲気を漂わせているラダ……

 何かを思いつめているようで、隙を見せないのである。


 移住したヴァンパイア族の子供たちの為に、学校が用意されていた。

 なんでも日本の教育制度を踏襲したそうで、惑星マルスに移住して来る、幾つかの大学に進学できるそうである。


 そのなかに一校だけ、特別の女学校が設立された。

 ダチア高等女学院、八年制の高等女学校で、女子にとってはエリート中のエリート校、卒業生はそのままナーキッドに就職出来る。


 さらにはメイド任官課程が併設されており、ルシファー様のお側に仕えるメイドになれるという。

 ボストンのハイスクールに在籍していたラダは、躊躇なくメイド任官課程の女専課程編入試験を受けた。


 もともとヴァンパイア族は美男美女が多いが、ラダは図抜けて美しい。

 誰もが任官すればすぐに寵妃になると思った。

 ダチアの制服を着て町を颯爽と歩くラダを、人々はダチアの華と呼んだ。


 惑星ヴィーンゴールヴには乾季と雨季がある。

 もともとこの惑星は、ルシファーの根拠地ともいえる、惑星エラムの気候を再現している。


 エラムはほぼテラと同じ、一天文単位で恒星を公転しており、少し恒星が小さい分、気侯は寒冷ではある。

 しかしヴィーンゴールヴの暦はテラの暦を使用しており、なおかつ学校は日本の教育年度で運営されている。

 そして暦は四月を迎えた。


 ラダは八回生になった。

 入学式に在校生代表として歓迎の祝辞を述べた。

 つまりラダがダチア高等女学院の、一号生徒となった瞬間でもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る