赤いソード


 アエローさんは四姉妹の長女で、後の三人とは、オーキュペテーさん、ケライノーさん、ポダルゲーさんというそうで、不埒な狼に監禁されているとの事です。

「ルー・ガルーにさらわれて……毎日……」


 ジャンヌはそれ以上聞きませんでした。

「女の敵ね……」

 少しというか、かなり頭に来たのは確かです。

 怒りが湧いて、ルー・ガルーを懲らしめたいと願いますと……

 頭の中に文字が浮かび上がりました。


 消去、厳罰、訓戒……


 選べばいいのね……消去はね……訓戒は不可ね……厳罰、これにしましょう。

 するとジャンヌのチョーカーが一瞬輝き、目の前にスモール・ソード――細身の剣、レイピアをさらに小型にしたもの――が浮かびあがったのです。


 私、剣など使ったことなど無いのに……手に取れというのね……

 ジャンヌがスモール・ソードを受け取ると、その剣の柄から、棘のあるひも状のものが二本のびてきた。

 そしてジャンヌの手首にまきついた……


 血を吸い取っているのか、スモール・ソードが赤く染まっていく……


 いいでしょう……私の寵愛を受けた者よ……貴女の血を代価として貰い受けた……今夜は満月……北に山が見えるはず……その剣に導かれるがいい……


 そろそろ闇が訪れ始めます。

「ミコ様が北へ行けとおっしゃっています、アエローさん、ついて来てくれますか?」

「では、私の姉妹を助けていただけるのですか?」

「そういたします、リュシエンヌさん、お留守番をお願いします」


「ジャンヌ様……やはり危険なのでは……」

「私はミコ様にすべてを捧げているのです、私の生死はミコ様の物、そのミコ様が今回の事に対して、許可して下さったのです」


「戦いなどしたこともありませんが、私はこの授かった剣でルー・ガルーに厳罰を与えてきます」

 ブルボン・オルレアンの姫は、このように言い放ったのです。


 ジャンヌは北へと進む……といっても手にまきついた『赤いソード』が、ジャンヌとともに北の山へ転移したのです、アエローとともに……

 驚いたわ……もう、何でもありね……


 山の中腹、広場になっているような場所です。

 そこに小さな石造りの家が一軒……

「あの家がルー・ガルーの家です、とんでもない体力ですから気を付けてくださいね」


「分かりました」

 ジャンヌはすたすたと歩いていきます。


 アエローさんが……薄ら笑いを浮かべました……

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