とても綺麗な方


 鈴姫たちはオロオロとしていますと、

「この娘さんが馬鹿どもに襲われそうになっていました、そちらのメイド任官課程の生徒さんが救ったのです」


「これは正当防衛、この世界には強姦などはあってはならない事、未遂と言えど万死に値する、私が指示しました」


 若い女はさらに、

「私は全てを見ていました、この若い娘さんたちは、気も動顛しているでしょうから、私が詳しくご説明いたしますよ」


 巡査の一人が、「この者たちは死んだのか?」と聞きますと、

「耳は潰れたでしょうが命はまだ保っています、しぶといですね」


「では貴女に来てもらい、説明していただきましょうか?」

「いいですよ」

 巡査たちは鈴姫たちに、

「こんな場所でうろうろするから、こんな目に会うんだ、さっさと帰れ!」


 鈴姫は、

「その方は関係ありません!私がしでかしたこと、私が説明申し上げます!」

 自分でもこんな大きな声が出るとは、思いませんでした。


 こんなやり取りをしていますと、さらにもう一人、無関係の女がやって来ます。

「何事ですか?」と、少し驚いた顔で巡査たちに聞きました。


 やって来た女はモンスター地区の執政、ジャンヌ・マルグリット・ブリジット・マリー・ドルレアン、あわてて巡査たちは敬礼をします。

 ジャンヌは巡査たちの話を聞くと、

「この方の尋問は私がいたしましょう、貴方たちはこの男たちをつれて行きなさい、裁判にかければわかる事、事実なら命は無いのですから」


 そして巡査たちの上級者を呼び、何やら耳打ちしました。

 困惑の表情で、

「分かりました、執政のご希望通りに処理します」

 と、云って倒れていた男たちを、呼び寄せたバスに手荒く放り込み去っていきました。

 ジャンヌ執政も、女を連れていきました。


「……あぁ……怖かった……」と、篠笛がいいますと、琴音さんが烈火のごとく怒りました。

 でもやはりお姉さんですね。

「篠笛!今回は……でも良かった……心配したのよ……」

 篠笛を抱きしめて、泣き始めました。


「お姉ちゃん……」


 鈴姫は少しうらやましくもありましたが……

 あの方は大丈夫なの……とても綺麗な方……名前も知らないのに……忘れられない……


 籠目(かごめ)高等女学校の社会研修旅行が始まりました。

 鈴姫はCOTTONで買った服のおまけ、ジャンボ・トートバックに、旅行の荷物を詰め込んでいます。


 大体、鈴姫は物をあまり持っていない、服などもこの間買った物を除けばほとんど持っていない、いつもどこでも学生服で通しているのです。


 新しく買った一張羅ともいうべき服を着こみました。

 鈴姫は少しおしゃれをするだけで、見違えるほど感じがいい娘に見えました。


 そして今回の社会研修旅行は突然、一泊二日が三泊四日になりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る