月曜日

 この日、花畑に虹色の姿はなかった。

 ただ身体からもげた彼女の翅が、ねぐらの近くに落ちているだけだった。

 私がそれを拾おうとしたときのことである。

 ちょうど目線の高さの葉の裏に、蛹が一つぶら下がっていた。さやえんどうのようなその背は割れ、今まさに成虫が羽化しようとしている。

 中から出てきたのは、あの虹の翅の蝶であった。

 私は自分の目を疑った。

 この蝶は、果たしてあの虹色の子どもなのだろうか。

 あるいは黒蝶か、別の蝶か。いずれも定かではない。

 ひとつだけ確かなのは、奇跡の蝶は決して気まぐれな突然変異の一頭ではなかったということだ。


 大人になったばかりのメス蝶は、まるで自分の美しさを誇るかのように翅を七色に輝かせる。

 そして天を見上げると、意を決したように力強く飛び立った。

 今度こそ、自分を受け入れてくれる相手を求めて――


 彼女は宙に小さくも、美しい虹をかけていく。

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安納にむ @charley-d

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