金曜日

 虹色の求愛は、なかなか実を結ばなかった。

 羽化から毎日メスを追いかけているせいで、翅の鱗粉はところどころ剥がれ落ちてしまっている。

 が、メスは頑として彼女を受け入れようとしない。

 それどころか、一様に逃げるような行動さえ見せている。

 彼女が少し近寄っただけで、メスたちは蜘蛛の子を散らすように飛び去ってしまうのである。

 まるで、メスたち全頭が虹色を忌み嫌っているかのようだ。

 花に集まったメスたちは、時折彼女を横目にしては噂話でもするように顔を突き合わせている。

 虹色は、そんな仲間たちを遠く離れた場所から寂しげに見つめていた。

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