木曜日
虹色の求愛は何ともなまめかしい。
好みのメスの前に止まった彼女は、まずあの美しい翅を広げたり立てたりして相手の注意を引く。
向こうが気づかないときは、相手の肩になにげなく触れる女のように身体を擦りつけて、自分の存在をアピールする。
そこでメスが振り向けば、彼女はもう相手を離さない。
頭の上の長い触覚で触れ、匂いを嗅ぎ、ストロー状の
メスもまんざらではないようで、すっかり飼い主の膝の上に乗った猫のようにおとなしい。
彼女の求愛は一層熱を帯び、メスを押し倒すと花の蜜を吸うようにその身体を味わい始める。彼女の攻めに、メスは堪らずふくよかな身体をくねらせて天を仰ぐ。土のベッドを転がり、まるでお互いを貪るように絡み合う二頭の翅は、もうどれがどちらのものかわからない。
そして、彼女がゆっくり尾の先を相手と重ね合わせようとしたとき――、
突然、メスは大きな羽音を立てて飛び去った。
驚いた彼女は引っくり返り、足をじたばたさせてもがいている。
虹色は振られてしまったようだった。
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