第255話 状況の再確認と整理
状況を整理しよう。必要な作業は、大きく分けて3つぐらいだろうか。俺は、机の上に置いた紙に自分の考えを書き込んでいく。
まず、学園で行われている授業内容を再確認すること。変だと感じた部分についてピックアップして、修正したほうがいいと思う内容を洗い出していく。
これは、とにかく時間と根気が必要そうな作業だと分かっていた。けれど、まずはマルガリータが学んできたことを確認しておかないといけないだろうから。それで、彼女の教育方針も定めていく。ついでに、学長のマデリーネさんに報告できるように内容を整理しておけば、後で楽ができそうだし。
それから、この国に残されている錬金術の歴史や知識を調べてみること。これまた膨大な量になりそうだから、優先順位を決めて少しずつでも情報収集しておく必要があるだろう。
王都に残されている錬金術に関する記録を一から調べてみて、研究する。
ユノヘルの村では、歴史の本や技術書などは手に入りにくかったからなぁ。だけど学園には、膨大な量の記録を保管している資料室があるそうだ。まだ見ぬ蔵書の数々。それをチェックするのは、かなり楽しみである。
そして、一番大事な作業。それは、集めた知識を組み合わせて、新たな発想を構築していくこと。これが錬金術師として楽しい部分でもあるし、大変な部分でもある。
「こんな感じかな」
紙に書き込んだ内容を、改めて確認する。
学園で行われている授業内容の再確認、錬金術の歴史や知識を再調査、新たに収集した錬金術の知識を組み合わせて新しい発想を構築する。
この3つの作業が、これから俺の行うべきことだろう。
同時進行で、マルガリータに錬金術を教え込む。
彼女は錬金術の学園で学んできた生徒なので、良い指標になるはずだ。彼女に教え込むことで、色々と分かってくることがありそう。俺自身の復習にもなるはずだし。
マデリーネさんにも頼まれたからね。受け取った費用分は、ちゃんと働かなくちゃいけないと思うんだ。
「それじゃあ今日は、新しいレシピを教える。しっかり覚えるように」
「はい、リヒト先生。本日も、よろしくお願いします」
学園の授業が終わった後、俺の研究室に呼んで指導する。今日は新しいアイテムの錬金に挑戦してみよう。
レシピの内容を確認して、錬金素材のチェック。本当は素材の採取から始めたいのだが、王都の近くでは手に入らないので諦める。俺が持っていた素材を分けて、錬金の練習を行う。
いつか素材採取の指導も行っていきたいと思う。学園では、そういう授業もやっていないらしい。商人から素材を買い取って、それで錬金しているようだ。一流の錬金術師になるためには、素材の採取も自分で出来ないとダメだと思うんだけど。
近くに生息しているモンスターの強さを確かめてから、危険度などをチェックして計画を考えないとな。自分一人だったら大丈夫だけど、同行させて怪我させるわけにはいかないし。
「リヒト先生、出来ました!」
錬金が無事に成功して、生成したアイテムを嬉しそうに見せてくるマルガリータ。彼女は失敗しなくなった。彼女の作ったアイテムを受け取って、道具を使って品質をチェックする。
「どれどれ。うん、なかなか良い出来だね」
「本当ですか! ありがとうございます!」
マルガリータが錬金したアイテムの品質は、かなり高かった。短期間で、ここまで出来るようになったのかと驚く。本当に凄いと思う。
マルガリータは錬金術の基礎に関して、すぐ習得した。その後は、どんどん新しいレシピを覚えて、錬金術の腕を磨き続けている。そんな彼女に、次は何を教えようかと、考えるのが楽しい。非常に優秀な生徒だから。
初めて教えたときから感じていたけど、マルガリータには錬金術に対する類稀なる才能があるようだ。一番最初は躓いてしまったようだけど、錬金術を一度成功させた後はスムーズだった。すぐに知識を覚えて、技術も苦労することなく習得していく。
その習熟スピードは、かなり早いだろう。比較できるほど、誰かに錬金術を教えてきたわけじゃなが。それでも、彼女の成長の早さが凄いことは分かる。
特にマルガリータは、理解力が優れている。その辺りの能力を伸ばしていくのが、彼女のためになりそうだ。
彼女のような生徒が、最初の部分で躓いてたいというのが、もったいない。他にも同じように才能を秘めている生徒が埋もれているかもしれない。やはり学園の教育の見直しは、必須だろうと感じていた。
そんな彼女は今、出来るようになった錬金術を順調に楽しく学んでいる。学習意欲も高い。
だが、慣れてしまったり満足してしまうと、意欲が低下してしまうかも。その時、どうしてあげるべきか考えておかないと。新しい課題を与えるのか、彼女の好奇心を刺激するような講義をするのか。そのあたりも重要だと思う。
おばあちゃんから錬金術を習っていた時のことを思い出したり、別の世界で先生をしていた時の経験を思い出しながら、マルガリータを指導する方法について考える。どうすればいいか。
「先生、次は何を教えてくれますか?」
「そうだな。次は、錬金術の基本的な部分をもうちょっと詳しくやってみようか」
「はい、よろしくお願いします!」
楽しく学んでいる彼女と共に、錬金術の修行を続ける。
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