第227話 本の売上は
秋頃に発売をスタートした本は、かなり順調に売れているらしい。マティルダさんからの情報によると、多くの書店から追加の注文が殺到しているという。イギリスの書店だけでなく、ヨーロッパの国々で販売しているそうだ。
だけど日本に居るから、あまり実感が湧かない。どれぐらいなのかを、イギリスに行って自分の目で見てみたいと思った。いつか、見に行こう。
ただ、問題もあった。本を売り出した後、サイトにアクセスが集中してレンタルのサーバーがダウンしてしまったこと。復旧をしても、またすぐにダウンしてしまう。借りていたサーバーが、大量アクセスの負荷に耐えられなかった。
「最近、レイラさんのサイトにアクセス出来なくなっていますね」
”そうなんです。レンタルしているサーバーが、大量のアクセスに耐えられなくて”
「コチラで引き取りますよ」
次に出版する本について、打ち合わせを行っている最中。ダレルさんが状況を把握していたので、どうしようかと相談することになった。
すると彼は既に、大量のアクセスにも耐えられる企業用のサーバーを準備してくれていた。話題に出した時点で、色々と用意してくれていたみたい。
そこまでしてもらうべきか悩んだけれど、本を発売した影響でアクセスが急増してしまったのは事実。その責任を取らせてほしいと彼は言うので、厚意に甘えさせてもらうことにした。
中学が冬休み期間中、アップロードしていたデータを新しいサーバーに移行した。同時に、長年お世話になってきたレンタルサーバーの契約を終える。
今後は、リイン・フォーティブ社が管理してくれている企業用のサーバーにデータをアップロードして、サイトを運営していくことになった。
俺は、今まで通りに公開する文章を増やしていくだけ。そして、協力をしてくれる他の人たちが色々と改善してくれた。現状分析をして、悪いページを直してくれる。
サイトにアクセスくしてくれたユーザーが見やすいように、色々と良くしてくれた。それで、さらにアクセスが増えていく好循環。
本の出版と、サイトの移行。それから、次に向けての準備。様々な活動をしている間に、俺は中学2年生となっていた。仲良くしている沙良ちゃんは、そのまま高校へ進学するのかと思ったら、海外へ学びに行くことにしたようだ。
しばらく会えなくなるのは寂しいけれど、横大路家の行事で年に数回ぐらい日本に帰ってくるらしいので、その時に会って話せるので良かった。必要なら、国際電話で話すことも出来る。
そんな彼女の留学先はイギリスだそうだ。もしかすると、俺の本が売っているのを目撃するとこになるかもしれない。日本に帰ってきたら、沙良ちゃんにも話を聞いてみようと思っている。
初めて出版した本を売り出してから、6ヶ月が過ぎた頃。最初の印税が支払われることになったので、先に明細を送付してもらった。受け取った書類を自室で確認してみる。
送られてきた書類を読んでみる。この中で一番気になるのは、やはり金額だった。これが、初めて受け取る報酬になる。日本だと、発行部数に応じて支払われる金額が変動するそうだ。けれども、イギリスの場合は実売部数によって計算されるという。つまり、実際にどれだけ本が売れたのかというリアルな数値が分かるということ。
マティルダさんや、他の皆が絶賛していた。けれど、それが事実なのか。リアルな数値を確認することで、本当かどうかを判断できる。
書類の上から読んでいく。真ん中あたりで、支払われる金額が書かれている箇所を見つけた。これが印税で、数値は。なるほど、50万か。ふむふむ。
本音を言うと、思っていたよりも金額は少なかった。新人の作家だから、まだまだ知名度が低くて売れなかったということかな。
かなり売れていると知らせてくれたのは、新人の作家の中では売れている、という意味だったとか。
それとも、必要経費で金額が引かれているか。売れたけれども、それ以上に出費があったということか。かなりこだわって本を作ったと言っていたから、経費がかかり売上にはつながらなかったとか。そうだったとしたら、納得できる理由でもある。
まだまだ、これから先も出版する予定の本が控えている。だから、もっとたくさん本が売れてほしいと思う。もっと頑張らないとダメかな。だけど、お金を稼ぐことが第一の目標というわけでもない。多くの人達に読んでもらって、転生者の情報を得ることが主な目的でもあるから。でも、やっぱり売れてほしいよなぁ。
そんなことを考えている最中に、俺は自分の勘違いに気が付いた。
あ、ちがう。通貨は円じゃないのか。ということは、50万ポンドということか。書類を再確認してみると、通貨記号はポンドで間違いなかった。
ということは、この金額をポンドから日本円に変換しないといけないのか。一体、いくらぐらいなのか。現在の為替レートを調べてみる。
おおよそ、1ポンドが200円ぐらい。ということは、50万ポンドは……。
「……ッ!?」
驚きで息が漏れた。声を出せたのなら、叫んでいただろう。それぐらいの驚きだ。だって、日本円に換算したら1億円ということになる。そんなに!?
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