第170話 学校を卒業してからの話
学校を卒業して、俺たち4人は約束していた通りパーティーを組んだ。俺とネコ、田中くんと大内さん。学校で出会った頃から変わらない、4人組パーティーだった。
「みんな、改めてよろしく」
「うん。これからも、みんなと一緒」
「私も嬉しい。このメンバーと出会えて、本当に良かった!」
「まぁ、メンバーを探す面倒が無いのはいいな」
卒業生たちの次の目標は、迷宮探索士の免許取得を目指して試験を合格すること。試験に合格するための勉強として、まずは他の迷宮探索士の事務所に所属することになる。先輩の迷宮探索士と一緒に仕事をこなしつつ、仕事のやり方を覚えながら試験の合格を目指すのが一般的な流れだ。
資格がなければ出来ないことも多いので、まずは資格取得が第一の目標である。
既に迷宮探索士の資格を取得している俺たちは、卒業してすぐ迷宮探索士としての活動を行うことが出来る。一般的な流れをスキップすることが出来るというわけだ。というか、学生の頃から迷宮探索士の仕事をしてきた。そのままの流れで、変わらず活動を続けていけばいいだけ。
ただし、迷宮探索士として活動するためには色々と準備をする必要がある。学校も卒業したので、これからは学校ではなく自分たちの拠点となる場所を用意する必要があった。
ということで、まずは会社を立ち上げる手続きをする。迷宮探索士の業務を行うと国に申請した。申請の処理は、特にトラブルも無くスムーズに終わった。
それからビルの一室を借りて、そこに事務所を構える。迷宮探索士として活動していくための拠点だ。活動の記録や各所に提出する書類、帳簿などの作成や処理したりする場所として使う予定である。
その他にも、ダンジョンを攻略するための作戦会議を行ったり、依頼を受けるため会談する場所としても使っていく。
事務所の家賃支払いは、今までに稼いできたお金で十分に足りた。まだ活動資金に十分な余裕がある。これから先も仕事をして、どんどん稼いでいけるだろう。
事務処理や様々な補助を頼むスタッフを2人、新しく雇うことにした。募集をして来てくれた人たちを面接して、能力や人柄を確認して雇用契約を結ぶ。その人たちは非戦闘員として、事務所で仕事をしてもらう仲間となる。
これで迷宮探索士の事務所として、ちゃんとした活動拠点が整った。
事務所を構えると、すぐに依頼の連絡が舞い込んできた。どうやら、俺たちが学生だった頃の活動について、口コミで広がっているようだった。ということで、仕事は選り取り見取り。
過去の活躍により、実力ある新人として業界でも知られているらしい。迷宮探索士として本格的に活動を始めてからの実績はまだ少ない。だが、各方面からダンジョン内部の調査を依頼されたり、とあるアイテムをダンジョンから採取して、地上へ持ち帰ってきてほしいという依頼を受けたりした。学生だった頃と同じような仕事だ。
俺の迷宮探索士としての最終目的は、ダンジョンの最下層まで潜って願いを叶えてくれる、というアイテムを入手すること。卒業して準備を終えたらすぐに、最下層を目指してダンジョン攻略しようと考えていた。
だが、仕事を依頼されたので先にそちらから処理していくことになった。これから迷宮探索士として長く活動を続けていくために実績や信頼が必要だったから。それにお金も、手元に多く持っておくだけで便利だろう。なので、簡単には依頼を断らないことに。
迷宮探索士としての地位をしっかりと固めてから、最下層を目指してダンジョンの攻略をするという方針に変更した。
迷宮探索士として、仕事する日々を過ごす。
依頼内容の確認、ダンジョンの事前調査をして、ミーティングを行い攻略の方法について4人で話し合う。学生の頃に攻略していた、よく知っているようなダンジョンではなく、初めて中に入るダンジョンばかり。だからこそ、どんなに時間が掛かったとしても、事前の準備は入念にしておく。持ち込む武器や道具の手入れは万全にしてから、ダンジョン攻略の本番に挑む。いつまでも初心者だった頃の気持ちを忘れないように、ダンジョンの注意事項を何度も復習して、やるべきことを確認する。
「モンスターの気配は、なし」
「よし。じゃあ、さっさと仕事を済ませてしまおうか」
「私が周囲を警戒しておく」
「じゃあ、私は記録の手伝いね」
ダンジョン内部の調査の場合は、戦いは避けて慎重に進みつつトラップを警戒して文字の記録と写真撮影して記録を取っていく。
魔力を込めて調整しておいたデジタルカメラで、次々と内部の写真を撮って記録。無事に地上へ戻ってこれたら、事務所に帰ってきてデータをまとめる。そして最後に、依頼主にデータを提出して仕事は終わり。それで数十万から数百万ぐらいの成功報酬を受け取る。モンスター駆除などの依頼と比べたら、クリアするのが簡単な内容だろう。
だけど、うちは丁寧に情報をまとめるので評価が非常に高かった。特に写真で記録するのは、他の迷宮探索士はやっていないらしい。カメラなどの機材さえ揃えたら、簡単に真似できそうだけど。機材を持って運ぶのが大変なのかな。ダンジョンを攻略するときは、なるべく荷物を減らしたいだろうし、機材も高くて壊さないように注意しないといけなくなるから。アイテムボックスという能力の便利さを再確認した。
アイテム採取・回収の依頼の場合も敵との交戦を避けてスピード勝負。ダンジョンマップを参照しながら、事前に決めておいたルートを速やかに一直線で進んでいく。目的優先で、ダンジョン内部を移動する。何のトラブルも起きずにアイテムの採取・回収が完了したら、一目散に地上へと帰還する。持ち帰ったアイテムの品質や効果によって、数百万から数千万の報酬がある。
数をこなしていくうちに、どんどん収入は増えていった。実績を積んで、業界での信頼を得て、さらに仕事の依頼が増えていく。
新人の迷宮探索士は簡単な依頼からクリアしていき、徐々に実績を積み上げていく必要がある。そんなわけで卒業して資格を取得してからも、迷宮探索士が一人前になるまでには色々と大変だと言われている。だが俺たちは、大丈夫だったようだ。
依頼内容を処理しながら、迷宮探索士として活動する。その合間に、最下層到達を目指したダンジョン攻略をするための前準備を進めてきた。
思っていたよりも依頼される仕事の量が多く、最終目的の準備を完了するのに1年もの月日が掛かっていた。けれど、準備は万端である。
スケジュールを確認して、その間の仕事の依頼は断るか後に回して空けておいた。そしていよいよ、本番を迎える。
これから俺たちは、初めてダンジョン最下層を目指す。
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