第153話 学年の最優秀パーティー
ダンジョンに何度も潜って試行錯誤している間に、学校から出された課題もクリアしていった俺たちのパーティー。先生たちの評価も高く、学年の最優秀パーティーと呼ばれるようになっていた。
「その先を真っ直ぐ進んだら、もう少しで目的地に到着。前回、そこでモンスターと戦闘になったから注意しておいて」
「わかった」
手元に持った携帯端末を確認しながら、一番前を進んでいくネコに指示を出した。指示をしっかりと聞いて、警戒を強めるネコ。その後ろに並んで進んでいる田中くんも、周囲へ目を向けながらモンスターの奇襲に備える。
電子機器を魔力付与した袋で覆うと、ダンジョンの中でも問題なく動作することが判明した。使用したい道具を袋の中に入れて、使えるようにする。ダンジョン内で、普通なら使えないはずの機器を利用した。
直接、道具に魔力付与すると動作が狂ってしまう。上手くやれば使うことも出来るのだが、調整が難しくて不具合が発生した。なので、魔力を付与した袋に入れる、という方法が一番楽だった。これは、非常に大きな発見。
携帯端末には、ダンジョンのマップやルートなどのデータを入力してある。片手で確認できるので便利だった。他にも、モンスターやアイテムに関する情報等を瞬時に表示させることが出来るので、ダンジョン攻略に重宝している。
パーティーメンバーの4人が頭に魔力付与したヘッドライトを装着して、俺たちは両手が空いた状態で、ダンジョンの中を進んだ。このヘッドライトだけは、直接魔力を付与して調整しながら、使えるようにした。
これが、かなり便利だった。モンスターと戦闘が起こるたびにランタンの明かりが消えないように注意して地面の上に置き、戦いが終わったら拾って進む、という動作が必要なくなった。それだけで、ダンジョンを進むスピードもアップする。
ダンジョン内では何が起こるのか分からないので、念の為にもアイテムボックスの中にランタンや、紙製の地図など原始的な装備一式を用意はしてある。今のところ、それを使う機会は来ていないが。
「ゲットしたよ」
田中が発見したのは、今回の課題で指定されていたアイテムである。これを地上に持ち帰れば目的達成だ。
「よし、帰ろうか」
「了解」
「うん」
田中が拾ったアイテムを俺が受け取り、アイテムボックスの中に収める。あとは、地上へ戻るだけだ。俺は皆に指示を出し、潜ってきたダンジョンの道を帰っていく。
帰り道にも注意しながら、地上へと戻っていく。それぞれダンジョン内での動きに慣れてきたので、かなり楽々と戻ってこれた。
これで25回目のダンジョン攻略は終了した、ということになった。先生に帰還の報告を済ませると、いつものように解散となった。後で提出したアイテムが換金されて、収入が手に入る。今までの成果を合計すると、100万近くまで貯まってきた。まさか実習で、ここまで貯まるなんて予想していなかった。
これが、俺たちパーティーのダンジョン攻略の様子である。
ダンジョンの上層しか探索していないけれど、現時点ではパーティーのメンバーに怪我人は出ていない。俺も、一切怪我することなくダンジョンの攻略を進めることが出来ていた。25回も攻略を繰り返して、怪我を一つもせずに課題を達成したことを先生から、とても褒められていた。
俺も、メンバーが怪我しなかったことが一番嬉しい。そのために、色々と準備して挑んできたから。事前に準備をしっかりしたことが今の結果に結びついたのだろうと思う。次回も、電子機器などをダンジョン内に持ち込んで、もっと楽にダンジョンの攻略を進められるように。次の準備を進めていく。次は、どこを改善しようか。
どうやら、他のパーティーは色々と苦労しているらしい。課題を達成できないまま地上へ戻ってきたり、戦闘職の1人がモンスターとの戦いに敗れてしまい、大怪我を負って命からがら逃げてきたりだとか、そもそもメンバー間のコミュニケーションが上手くいかずに喧嘩別れしたとか。色々と問題が発生しているようだ。
うちのパーティーが上手くいっていることを知り、アドバイスを求めに来る生徒もいるほど。
俺たちが上手くいっていると、他パーティーからの嫉妬や批判も多かった。
彼らいわく、最優秀と呼ばれているぐらいに上手くダンジョンの攻略を出来ているのは、白砂猫がパーティーメンバーの一員として居るからだと。
彼女の持つ戦闘力のおかげで、ダンジョン攻略が上手くいっている。他のメンバー3人は、白砂猫の恩恵にあずかっているだけ。
俺たちのパーティーについて、メンバーの交換を再三要求されていた。メンバーである白砂猫の人気が非常に高く、俺たちは無視され続ける。
もちろんネコは、他のパーティーに移る気なんて全く無いから勧誘を断り続けた。すると今度は、俺たち3人がネコを脅してパーティーから離れないようにしている、という根も葉もない噂が流れ始める。
嘘なので気にする必要はない。先生たちからも、今のパーティーを解散しろなんて指示はされていないので、今のパーティーのままで大丈夫。
周りからの批判は、面倒ではあった。ネコは気にしていなかったけど、大内さんと田中くんの2人は悪意の視線を向けられて辛そうだった。
このまま放っておくと、もしかすると2人はパーティーを抜けると言い出す、かもしれない。せっかくパーティーとしての連携も出来上がってきたから、解散するのはもったいない。
そこで俺は、メンバーの実力を認めざるを得ない程度まで鍛えることにした。
実力不足だと周りから言われているけど、そんなこと気にならないぐらい大内さんと田中くんの2人を鍛えることにする。俺もネコと一緒に、今の実力を磨き直すことにした。
そうすれば周りからの批判も少しは収まるだろうと考えて、パーティーのメンバーみんなでトレーニングする。しばらくダンジョンの実習は控えることにして、地上でのトレーニングに集中しようか。
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