第121話 学校でのイジメ
女子のグループには上手く馴染めたと思うけれども、男子とは気が合わなかった。残念ながら、彼らとは良い関係を築くことが出来なかった。それどころか。
「おい、デブ女!」
「なに?」
授業が終わって、休み時間。トイレに行って教室に戻ろうとしていると男子の声が聞こえてきた。声がした方を見てみるとクラスメートの男子が、明らかに俺へ視線を向けていたので返事をして近寄っていく。今の俺が、太っているのは事実だったし。
成長して背が伸びると同時に、体重も徐々に減ってきている。だけど、そんなこと目の前の男の子は知らないだろう。
それで、何の用事があって俺を呼び止めたのか。
「なに?」
「うっ」
手の届く距離まで近づいてから、もう一度まっすぐ彼と目を合わせて問いかける。俺のほうが身長が高くて体も大きかった。俺が上から、見下すような態勢になった。そんな俺の堂々とした姿に恐怖したのか、縮こまってビクビクしている少年。
この程度で怖がるのなら、悪口を言うのなんて止めておけばいいのに。
「お、お前んちはビンボーだから子どものお前が働いてんだろ?」
「それは違うよ。俺が手伝いたいから、家の手伝いをしているだけ」
彼は気を取り直して、さらに俺に向かって暴言を吐いてきた。勇気の出しどころが完璧に間違っているけれど。
それに彼の言ったことは事実と違っているので訂正する。お店は繁盛しているし、生活に困っているわけではない。店の手伝いをしているのは、俺が望んでやっていること。
けれども、彼の吐いた暴言は一体誰から聞いた情報なんだろうか。確認するような言い方で、彼の考えではないようだったし。親にでも吹き込まれたのかな。
「お前の母親も、デブなん――」
「俺の母親を馬鹿にしたら、殺すぞ」
「ひっ!?」
まだ悪口を言ってくる彼。しかも、その言葉は最悪だった。それだけは、許せないだろう。
その言葉を口にした彼の首根っこを掴んだ。そして廊下の壁に押し付けると、彼の耳元でささやいた。既に亡くなっている母親のことを馬鹿にするような彼の言葉に、イラッとして思わずやってしまった。
顔面を真っ青にしている彼の首から、掴んでいた手を離す。
「う、うわぁぁぁ!」
離した瞬間、つんのめりながら廊下を走って逃げていく彼の背中を見送る。これに懲りて、今後は人を傷つける言葉を口にしないようにしてくれたらいいが。
俺も、もうちょっと冷静に対処しなければと反省する。母親を馬鹿にされて怒ったことは後悔していないけれど、もっとスマートに解決出来たかもしれない。
まぁ、仕方ないか。
その日から、クラスメートの男子から向けられる悪意が増えていった。
男子たちは俺の目の届かないところで、こっそりと俺の悪口を言っているようだ。それだけでなく、遠くからジロジロと陰湿な目で見てくる彼ら。
そんなに嫌われることをしただろうか。おそらく原因は、彼との一件だけ思うが。そもそも、彼の方から仕掛けてきたのに。その根本的な理由も分からない。なんで、俺に絡んできたのか。だから、彼らとの関係を修復する方法も思いつかないまま。
まぁでも、あんなに嫌われてしまった理由が分からないし、解決法とかも無いなら男子たちは無視しておけばいいか。陰口を叩かれたり、白い目で見られても全く堪えなかった。
かつて、最弱の勇者だなんて呼ばれて国中から軽蔑されていた時と比べてみれば、今の状況は少しも痛くない。
全く堪えない俺の反応に飽きたのか、クラスメートの男子たちはターゲットを別の女の子に変えてきた。
「おい、ブス!」
「なんで、そんなこと言うの?」
校舎裏。涙声で反論していたのは、俺の友達であるカレンだった。その現場を発見できたのは偶然。たまたま通りかかって気付いた俺は、急いで彼女の元へ駆け寄る。
「「「ブスブスブース!」」」
「やめろ!」
か弱い女子を集団で囲って、暴言を吐いている男子たちを止める。カレンを、俺の後ろに庇った。すると男子たちは、背中を向けて走り出す。
「逃げろッ!」
「早くっ!」
「殺されるぞー!」
わーっと声を上げて、逃げていく男子たち。やっぱり、とんでもなく悪質だった。
「ううっ」
「あいつらの言うことなんて、気にしなくていいよ」
ショックを受けて涙を流すカレンを優しく抱きしめて、何とか彼女を落ち着かせる。こんな子を傷つけて、クソ野郎どもが。カレンを泣かせるなんて。
「で、でも……」
「このことは、先生に報告しよう。俺も一緒に行くよ。今から行ける?」
「うん……」
先ほどのように、俺の目の届かないところでカレンが男子にイジメられていたら、彼女が傷付いてしまう。カレンだけでなく、他のクラスメートの女子もターゲットにされる可能性があった。早く解決するために、担任の先生に2人で報告しに行く。
「悪口を言われたぐらいでは、イジメじゃないだろう?」
「ですが、とても酷い暴言でした。それだけじゃなく、男子が複数人で取り囲んで。彼女は傷付いていますよ」
事情を聞いた担任の先生は、信じられないような反応を示した。今の話を聞いて、そんな感想を口に出すなんて。
「そうか、わかった。なら、男子たちには帰りの会で注意しよう。それでいいか?」
「……」
担任の先生は深刻さを理解していない。面倒だと思っているのか、イジメがあると認めようとはしない。子ども同士の、ちょっとした揉め事程度だとしか思っていないのか。適当に終わらせようという雰囲気も伝わってきた。
これ以上は、何を言っても徒労に終わるだろう。担任の先生に頼るのは無駄だろうと、俺は理解した。
結局、その後も男子たちの嫌がらせは続いた。
男子たちの悪行を、ちゃんと叱ってくれる大人が居なかった。彼らの親もちゃんと教育してくれないから、イジメが起きているんだと思う。なら、自分たちで対処するしかないよな。
けれども、同年代の俺が叱ったところで彼らは聞く耳を持たないだろう。今まで、何も変わらなかったのだから。言うことを聞かせる方法は、いくつもある。だけど、この世界でやりすぎてしまうと、コチラも悪者になってしまう。なので、面倒だけど穏便な方法で行動を起こす必要があった。
「あいつらを、なんとかして黙らせてやろう」
「どうするの?」
カレンが興味を持って俺の顔を見てくる。彼女も前向きに行動させる、良い方法が思い浮かんでいる。それを、実行しよう。
「一緒に来て」
「どこに行くの?」
「まずは、俺の家に行こう」
クラスメートの男子をギャフンと言わせるために。その日の学校が終わってから、カレンを連れて俺の家に向かった。
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