第127話 今回の人生の夢
これから先、カレンと一緒に生きていくために必要なことは何か。じっくり考えてみる。まず大事なのが、どうやって稼ぐのか。生きるためには、お金が必要だから。
今回の人生は、料理人を目指してみよう。そんな目標を決めて、俺は動き始めた。
とりあえずは、調理師専門学校に入学して調理師免許を取得しようと将来の進路を定める。実家の料理店を引き継ぐだけならば、調理師免許は必ず要るというわけではない。飲食店の営業に必須なのは、食品衛生責任者の資格かな。でも、料理の知識を得るためにも専門学校で勉強してみたいと思う。
「本当にその進路で良いのか? ちゃんと、自分の将来のことを考えているのか? 君の成績なら、もっと良い選択肢があるんじゃないか?」
「もちろん、将来のことについて考えていますよ」
「いやいや。先生は、この選択は間違っていると思うぞ」
「そうですか?」
「あぁ、そうだ」
進路を決めたが、学校の先生方からは何度も繰り返し偏差値の高い高校への入学を勧められた。学力が高いのに、そんなところに進むなんて勿体ないと説得してくる。俺の選択は間違っていると決めつけて、何度も何度も同じことを言ってくる。
向こうも俺の進路を真剣に考えてくれているようだが、正直に言うと余計なお世話だった。
「でも私は、調理師専門学校の入試試験を受けます」
「……」
助言をしてくれる人たちに向けて笑顔を浮かべながら、自分の意見を押し通した。当初の予定通り、俺は専門学校へ進む。
オープンキャンパスに参加して、入試試験を受ける。筆記試験はそんなに難しくはなかったし、面接も問題はなかった。
そして、無事に家から通える距離にある調理師専門学校への入学を決めた。着実に将来に向けて順調に準備が整っていく。
カレンは、俺と別の高校に入る予定である。彼女は先生に勧められた難易度の高い高校への入学を目指すようだった。今はまだ、やりたいことが決まっていないので、学歴を上げておいて選択肢を広げるつもりらしい。彼女も将来について、色々と考えているようだ。
他のクラスメートの女子たちも難関校の入試に挑戦していた。そして全員が無事に入学することが出来ていた。合格を目指して勉強会を開き、皆で勉強した。それで、良い結果が出てくれて本当によかった。
家族関係にも進展があった。父親の赤星啓吾が再婚相手を決めた。深谷朋子が俺の新しい母親となる。裏で色々とサポートしてきた結果が、ようやく出てくれた。
深谷朋子は、赤星朋子となった。
とはいえ、今までの関係性からそんなに変化はない。以前と同じような距離感で、彼女とは仲良く付き合っていた。
「おめでとう、朋子さん!」
「ありがとう。レイラちゃんのおかげだよ」
一緒に住むことになった実家で、深谷朋子の結婚をお祝いする言葉を贈って、俺の手料理を振る舞う。彼女のために、華やかちらし寿司を用意した。
今回のために取り寄せたお米と昆布。シイタケやイクラなど特別な物も用意して、丁寧に作った俺のスペシャリテ。
「結婚、おめでとうございます! 朋子さん」
「カレンちゃんも、ありがとうね。次は私があなた達を応援する番ね」
「はい!」
俺の友人であり恋人のカレンも一緒になって、父親と深谷朋子の結婚をお祝いしてくれた。そして今日は、結婚のお祝いとして女3人でちらし寿司を美味しく食べる。
「まだ、先ですよ。俺たちは子どもですから、焦らずゆっくりと」
「ちゃんと考えているのなら、大丈夫か。でも、あんまり待たせすぎないようにね」
深谷朋子には、俺とカレンの関係についてを明かしていた。2人の関係について、話したときには驚かれたけれど、すぐに理解して祝福もしてくれた。
二人の関係を応援すると約束してくれていた。俺の新たな家族になる人は、とても頼りになる女性だった。
父親と結婚した深谷朋子は、そのまま美容関係の仕事を続けるようだった。俺も、料理店の手伝いを続けている。専門学校に入学するまで、少しでも料理の腕を磨いておこうと思って。
中学校生活は、それなりに楽しめた。みんなで勉強して学力を高めて。俺が部活の助っ人として呼ばれて、いくつもの大会に出て優秀な成績を収めたり。そんな成績を出してしまったので、各部活の勧誘合戦に巻き込まれたり。家の手伝いがあるから、普段の練習には出られないので申し訳ない、という断り文句が使えたのでよかった。
カレンだけでなく他の女友達も、友人関係を深めるために学校以外の場所で会い、遊びに行ったりして一緒に過ごした。
「ねぇ、この服可愛くないですか?」
「可愛いね。試着してみたらどうだい? サイズは、多分合うと思うぞ」
「うん、そうするー!」
「あっ、このネックレスも良いかも! これも買っちゃおうかな? レイラさんは、どう思います?」
「うん、似合っているよ。そっちも試着してみては、どうかな?」
「これも、いいですね! 付けてみます」
「レイラさん、次はあっちに行きましょう!」
「いいね。行こうか」
「はい!」
デパートにウィンドウショッピングしに行ってみたり、洋服屋巡りをしてお気に入りの服を探したり、遊園地に行って一日中周ってみたりして楽しい日々を過ごしていた。
憧れるような視線を向けてくる女性たちに、俺は優しく微笑んであげて一緒に遊んだ。それで、彼女たちに楽しんでもらえたら良いだろう。高校は別の場所に行く予定だったから、そこで彼女たちに新しくて素敵な出会いがあればいいなと思った。
別々の高校へ行くことになった俺とカレンだが、出来る限り会うようにすること、電話は可能であれば毎日するという約束を結んだ。近況について積極的に報告し合おうと、俺から提案する。
「カレン。俺以外に、好きな人が出来たら必ず言ってくれ」
「そんな事はありえないけれど、もしそうなったら必ずレイラちゃんに言うね」
なんだか、とても嫉妬深い女性のような言葉を吐いてしまったな。随分と遠い昔、婚約者を奪われた記憶があってトラウマになっていた。
あの時のトラウマは払拭できたと思っていたが、不意に思い出す。嘘をつかれて、知らない間に見知らぬ男と仲良くしていたら、もの凄くショックだろう。無茶して、死んでしまうほどに。
もしも、俺とは別に好きな人が出来たとしたら隠さないで、正直に言って欲しい。そうカレンに、お願いしていた。新しい学校に行ったら新たな出会いもあるだろう。その時、俺への気持ちも変化する可能性はある。それは否定しない。
けれど、それを隠さないで欲しい、と彼女に強くお願いしておく。
「わかった。絶対に、レイラちゃんには隠し事しない」
「ごめんね、カレン。面倒くさくて」
「ううん、大丈夫だよ。レイラちゃんの新しい一面を知れて、私は嬉しいな」
カレンは、優しく微笑みながら約束してくれたので俺は安心する。彼女は、本当に言ってくれるだろうと信頼していた。その前に、他の誰かに目移りするような人ではないと思うから大丈夫だろう。
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