第8話 独学魔法勉強

 まず俺は、魔力とは何かを考えてみた。この魔力というようなものを、俺は確かに体の中に感じている。それから、精神力とか集中力とか、そういうのに近いモノだと思った。そんな力を鍛えるためには、どうしたらいいのか。前世の知識を活用する。


 魔力を高めるために、瞑想してみるのはどうだろうか。


「……」


 姿勢を正し、目を閉じて、息を吸って吐いて、それだけを意識し続ける。たしか、そんな方法で集中力を高めることが出来るらしい。聞きかじりの知識だが、集中力を高めるのに有効だと、何かの本で読んだことがあった。本当に正しいのかどうかは、知らないけれど。


 これが、正しい瞑想のやり方なのかも分からない。とりあえず試してみて、効果があるかどうか確かめてみよう。毎日、数十分間の瞑想でトレーニングを続けてみた。


 呼吸を続ける。体の中にある力だけに意識を向ける。温かくて、ゆらゆらしている何かを感じる。これが、魔力なのかな。


 ここがゲームの世界であれば、魔力がどれくらいあるのか、目で見て分かるようなステータスとして数値化されたりするのかな。そうすれば上がったのか下がったのか明確で分かりやすいのに。この世界に、そんな便利なものはなかった。


 とりあえず今は、この練習を続けるのみ。きっと、意味があるはずだと信じて。




 それから、魔法の呪文について考える。


 本当に、魔法を発動させるために呪文を唱える必要があるのかどうか。無詠唱で、魔法を発動させることは出来ないだろうか。


 魔法を使っている人達は、ちゃんと呪文を唱えている。黙ったまま、魔法を使っている人は今まで見たことがなかった。見落としてしまった可能性もあるけど。


 でも俺はなんとなく、魔法の呪文は必須じゃないような気がしていた。


 発音を上手くやっても魔法が発動しない時があるし、逆に下手に呪文を唱えた時に発動する時もある。何が違うのだろうか。


「フーマー・チ・エーネ・トゥータ」


 自室で1人。わざと呪文を間違えたりしても魔法が発動するのかどうかについて、実験してみる。確かに、思ったようには魔法が発動しない。だけど、全く発動しないという訳でもないらしい。


 ちょっと間違えた呪文でも、数回試して一回は魔法がちゃんと発動する。


 フラマム・チ・エネ・トゥータとは、火の力で敵を倒せ、という意味の言葉らしいが。なら、そのまま。


「火の力で敵を倒せ」


 杖の先に火がついた。予想した通り、呪文が違ったとしても意味が合っていれば、魔法は発動している。これで普通に魔法が使えるようことを確認した。やはり呪文はそこまで重要ではないのだろうか。


 数日かけて、呪文についての実験を繰り返していく。そして明らかになったのは、呪文の言葉は意味がだいたい合っていれば魔法は問題なく発動する、ということ。



 ふと、俺の脳裏にイメージという言葉が閃いた。



 魔法使いはイメージを大事にする、というような言葉に聞き覚えがあった。何かの漫画か小説で読んだ気がする。イメージか。


 フラマム・チ・エネ・トゥータ。口には出さず、頭の中で唱える。


「ッ!?」


 杖を構えて、頭の中で唱えた瞬間にちゃんと火がついた。呪文をわざわざ唱えなくても、魔法を発動出来ることが判明した。じゃあ、これは。


 火を灯せ。再び、口には出さず頭の中だけで唱える。すると。


「うんうん。出来るじゃないか」


 呪文を口に出して唱えることなく、杖の先に火がつくイメージしただけで、魔法が発動した。思っていたよりも簡単に、無詠唱による魔法の発動が出来てしまった。


 むしろこれは簡単すぎて、危ないかもしれない。杖を持っている時にイメージしてしまうと、意図せず魔法が発動する可能性もありそう。練習しないと。


 それから俺は、無詠唱で魔法を使う練習を繰り返した。教師フリオの授業も休まずに、ちゃんと受けながら魔力を高めるトレーニングと無詠唱による魔法の発動させる練習を続けていた。


 魔力を高めるトレーニング。無詠唱で魔法を使う練習。独学で魔法の使い方を学び勉強してきた効果が、徐々に現れてきたように思う。


 魔力が高まった。魔法を連発して使っても、疲れなくなった。試してみた練習は、大きな意味があった。


 わざわざ呪文を唱える必要がなくなり、無詠唱で自由自在に素早く魔法を放つことが出来るようになった。これは、大きなアドバンテージになりそう。


 独学でも、意外と魔法を習得できそうだ。俺は、魔法使いとしてやっていける自信がついた。

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