第6話 不信感
その後も、教師フリオによる魔法の授業は続いた。イメージしていたような実技と全然違う、意味の無さそうな内容のものが。
理論に基づいて実践したり、仕組みについてを教えてもらえると思っていたのに。実際は、呪文を唱える練習を繰り返すだけ。
「魔法を使うのに、そんなに呪文の発音が大事なんですか?」
「もちろんです!」
俺の質問に簡潔に答えるだけの教師フリオ。それ以上は、教えてくれないらしい。もっと詳しく知りたかった。本当に、呪文が重要なのかと。
もう少し、突っ込んで尋ねてみる。
「なぜですか?」
「貴族として綺麗な魔法を使うためには、発音を完璧にすることが必須なのですよ。さぁ、無駄な考えは魔法を発動させるのに邪魔になります。呪文を唱えることだけに集中しなさい」
俺の質問に対して、鬱陶しそうな表情を浮かべながらも、ようやく答えてくれた。そして返ってきた答えは、貴族だから必要らしい、ということだけ。本当に、そうなのかな。彼の答えを聞いて、疑問に思う。
綺麗な魔法、ってなんだろう。発音によって、魔法の効果が変わるのだろうか。でも、そんな風に見えたことはない。呪文をスラスラと言えたら、カッコよく見えるのかもしれないけど。そんな事が、大事なのかな。
まだ俺が小さな子供だから、難しい理論など避けたのだろうか。そう思ったけど、それ以降の授業でも毎回、呪文の発音を繰り返す練習のみだった。
こんな事を続けて、魔法使いとしての能力が磨かれるとは思えなかった。もっと、必要なことがあるはず。そんな思いを抱えながら、授業を受けていた。
時々、質問もしてみた。しかし、俺の求める答えは返ってこない。
「質問したいことがあります」
「ダメです。集中しなさい。疑問など持たず、言う通りにすれば大丈夫ですから!」
魔法の授業の最中に、質問することも許されなかった。そんな疑問を持つことは、魔法を発動させるのに邪魔だからと。今は余計な知識なんて必要はない、と言われてしまった。最初に勉強した、魔法の初歩だけ覚えておけば問題ないらしい。
魔法の実技は、呪文の練習だけで十分と。問答無用で、呪文を唱えるだけの練習に没頭させられる。
これが、魔法の授業として当たり前な光景なのだろうか。それとも、フリオという人物が教師を務めているからなのか。それは分からない。
能力を高めるためには、無駄な授業だと俺は感じていた。
もっと詳しく、魔法の仕組みを知りたい。理論について学びたい。魔法使いとしての能力を鍛えていきたい。
だから俺は、授業で教師のフリオから言われた通り素直に従い、授業を受けているフリをしながら、独学でも魔法について勉強してみることにした。教師フリオの授業う受ける前から、始めていたこと。
プライドの高そうな教師のフリオには内緒にしてバレないように。授業以外の時間に集中して、勝手に魔法の勉強をしようと思う。
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