第4話 魔法の授業
子供という立場を利用して、父親にお願いして教師をつけてもらうことになった。ただ、魔法の勉強を始めるのは8歳からだという。もう少しだけ、年齢が上がるのを待たなければいけないらしい。
それまでに何もしないのは時間が勿体ないので、独学で勉強してみることにした。屋敷に置いてあった本を読んで、魔法に関する知識を蓄えた。本を読んだだけじゃ、実践は出来なかったけれど。
ちなみに最初、文字が読めなかった。本に書かれているのが、どう見ても日本語とは違う文字だったから。
話せるのに読めないのは、なぜだろう。悩みながら、しばらく本を凝視していた。すると徐々に何が書いてあるのか、分かるように。スッと、意味が理解できるようになった。文字が読めるようになって、書く事も出来るように。
普通では、ありえない程の短時間で習得した。もしかしたら、これが異世界に転生してきた特典なのかもしれない。異世界の言語を理解出来るようになるとか、とてもありがたい能力。こうして俺は、屋敷にある本を片っ端から読み漁る事にした。
それから、また時間が過ぎて俺は8歳となった。父親と約束した通り、魔法使いの先生をつけてもらうことに。
「本日から、貴方の教師を務めるフリオと申します。よろしくおねがいします」
「リヒトです。どうぞ、よろしくおねがいします」
いかにも魔法使いというような、黒に近い紺色のローブを纏った中年男性が子供の俺にも丁寧に挨拶する。俺も名乗ってから頭を下げて、挨拶を返した。
「それでは早速、リヒト様の魔法使いとしての素質を確認してみましょう」
「わかりました」
挨拶してすぐに、魔法の授業が始まった。まず最初に、俺の魔法に関する能力について調べてくれるらしい。
魔法使いとしての素質、は知っている。魔法使いには、それぞれ素質があると本に書かれているのを読んだことがあった。それを今日、調べることが出来るらしい。
素質の確認は大事だ。これから、どのような魔法を学んでいくかを決める材料になる。素質によっては得意な魔法、苦手な魔法、使える魔法に使うことが出来ない魔法もあるらしいから。
父親は、火と土の素質があるのを見せてもらったことがあった。魔法を使った害獣駆除を行った時に。さて俺の素質は、どうなるのかな。
教師のフリオは、拳よりも少しだけ大きい透明な玉を取り出して、テーブルの上に置いた。
「この玉に手をかざして。それから集中して下さい。置かれた玉に力を込めるように念じてみて下さい」
「こうですか?」
指示された通り、俺は透明な玉の上に覆い被せるように手を開いて向けた。握れるぐらいの大きさの玉に。すると何やら、透明だった玉の色が変わっていく。その色は赤だった。
「よろしい。そのまま」
「赤くなりました」
「うむ、そうだな。赤い」
赤くなった玉の前に、教師のフリオは顔を近づけて注意深く何かを確認していた。これで、俺の能力が分かるのか。赤いということは、父親と同じ火の素質かな。
「つまりこれは、火の魔法に素質があるという事です。しかも、かなり強い光です。これは、素晴らしいですよ」
「そうなのですか」
玉の光で素質を確認してみると、やはり俺が火の魔法に素質があることを示しているそうだ。
これは、通常よりも強く光っているらしい。この光の強さから、魔法を使いこなす能力が高いということも判明したらしい。
通常よりも強い素質があるなんて、嬉しいな。俺は喜んだ。もしかすると、これも転生の特典なのかもしれない。生まれ変わった時に、強い力を授けてもらえるなんて話を聞いたことがある。
生まれてから今まで、そんな力を感じたことはなかった。言語を習得する能力ぐらいかな。もしかすると今回の、魔法の才能もそうなのかもしれない。人と比べて、強い火の素質がある。
そうなんだとすれば、この素質を腐らせないようにしないといけない。もともと、魔法は集中して勉強するつもりだった。だけど、より一層やる気が出てきた。
後で知ったのだが、俺の母親のマティルデは火の魔法の素質があった。父親も火の素質があったので、そんな両親から火の素質を素直に受け継いだようだ。転生の特典とかは、あまり関係ないのかもしれない。とにかく俺は、火の強い素質を持っているらしい。
そして教師のフリオは、火の魔法の達人だそうだ。都合がいいなと思ったけれど、事前に俺の素質を予想していたのかもしれない。
彼に火の魔法について教えてもらって、魔法を自由自在に使えるようになりたい。火以外の魔法も学んで、様々な種類を使いこなせるようになりたいな。
こんな感じで新しい人生、異世界の生活というものを満喫していた。
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