第六話 密談

前回のあらすじ


紙月のにおいを堪能した挙句、他の男とお風呂をいただく未来。

プレイボーイ、なのか……!?






 生まれてから一度も村を出たことがないポルティーニョにとって、ブランフロ村が世界のすべてだった。


 傾斜ばかりで小さい頃は転んでばかりいた道。

 いびつな形で、段差も多いから、面積を稼げない畑。

 茸や木の実、山菜や野の獣、恵みを与えてくれると同時に、死の潜む森。

 父と二人で過ごした、迎賓館の何でもない生活。


 雪に閉ざされた家の中で過ごす、年越しのささやかな食事。

 泥を踏み分けながら、春の訪れを祝う雪割り祭り。

 畑を耕し、種をまき、伸びすぎた木々を伐り、せわしない夏の日々。

 やがて来る冬に備え、あらゆるものを蓄えていく秋の勤め。


 それはきっと、狭い村の中の、面白みもない日々の繰り返しだったのだろう。

 旅人が訪れることもない、行商人も長居しない、退屈で面白みのない村。

 それでも、ここがポルティーニョのすべてだった。ポルティーニョの世界だった。

 父とポルティーニョの、二人の住む世界だった。


 寒さに凍えて眠れぬ夜に、屋根の上に登らせてもらって、父の腕の中から見上げた星の色を覚えている。その輝きを、瞼の裏にいまも覚えている。

 好奇心のままどこまででも歩いていくのを見かねて、父の腰に縄でつながれたことを覚えている。そのまま駆けだして、二人して泥に突っ伏して落とされた拳骨の痛みを覚えている。

 秋の実りを集めながら山に登り、見下ろした景色を覚えている。あれが村で、あれは馬栗ヒポカシュターノの林、あの向こうは町があると、父の指に広がる色彩を覚えている。

 父の体温を覚えている。息せき切った足取りを、弾む鼓動を覚えている。熱に浮かされた曖昧な記憶の中、その背中と、苦い薬の味を、いまもよく覚えている。


 ブランフロ村が、この小さな村が、ポルティーニョの世界だった。

 いいえ。ううん。そうじゃない。

 父のいるこの村が、ポルティーニョにとっての世界だった。

 父の存在が、当たり前のようにそこにはあった。


 幼いポルティーニョが、父に問いかけたことがある。


「ねえおとん、おかんはさあ、どんなひとだったの?」

「……母がいなくて、寂しいか」

「さびしくはないよ。ほんと」

「そうか」

「……ちょっとさびしいかもしんない」

「そうか」


 父がそう言ってほしいのかもしれないと思って言い直したけれど、父の「そうか」は変わらなかった。

 実際のところ、母の不在に、寂しさを覚えたことはなかった。片親であることに、劣等感や疎外感を覚えたこともなかった。村の人たちは優しく、ポルティーニョには父がいて、だから覚えてもいない母のことを寂しく思うことなどなかった。欠けたものはなく、満たされていたから。


 母の顔も、母の声も、どんな人だったのかも、ポルティーニョは知らない。

 村の人たちが折に触れては教えてくれることも、なんだか実感がわかなくてどこか遠くの知らない人としか思えなかった。

 ただ、確信があった。

 言葉を交わしたこともない、目を合わせたこともない、その匂いさえ知らない母について、きっとそうなのだろうと胸の中で強く思っていた。


「おとんはおかんいなくてさびしい?」

「寂しくはない。だが」

「だが?」

「たまに、困る」


 その返答がどういう意味だったのか、成人を迎えたいまでもよくわかってはいない。

 ただ、決められた手順めいて頭をなでてくれる父の手の暖かさを覚えている。

 木石に目鼻を付けたような無表情が、静かに見下ろしていてくれたことを覚えている。

 そして、そのたびに母を思う確信が強くなる。


 そうだ。

 きっとそうだ。

 母もきっと、自分のように悪趣味だったのだろうと、大好きな父に抱き着きながら。



◆◇◆◇◆




 雪を踏む者もいない静かな夜更けのことである。

 迎賓館の管理人であり、自身を余所者であると標榜する男アンドレオの部屋にはまだ明かりがともっていた。

 狩りに用いる弓と矢。雪崩起こしに用いる発破。農機具や、刃物の類。何に使うのかもわからないこまごまとした工具たち。整然と並べられた道具の中には危険なものも多く、娘のポルティーニョでさえ、普段はこの部屋に立ち入ることは許されていない。

 その部屋の中に、いま、二人の男の姿があった。


 一人は部屋の主であるアンドレオだった。

 素朴な木の椅子に座り込み、武骨な作業机に向かい、そしてそこに似合わない奇妙に精緻な工具を繊細な手つきで扱っていた。

 その手の中でいま最後の部品を組み上げられたのは、奇妙な金属製の兜だった。

 騎士たちの用いる重厚で、権威ある装飾に飾られたようなものではない。

 冒険屋たちの扱う粗末で、しかし生活と闘争が染み付いたものでもない。

 金属の質が違う。加工の精度が違う。機構の複雑さが違う。秘められたる機能は想像も及ばない。

 それははるかに遠い文明で生み出されていた。

 奇妙な兜。あるいは……マスク。

 

 その様子を見守っていたのは、彼の客人であるという、あの火傷痕の男だった。

 貸し出された粗い生地の寝間着の下に見えるのは、不思議な光沢と高い伸縮性をもつ奇妙なスーツだった。肌に張り付き、薄く見えるそれは、高い保温性や保湿性を持つだけでなく、男の皮膚機能を代替し、あるいは強化する、もう一枚の皮膚ともいえる。


「いい湯だった。シャワーのほうが楽だったのだが……どこにでも浴場がある割に、簡単な加圧ポンプも普及していないのだから、歪な発展をしたものだな。──《火よイグニス》」


 同じ素材の手袋におおわれた男の掌が、湿り気を帯びた髪にかざされると、発せられた熱気が水分を柔らかく奪っていく。それは恐ろしく精妙な火の魔法だった。一つ間違えれば自分の頭を丸焼きにしかねない危険行為……しかし男にとってそれは片手間にすぎない。


「メンテナンスは済んだか」

「ああ。ウィザードの装備というのは頑丈なものだな。二十年前の工具でも間に合った」

「工兵の腕は衰えていないようだな」

「お役に立てれば幸いだ」


 アンドレオから受け取った兜は、男の手の中で複雑な機構を開放し、内側から開いていった。金属と樹脂と、ある種のメタ蛋白質で構成された奇妙な機械。

 男がそれに顔をはめ込めば、機構は速やかに閉ざしていき、頭部に正確にフィットする。

 細身の金属兜──その姿は、かつて三度にわたって《魔法の盾マギア・シィルド》の前に立ちはだかった怪人のそれだった。


 怪人。

 狂炎。

 魔術師。

 破壊工作員。


 その名は、絶えぬ炎のウルカヌス。


 直接の戦闘においては一敗を喫したものの、なおしぶとく生き延びて暗躍を続け、純粋な火力においては森の魔女とうたわれる紙月をもしのぐ、強大な炎の遣い手である。


 ウルカヌスは具合を確かめるように首をかしげながら、兜越しに部屋の中を見渡した。有機カメラの視界と各種センサーのもたらす情報を検めたのち、丁寧な所作でそれをまた外す。

 頭部の保護のみならず、情報面においても大きなアドバンテージを与える装備ではあるが、堂々とこれをかぶって出歩くわけにもいかない理由があった。


「くっ……面倒な時に、面倒なやつが来ているものだ」

「……森の魔女とやらか。噂には聞くがな」

「あれにはこのマスクを知られている。迂闊なことはできん」

「ほう……」


 短い間にも、アンドレオにはウルカヌスの気位の高い性格がわかってきていた。

 その男がここまで警戒をあらわにする相手というのも興味深くあった。

 見た目からは、ただのきゃしゃで頼りない小娘にしか見えなかったが、魔術的素養は必ずしも外見に現れるものではない。

 目の前の男が、ただ一人で一軍と匹敵すると評される人間兵器、ウィザードと呼ばれる化け物であるように。


中央セントラルのウィザード様、エリート中のエリートが警戒するとはな」

「煽るな、工兵。…………ふん、忌々しいが優秀ではある。木偶風情がよくもまああそこまで練り上げたものだ。あるいは、戦闘モデルの末裔かもしれんな」


 安い挑発には乗らない。とはいえ、それは確かにウルカヌスをいらだたせる事実ではあった。

 ウルカヌスは才能と努力、そして多大な犠牲を払って炎の魔術を極めた。それが、水の情報素に支配された海上で、手数の多さとからめ手によってとはいえ、無様にも敗北を喫したというのは認めがたいことである。

 ましてその水の魔術の遣い手が、炎においても恐ろしいまでの火力を発揮できる多才を見せつけてきたのだから、心落ち着くものではない。


 しかし、事実は事実なのだ。

 ウルカヌスのいら立ちは、認めがたい現実を認め、事実は事実として受け入れるという彼自身の生真面目なほどの学者としての性質がゆえであった。

 誰よりも紙月の能力を評価し、警戒しているからこそのいら立ちなのだ。

 ウルカヌスは確信していた。凡百の騎士でも魔術師でもなく、あの女、ではなく女装の男こそが自分の最大の障害となるだろうことを。


「アンドリュー。先だっての話、意見は変わらないか」


 意識して己をなだめ、ウルカヌスは工具をまとめて収めているその背中に問いかける。

 アンドレオは落ち着いた手つきで作業を終え、振り返らないままに静かに答えた。


「ああ。すまんが、あんたの話は聞けない」

「アンドリュー……」

「アンドレオだ」


 深いため息。

 いらだち……そして困惑。ウルカヌスは戸惑っていた。

 アンドリュー、いまはアンドレオを名乗るこの男は、ウルカヌスと故郷を共にしていた。すなわち、聖王国からやってきた男だった。

 彼は帝国に、ブランフロ村に根を下ろした“草”……潜入工作員スパイだった。

 長い時間をかけてその土地の人間として生き、その土地に馴染み、ひそかに本国に情報を送り、そして有事の際にはその立場を利用して様々な工作を行う。それがアンドレオの役目だった。


 その土地に馴染むということは、その土地に愛着を抱いてしまうことでもある。

 どんなに冷徹な教義に従おうと、どんなに高い忠誠心を持っていようと、人の心は移ろうものだ。仲間として生きれば、共同体で過ごせば、その心が惑うのは道理だ。

 だから、潜入工作員の心変わりはある程度想定されうるものだ。

 しかし、それでも、ウルカヌスは困惑を隠しきれなかった。


「わかっているのか? お前は……」

「あんたの言い分はもっともだろうな。最外縁部アウター出身の木っ端工作員は、セントラルのエリート様の言うことを聞くべきなんだろうさ。だが俺は、工作員と言っても所詮は捨て駒だ。粗大ごみじみたMAEVメイヴだけを頼りに、臥竜山脈越えなんてイカレたルートなんて……そんなもん、口減らしだろうよ」

「それは……過酷だったとは思うが」

「分隊は俺以外全員途中で脱落したよ。死んだ。敵と戦うわけでもなく、ただ寒さと厳しさに打ちのめされて死んでいった。山を越えてみれば、通信は圏外。最初からろくな指令だって出されちゃいない。二十年だ。二十年も捨て置かれて……いまさら命令を聞く気はない」


 それは感情を思わせない淡々とした語り口だった。

 すべては過去のことだった。聖王国での暮らしも、分隊の壊滅も、孤独な作戦行動も、すべてはもう過去のことだった。男にとってそれは、何もかもが過ぎ去ったことだった。

 臥竜山脈の雪と氷が、男のすべてを漂白してしまっていた。極限の世界が、何もかもを削り落としてしまった。いまこの男が持っているものはみな、この村で与えられたものなのだ。


 まるで冷たい岩のような拒絶を、ウルカヌスは感じた。


最外縁部アウターの人間が中央セントラルを憎むのもわかる。私も、外縁部エンドの出身だ」

「ほう。スラムのガキが、ずいぶんと出世したものだ。秀才様だな。運もいい」


 アンドレオの口元に、皮肉気な笑みが浮かんだ。


「だが、壁の内と外では、話が違う。あんたの凍えた寒さと、俺たちが死んでいった寒さは違う」

「……確かに、私にはわからん」

「あんたはもうずいぶん仕事をこなしてきたようだな。俺の情報網にも、少なくない情報が入ってきている」

「国のためだ。故郷の、聖王国のためだ」

「素晴らしいことだな。俺にはそんな気持ちはない。愛着も恩義も感じない」


 ウルカヌスは、アンドレオの冷たい物言いに、しかし怒りは覚えなかった。

 ただ困惑とやるせなさがあった。


 最底辺で生まれて、すべてを賭してでも成り上がってやると誓った。汚染された排水をすすり、配給のブロックを奪い合って生きてきた。その屈辱も苦悩も、すべてを背負って這い上がってきた。

 だがそれさえも、本当の底ではないのだ。


 アンドレオが生きてきた最外縁部アウターという地獄。

 壁にへばりつくようにして貧民たちが生きる、エネルギーも食料も滞るスラム──それよりもさらに外側こそが最外縁部アウターだ。そこは、正真正銘、文字通り都市外殻のなのだ。


 聖王国の首都にして唯一の国土、残されたたった一つの城塞、零落した天空の都、カ・ディンギル。人々を守りはぐくむその強固な壁と天井の外側に、最外縁部アウターはある。

 来るはずもない外敵に備えた見張り番であり、人の手を拒む厳寒の北大陸を調査・開拓する任を帯びた永劫の奉公人たち。

 神々との争いにおいて裏切り、あるいは罪を犯した者たちの末裔。


 かろうじて壁の内側であった外縁部エンドでさえ、死は隣りあわせだった。飢え、凍え、死と病がはびこっていた。

 だが最外縁部アウターにおいては、死さえも救いだった。

 彼らには生殖の自由はなく、そして死に絶える自由さえない。

 一定の年数を経過すれば、つまり生き過ぎれば、あえて過酷な任を与えてすり潰す。

 数が減り過ぎれば、すなわち死に過ぎれば、だれも望まない生命資源が産出され不足を補う。

 使い捨ての、消耗品の機械と変わらない扱い、それよりもなおむごい。

 ただただ無為に無意味にすり潰すことだけを目的とした凌遅刑の罪人たち。

 彼らは無為にして永遠の奉仕を強制された奴隷だ。


 そんな彼が聖王国の正規エージェントとしてやってきた自分を拒むのも道理だ。

 宿を貸し、メンテナンスを請け負ってくれただけでも、望外のことと言える。

 それがたとえ、早々に出て行ってくれという意思表示であったとしてもだ。

 通信機にわずかな反応があったためにこうして頼ってやってきたが、それもただ二十年捨て置かれた機器が応えたというだけにすぎなかったのだ。


「もう、二十年だ。娘もできた。国の言い方をすれば、生命資源も産出できた。もう、いいだろう」


 アンドリューは、いや、アンドレオは聖王国の潜入工作員としての身分を完全に捨て去っていた。この過酷でさびれた村の一員として、骨をうずめる気でいるのだ。死の大陸と比べれば、ここでの生活はどんなにか恵まれていたことだろうか。


 だが、解せない。

 だからこそ、度し難い。

 ウルカヌスは苦悩に顔をゆがめた。

 彼には理解できない。

 とても許容できるものではない。


「わかっているはずだ。その娘もただではすまんぞ。この村も、村人たちも」


 脅すような物言いに、しかしアンドレオは答えなかった。

 その静けさが、ウルカヌスをいらだたせ、困惑させる。


「貴様らのため込んだ情報素結晶体を明け渡せ。それだけで済む話だ」

「不可能だ」

「私は中央セントラルで学び、極めたウィザードだ。人間兵器とあだ名されるその実力、疑うわけではなかろうな」

「……………」

「ただの脅しだとでも思っているのか? 協力しろアンドリュー。平穏な生活を失いたくはないだろう」

「……………」

「あれはもはや兵器だ。こんな寒村で抱え込んでおくべきものではないし、抱え込んでおけるものでもない。私であればあれを安全に運用できる」


 ちり、と肌を焦がすような熱気が、ウルカヌスからあふれる。

 魔術を編んだわけではない。ただその感情の高ぶりだけで、炎の魔力がにじみ出ているのだ。常であれば特殊耐爆耐火スーツが抑え込むべきそれが、陽炎のように揺らいだ。


 だがその鼻先を叩くように、アンドレオの冷たい拒絶が返った。


「話は終わりだ。俺は、俺のやりたいようにやる」

「貴様!」

「あんたの装備はメンテナンスも済ませた。必要な資材も、ポルティーニョにまとめさせておいた」

「なぜだ! 後悔するぞ、アンドリュー!」

「アンドレオだ。……役に立てず、すまないな」







用語解説


・奇妙なスーツ

 帝国内では流通していない素材、製法で作られたもの。

 体にぴったりとはりつき、それでいて窮屈感はない。

 リアルタイムで着用者の身体データを読み込み、体調に合わせて保温・保湿する。

 また衝撃に対して硬化、衝撃の分散などを自動で行う。

 これ一枚でも、生半可な鎧などより優秀。

 また、発汗を吸収分解し、べたつかない。

 消臭効果も相応にあるが、長期間の運用においては洗浄が必須。


・ウィザード

 聖王国において、最も優れた能力を有する魔術師に対する称号。

 もっとも、聖王国では魔術師という呼び方は一般的ではなく、エーテル感応能力者、事象操作技術者などと呼ばれている。

 能力至上主義である聖王国においては極めて高い地位があるが、同時に優秀なものはより高度な職責を要求される。



・メタ蛋白質

 聖王国の遺跡などで、一部の機械仕掛けの穴守の部品などに見られる素材。

 人工的に作られた筋肉のようなものであり、エネルギー供給さえ続いていれば機能を維持し続ける。

 帝国では製造できず、移植も難しいため、実用化はされていない。

 人族はこれを食べて消化できるが、味はあまりおいしくはない。


・絶えぬ炎のウルカヌス

 聖王国の破壊工作員。

 潜水艦による通商破壊工作など、帝国に対して結構な損害を出している指名手配犯。

 遺跡荒らしなどもしており、水面下で着々と準備を進めているようだ。

 《魔法の盾マギア・シィルド》の二人を相手には敗戦を続けているが、まともに遣り合えば厳しい相手ではあろう。

 なにより、《魔法の盾マギア・シィルド》の二人よりだいぶ常識人なので、たまに正論で殴られる。


最外縁部アウター

 聖王国首都の「外殻」を補修維持しているとされる最下層階級民。

 またその居住する都市外集落。


・MAEV

 メイヴ。

 多脚武装工兵車Multi-legged Armoured Engineering Vehiclesの略称。

 ここではその極限寒冷地仕様。

 聖王国がしばしば用いる多脚戦車の一種。

 これは工兵隊に所属する工兵の用いる車両で、火砲などの直接戦闘用の兵器は最低限ではあるが、土木作業や建設など、様々な作業を可能としている。

 仮に万全の状態のこれが一台あれば、村やちょっとした町程度の土木作業はすべて任せられる。

 聖王国基準でも一応は戦闘可能。帝国基準だと、連携の取れた騎士十名程度で当たるべき相手だ。


・過酷

 未踏の北極海沿岸ルートをワンオペ潜水艦で旅させられたエリートが言うのだから、それは過酷だったのだろう。


外縁部エンド

 聖王国首都のもっとも外側に住むもの、またその土地。

 外殻の内部ではあるものの、エネルギーや食糧の配給は限られており、貧困下にある。

 能力至上主義である聖王国では、成果を出せないものは最終的にこのエンドに追いやられ、よほどのチャンスがなければ這い上がることは困難とされる。

 そういった内部の事情をある程度知っているあたり、アンドレオはアウターの人間としてはある程度知識を持っているようだ。


・カ・ディンギル

 聖王国の首都にして、現在唯一の領土。

 その全体が強固な外殻におおわれており、内部でエネルギーや水、食料などを循環しているという。

 かつては天空に浮かんでおり、無敵の防壁に守られていたとされるが、現在は極寒の北大陸に墜落し、再起の時をはかっているという。


・生命資源

 何もかもが制限された聖王国では、人間さえも資源の一つ。

 交配はもちろん産出にも許可が必要となり、合意なしでの行為は尊厳に対する最大級の侮辱である。


・情報素結晶体

 聖王国における精霊晶フェオクリステロの呼び方。

 彼らの学問、記述論的事象操作技術体系において、精霊や魔力などは情報素として扱われている。

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