第十一話 鼠捕り
前回のあらすじ
自爆覚悟のピオーチョ。
それならばと紙月は策を練るが。
作戦はこうだった。
「まず、俺の魔法で広間につながる坑道を一つに絞ります」
「敵の侵入経路を絞るわけだね」
「そういうこと」
この坑道を爆破する工程でも、ミノの計算能力には助けられた。これをもとに再計算が行われ、発破の位置に微調整が加えられ、そして次の段階である。
「いくらばあさんが餌を持ってきているとはいえ、敵は大群だ。すっかりこの広間に誘い込む前に餌切れになっちまう」
「だからって今から餌用に石やら金属やらを持ってくるってのは勘弁しておくれよ」
「大丈夫、そこは俺が魔法で用意する」
「魔法でえ?」
「そして
「それで、あんたらはどうやって逃げるんだい」
「逃げない」
「なんだって?」
「未来、耐えられそうか?」
「ええ? ……ああ、
「というわけだ」
「どういうわけだよ」
「作戦開始ってことさ」
布陣はこうなった。
開けた坑道から一番離れた壁を背にして発破役のピオーチョと、護衛のミノ。
そしてそれを守るようにして未来が立ちふさがり、その背に紙月がしがみつくいつものスタイル。
「さって……じゃあ、まず餌やりだ! 今日ここで見たことは内緒にしてくれよ!」
紙月は右手で広間の中央あたりを指さし、左手を踊るように空に舞わせる。右手でクリック。左手でショートカットキー。いつもの動きだ。
今日使うのは《
「この世界じゃ新技披露! ぶちかませ! 《
ずずず、とわずかに地面が揺れ、引き換えに、地面から何本もの金属製の剣が飛び出してくる。それが三十六回分、盛大に地面を切り刻みながら溢れ出てくる。
《
そして紙月の期待していたところに、
「よしやっぱり消えない!」
あとに残るという点がある。
元のゲーム内ではすぐに消えてしまった金属の刃だが、ここは一応は現実世界である。土が崩れたり火が消えたりはしても、地竜に刺した《
ではこの金属の山にさらに《
「《
使えば使うほどにそこには金属製の刃が積み重なっていく。がちゃりがちゃりと激しく打ち合わせながら無数の刃が溢れていく。
「こ、こりゃあ……理屈に合わないじゃあないか……」
「実際、この鉄がどっから湧いてきてるのか、そもそもまともな金属なのかは、それは俺にもわからない」
「恐ろしいこと言うねあんた!?」
「だがわかるのは……釣れたってことさ!」
間もなく、どろどろとおどろおどろしい足音が去来する。
山と積まれた金属の刃に阻まれてこちらにまでは到達できないが、いや、到達する気もないようだが、悍ましいほどの
これではどんなに分厚い装甲に身を包んだところで、いや、装甲に頼れば頼るほどにいい餌となってしまっただろう。またどんなにか鋭い武器だって、このように齧られてしまえばかたもない。
かといって貧弱な装備で挑めば、この強固な鱗を貫く事もまたできない。
その勢いたるやまるで金属の硬さなどものともしないもので、成程
「やべっ、思ったよりもいる。お代わりいりそうだな」
「紙月、そろそろぼく準備するね」
「おう、頼む。ミノ、お客さん入り切ったか?」
『もうそろそろ………いまので最後であります!』
「よし、未来!」
「うん、いくよ!」
返事とともに、瞬時に未来の鎧が、まるで大樹に包み込まれたような異形の鎧に切り替わる。土属性に対して非常に高い耐性のある《ドライアドの破魔鎧》である。そしてそろいの《ドライアドの破魔楯》を上方に構え、未来はどっしりと腰を落とし、膝をつく。
「『タワー・シールド・オブ・エント』!」
ここには植物の気配というものがないが、それでもあたり一面の土から養分を吸い取り、《ドライアドの破魔楯》はドーム状に変化して一行を包み込む。
「おお、おお、いったいこりゃあ!?」
「発破やる前に心臓発作起こすなよ!」
「しゃらくさい!」
「《
続けて絶対防御の輝きが、この木製のドームを取り囲み、著しくその強度を高めていく。
かつてここではない世界、ここではないどこかで、何者にも貫くこと能わずと語られた神話の鉄壁がいま、完成した。
「ばあさん!」
「覚悟をおし!」
「とっくに!」
「よし……発破!」
かちり、とスイッチが押され、何もかもが吹き飛んでしまった。
ような気がするほど、それは圧倒的な衝撃だった。
計算ずくで仕掛けられた発破はその全てが同時に起爆し、その衝撃は的確に広間上層の岩盤を突き崩し、これを落盤せしめたのだった。
用語解説
・《
《
敵の足元から金属製の刃を繰り出す《
攻撃力は《
『《
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