第五話 石食い
前回のあらすじ
枯れ果てた鉱山に出没する
一行はその謎を追って坑道へと向かった。
「
「そうさ。いま鉱山に出ている魔獣連中のことさね」
人間と違って文句も言わずひたすら石を食っては体内で精錬してくれるわけだから、これを養殖して鉱山掘りに使えないだろうかと模索したものもいたことがあったらしいが、十分な量の鉱石が採れるほどに育った
「あいつらが出るようになってからは、あたしらも迂闊に坑道に入れなくなってね」
「そんなに強いんですか?」
「あたしなら、一対一ならそう苦労はしないさ。でも考えてごらんよ。石を餌にするような連中だ。こっちがどんなに武装してもがりがりとやられちまうんじゃ、じり貧もいいとこだね」
「一応領主様にも報告はしたんだけどね、何しろとっくに閉山した鉱山だし、
極端な話、放っておいても害はないのだから、領主としては人員を裂く必要などないのである。困っているのは趣味人の職人たちだけとなればなおさらだ。
「わたしらもまあ、趣味の範疇だから強くは言えないし、かといって自衛してっていうにはちょいと相手が手ごわすぎてね。もう諦めようかって思ってたんだが、そこに今回の依頼さ」
それこそ山のように眠っているクズ石が金になるというのもあったが、なにより魔獣退治も依頼に含まれているというのが気に入ったのだという。そしてさっそく組合に応援の依頼を出したところ、その名も高い森の魔女と盾の騎士が釣れたというのだから、これは望外というほかない。
「あんたら、地竜をサクッと伸しちまったんだって? 聞いてるよ」
「いや、そこまで簡単ではなかったんですけど」
「冒険屋にしちゃ素直な奴だね。まあ、でもいいんだ。それなりに使えるってのがわかりゃあね」
ピオーチョに言わせれば、一度発生した
「それでもある程度倒せりゃちっとは安全になるし、憂さも晴らせるってわけよ」
「成程」
やがて馬車は目的の鉱山へとたどり着き、その後は歩きで坑道へと向かうことになった。
「昔は五本の主坑道があって、それぞれに入り口があったんだけどね。いまは危ないんで、一番坑道以外は塞いじまってる」
「塞いでる?」
「魔術師が爆破して埋め立てたよ。子供が忍び込んで怪我する事件があったんでね」
それでも一本は坑道を残したのは、やはり、未練という他にないとピオーチョは笑った。
やがて見えた坑道は、人が何人もすれ違って歩けるような大きな立派なものだった。支えの梁も立派なもので、いまも全くこゆるぎもしない。
「まあ立派なのは入り口だけで、潜りゃもうちっと貧相なもんだがね」
あんたら鉱山に潜ったことは、と聞かれて、二人は首を横に振った。
「だろうね。じゃあ、潜る前にいくらか装備を整えなくちゃね」
「装備?」
「安心おし、持ってきてやったから」
そういってピオーチョが寄越したのは、エメラルドのような緑色の宝石が閉じ込められた、鳥かごのような形のペンダントトップだった。これまた
「山ン中に潜るとね、あたしら
「ああ、確かにそうですね。あんまり深く潜ると、酸素がなくなっちまうんだっけ」
「で、こいつは《金糸雀の息吹》ってぇちょっとした魔道具でね。こいつを身に着けていると息が詰まらなくなるのさ。種の
中の緑色の石が
旅をする冒険屋ともなれば、呼び水を注ぐと綺麗な水を吐きだす
「この石はどれくらい持つんですか?」
「そうさね、こいつはあたしお手製だからね。普通にしてりゃ一日は持つ。激しく運動したら、もう少し短くなるね」
「少なくとも一回潜る分には問題なさそうですね」
それから次に、ピオーチョは腰の《
「手が一本塞がるから好きじゃないんだけどね、あたしら
「あ、俺暗視持ちです」
「なに? 人族じゃないのかい?」
「ハイエルフって言うんです」
「聞かないねえ。まあいいや、そっちの鎧、ミライは?」
「ぼくも暗視装備あるんで大丈夫です」
「便利な奴らだよ。まあ、邪魔がなくっていいや」
ピオーチョは少し安堵したようにランタンをしまった。坑道に慣れたピオーチョと言えど、手が一本減るのは嫌だったらしい。四本もあるのだから一本位と思うのは、種族が違うからだろうか。
「じゃあ取り敢えずの準備は整った。あとは潜ってからおいおい話そうかね」
用語解説
・《金糸雀の息吹》
・
風の精霊が宿っている、または結晶化したとされる石。刺激を与えると風を起こしたり、新鮮な空気を生んだりする。その産地によって風の質が違うようだ。
・
・
水の精霊が宿った結晶、とされる。見た目は青く透き通った水晶のようなもので、呼び水を与えるとその大きさや品質に従って水を生み出す。川辺など水の精霊が活発な所でよく生成されるが、道具として使用できるサイズ、品質のものはちょっとレア。ものによって生み出す水の味や成分も異なるようで、こだわる人は産地にもこだわるとか。
・
火の精の宿る橙色や赤色の結晶。暖炉や火山付近などで見つかる。
可燃物を与えると普通の火よりも長時間、または強く燃える。
希少な
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