第70話:アンナの試練、再び

 転移魔法を使い、再試験のためにアンナとやってきたのはあの試験会場。


 しかし、今回はそこに大観衆の姿はなく、他の姉妹たちの姿もない。


 そこでは魔王とアンナの母親の二人だけが広い会場の中央に佇んでいた。


「よう、待ちくたびれたぜ」


 以前のざわめきが嘘のような静寂の中、俺たちの姿を視認した魔王が開口一番に言った。


 あの時と同じく大仰な服を脱ぎ捨て、その身体を包むのは戦いに臨むための軽装だけ。

 部下たちがいないからなのか、それとも単にこの格好の方が好みなのかは分からないが準備の良いことだ。


 そして、それはアンナの試験が前回から変わっていないことも意味している。


 再びこの理外の化け物がアンナの対戦相手というわけだ。


「お待たせして申し訳有りません。それと、アンナの再試験の話を承諾して頂いてありがとうございます」

「はっ……、男の礼なんざ気持ちわりぃだけだからいらねぇよ」


 さいですか……。


 慣れない敬語で礼をしたのに損した気分だ。

 まあ、挑戦の機会を与えてくれたというのならそれでいい。


 正面にいる魔王から視線を切って、隣にいるアンナの様子を確認する。


 その目は真っ直ぐに両親へと向けられている。

 今のところは冷静そのもの、問題はなさそうに見える。


「父上、この不肖の身にもう一度機会を与えて頂いて感謝の至りです」

「おう。だがな……これがまじの最後だ。もう次はねーぞ?」

「はい、承知しています」


 アンナは父親からの脅しとも取れる言葉にも冷静に対応している。


 後は本番でもその意志を貫くことが出来るかどうか……。


「覚悟は決まってるみてぇだな……。よし、そんならお前らは外に出てろ」


 俺とアンナの母親へと向かって、魔王が魔法障壁が張られる外側へと出るように指示する。


「アンナ、大丈夫だな?」

「ああ、情けなかった私を後押ししてくれた妹たちのためにも……もう逃げはしない。それに……あの者への雪辱も果たさねばなるまいしな」

「あの者……? ああ、そうだな」


 それがリリィのことを指していることにすぐ気がつく。

 一度立ち止まってもらうために戦わせた相手だが、好敵手の存在は単純に良い刺激にもなっていたらしい。


「じゃあ、後は俺からお前に最後の助言だ」

「おい! 何やってんだ! さっさと出やがれ!」


 静まり返った会場に急かす魔王の声が響く。


「あの馬鹿親父、ぶっ殺す気で行ってみろ」


 アンナ以外には聞こえないように最後の助言を囁いた。


 指し示すのは何度見てもただのチンピラにしか見えない魔王。


「父上を……殺す……?」

「そうだ、もし出来たらお前が次の魔王だぞ。こんな機会、他にあるか?」


 もちろん九割は冗談で、そのくらいの気持ちで挑んでみろという意味。


 でも一割は本気だ。

 もし娘にやられたならば喧嘩馬鹿の父親には本望だろう。


「ははっ、そうだな。確かに、こんな近道がすぐそこにあることには気づかなかったな……」


 アンナも冗談半分にそう答える。

 だが、父親を見据える目には僅かではあるが本気の色も浮かんでいる。


「おら! さっさと出やがれつってんだろ! 失格にすんぞ!」

「じゃあ頑張れよ!」


 流石にこんなことで失格になったら洒落にならない。

 アンナの肩を軽く叩いてから、怒る魔王に背を向けて障壁の範囲外へと向かう。


 俺が範囲外へと出た瞬間に四方を囲む石柱から魔法障壁が張られ、再試験の準備が整った。


「お前が抜いたら開始だ……いつでも来な」


 魔王がアンナに向かってかかって来いという手振りと共にそう告げる。


 その言葉からは、今度はビビらずに俺に向かって来られるのかという意味が汲み取れる。


 同年代の好敵手との戦いと敗北。

 短いながらも長女として妹たちを引っ張った訓練の日々。


 その二つの出来事を通してアンナは大きく成長した。


 それでもあの理外の男とは一個体として絶望的な戦力差がある。


 だが、アンナの背中には前回のような動揺や恐れは一切見られない。

 そこからは必ず勝ってみせるという強い意志だけが感じ取れる。


 父親に焚き付けられたアンナが取ったのは、腰に携えた剣を抜くことではなかった。


 アンナが見えない剣を握るように、虚空へと手を突き出す。


 同時に障壁の内部に強い大気の奔流が生まれ、魔法障壁が内部から激しく揺さぶられ始めた。

 障壁を突き抜け、アンナの意志を体現したかのような強い熱波が俺のいる場所まで伝わってくる。


 直後、黒い篭手に包まれたアンナの手の内に決勝の場で見たものと同じ炎の剣が顕現した。


「父上、行きますッ!!」

「おう! 来いやッ!!」


 威勢の良い掛け声と共にアンナが父親へ一切の駆け引きもなく、真っ直ぐに突貫した。


 踏み込む足は地面を割り、軌道上には残焔が舞い散る。


 この場にはいない妹たちの後押しを受け、アンナは更に加速する。


「はぁああああアアアアッッ!!」


 まるで獣のようなアンナの咆哮。

 それに呼応するように炎の剣は更に多くの魔素を取り込んでいく。


 限界を超えて収斂された灼熱は、術者であるアンナをも焼き焦がしていく。


 右腕を包んでいる装具と衣服が蒸発し、竜人族特有の鱗が付いた素肌が露出する。


 耐熱に優れる種族であるとはいえ、その右腕には尋常ではない負荷がかかっているのは明らかだ。


 しかし、それでも足を止めることなく駆けたアンナが父親の眼前に到達した。


「し……ねぇええええッッ!!」


 一切の躊躇もなく、助言通りに全開の殺意を込めて炎の剣を父親へと振り下ろした。


「いきなり全開たぁ……悪くねぇッッ!!」


 対する魔王は真っ向から迎え撃ち、炎の剣を素手で受け止めた。


 二つの絶大な魔力がぶつかる。


 周囲を取り囲む魔法障壁は生じた衝撃波によって砕け散る。

 余波が会場全体を揺らし、天井からは建物の破片が降り注ぐ。


 凄まじい奔流が俺の方まで襲いかかってくるが、何とか二人の姿を視界に捉え続ける。


「……だがなッ! こんなもんじゃ俺は倒せねぇぞ!」


 魔王の全身から、魔力が斬撃を受け止める手へと集まっていく。


 次の瞬間、揺らめく灼熱の剣は魔王の手によって根本から握りつぶされた。


 無数の火の粉となって大気中へと霧散していく。


 力の差はやはり絶望的な程に大きい。


 だが、自身の最大魔法が打ち破られてもアンナの姿に諦念の色は一切伺えない。

 諸刃の剣によって大きな損傷を受けていながらも、その目にはまだ勝利が見据えられている。


「まだ、この程度でッ!!」


 アンナの咆哮が会場全体を揺らす。


 消失した切り札と熱傷により使い物にならなくなった右手を一切顧みず、アンナは左手を腰に掛けた剣へと添える。


 それを一気に引き抜き、父親の首筋へと向かって横薙ぎの一閃を放った。


 相手が常人であるなら、その首を跳ね飛ばして尚余りある勢いで放たれた剣閃。

 もはや試験の域を遥かに超える一撃。


 だが、それが振り抜かれることは無かった。


 魔族の頂点に君臨する男の首は、その渾身の一撃さえもたやすく受け止めた。


 魔王の首筋には僅かに血が滲む程の切り傷が生まれている。

 だが、それは渾身の一撃を以て得た成果としては限りなく小さい。


 逆に、全霊を込めた一撃を放ったアンナには大きな隙が生まれている。

 それでも尚一切の諦念を見せていないアンナへと向かって、魔王の腕が伸びていく。


 アンナは体勢を立て直そうとするが、もう間に合わない。


 そして――


「合格だ。よくやった」


 魔王はそう言って、アンナの頭をわしゃわしゃと見た目通りの乱暴な手付きで撫でた。


 それを見届けて、俺の口からは自然と大きな安堵のため息が漏れた。


「え……? ごう……か……」


 父親から告げられた言葉の意味を理解しきれていないのか、アンナは剣を持ったまま呆然と立ち尽くしている。


「一撃目も悪くなかったが……今の二撃目はまさに魂の一撃ってやつだったぜ。あいてて……」


 娘に付けられた傷を抑えながら、感慨深そうに今の一撃を寸評する魔王。


「で、でも……私……勝ってない……」

「あ? 俺は一言も俺をぶっ倒せたら合格なんて言ってねーぞ? ていうか、まじでやったら俺に勝てるわけねーだろ」


 それを言ってしまえば身も蓋もないが、勝つのが不可能だというのは誰の目から見ても明らかだった。


「いいか、アンナ。下の奴を引っ張っていく立場にいる奴はな、敵がどんだけ強かろうと、挑まなきゃならねぇ時があるってこった。分かったか?」


 魔王はアンナの乱れた髪の毛を梳くように撫でながら、優しく諭すように言った。

 それはこの試験の本質、そして以前までのアンナには足りていなかったものだ。


「はい、父上……肝に銘じました……」

「おう、分かったならもう他の奴らに情けない姿を見せんじゃねーぞ?」

「はい、もう見せません……」

「でも、お前よ……いくらなんでも死ねは流石にひでぇだろ……」


 震える声で答えたアンナに対して、魔王は口を尖らせながら拗ねたように言う。


 愛娘に死ねと言われて斬りかかられた事は流石に堪えたらしい。

 意外とメンタルは弱いのかもしれない。


「も、申し訳ありません……その……フレイがそう言えと……」

「え? お、俺?」


 そこまで言えなんて言ってないけど……ってめっちゃ睨まれてる。


「てめぇ……俺の娘に余計なことを吹き込んでんじゃねぇぞ……」

「あはは、その……えー、そのくらいの気概を持って挑めということであって、他意があったわけでは……」


 言い訳をするが、正直この父親に対して鬱憤が溜まっていたのはあるかもしれない。


「まあいいけどよ……とにかく、お前は合格だ」

「合格……」

「ああ、流石は俺の娘だ」


 魔王がアンナの髪の毛をまたわしゃわしゃと乱暴に撫で回した。

 直後にアンナが左手に持っていた剣を落とし、カランカランという小気味の良い高い音が場内に響き渡る。


 そして――


「よ、よかったぁ……ひくっ……ほんとに、よがっだぁ……」


 アンナは堰を切ったようにように大泣きし始めた。


「お、おいこら……な、何も泣くこたぁねぇだろ……」

「だ、だって……私……ひぐっ……父上に嫌われたのがど思っでまじた……」


 一昨日とは違い、その顔を腕で隠すことようなことも全くせずにアンナは人目も憚らずに号泣している。


「馬鹿なこというんじゃねぇよ。俺がお前らのことを嫌いになるわけねぇだろ。ほら、情けない姿を見せないって言ったばっかだろ」


 流石の魔王と言えども、娘の涙には弱いのか大きく狼狽している。


「だっでぇ……」


 父親の胸に顔をうずめて、俺や母親に見られていることなど気にせずにおんおんと泣きじゃくり続ける。


 張り詰めていたものが解放されて感情の抑えが効かなくなっているのだろうか。

 アンナは時間が経つにつれて泣き止むどころか、更に大きな泣き声を上げていく。


 魔王の言うように、せっかく長女として立派な背中を見せたのにと思わないわけでもない。

 だが、今くらいはそれを咎めるのは野暮というものだろう。


 それにアンナが実は泣き虫だという意外な一面を知れたのは収穫かもしれない。


「アンナ、よくやりましたね。ですが、泣く前にする事があるのではありませんか?」


 いつの間にか二人に近寄っていたアンナの母親が娘へと向かって見た目通りの穏やかな声で言った。


「は、母上……ひくっ……はい……申し訳ありません……」


 アンナは父親から身体を引き離し、俺の方へと向き直る。

 泣き腫らした目を残った方の袖で何度か擦ってから近づいてくる。


「フレイ……ありがとう……。私がここまで来られたのは、全て君のおかげだ……」

「まあ、それが俺の仕事だからな。でも、礼はありがたく……っておい、何してる……?」


 アンナは父親にしたのと同じように俺の身体に抱きついて胸に顔をうずめてきた。


「ん? 親愛の情を示すには、こうするのが一番だと聞いたことがあるのだが……違ったか……?」


 顔を上げたアンナが、きょとんと首を傾げる。


「いや、違う……こともないが……」


 間違ってはいないのかもしれない。

 それでも服が焼け焦げてかなり際どい格好の女性にされると流石に照れるというか危ういというか……。


「おい! こら! てめぇ! 俺の娘から離れやがれ! ぶっ殺すぞ! ド変態が!」

「ふむ……なるほど……これはあの者の言ってたフレイの匂いか……。なるほど……」

「に、にお……? な、何の話だ?」


 俺の胸に顔をくっつけて、大きな呼吸をしながら一人納得したように呟くアンナ。


 何を言ってるのか全く意味が分からない。

 というか向こうで雇い主が今にも飛びかかってきそうな程にブチギレてるんだが。


「アンナ! そいつから離れろ! 妊娠しちまうぞ!」

「え!? そ、そうなのか!?」


 魔王のとんでも理論を聞いたアンナが、顔だけ離してまた見上げてくる。


「いや、それは大丈夫だと思うが……それでも、そろそろ離れてくれた方が……」


 さっきから今度こそ本気で殺しに来られそうな殺気をひしひしと感じている。

 せっかくのお祝いムードの中であの時の続きだけは流石に勘弁して欲しい。


「いや……君との子であれば、そう悪くないかもしれん……。だからもう少しこうさせてくれ……」


 そうしてまたアンナは俺の胸にぎゅっと顔を押し付ける。


「ごらぁ! まじでぶっ殺すぞ! そんなに前の続きがやりてぇのか!?」

「アンナ……立派な子を産むのですよ……」


 怒り狂う父親、その隣では何故か感動してホロリと涙を零している母親。


 どうすればいいんだ。誰でもいいから助けてくれ……。


「あーーーーーーーッッッ!!!」


 俺の願いが通じたのか、どこからともなく大きな叫び声が聞こえてきた。


「ちょっと! アンナ! 私の彼に何してるのよ!」


 よく知る声が、ドシドシという足音を共に俺たちの元へと向かってものすごい勢いで近づいてくる。


「イスナ……どうしてここに……?」

「どうしてじゃないわよ! 貴方こそ何してくれてるのよ! そこは私の場所なんだから!」


 息を切らしながら駆け寄ってきたイスナが、アンナを押し退けるように抱きついてきた。


「お、おい……お前ら……」


 助けを求めたはずが、やってきたのはまた別の災難でしかなかった。


 異なる二つの柔らかさが同時に襲いかかってくる。

 まるで花畑の中にいるような甘い香りが鼻孔の中をいっぱいに満たしていく。


「あ゛っ! て、てめぇ……俺の娘を一人のみならず二人も……お、俺だってそんな事をなぁ……」


 向こうからは怒りを超えた怨嗟の声が聞こえてくる。

 そうは言われても、無理に引き離すわけにもいかないし俺にはどうしようもないんです。


「アンナ姉、やるじゃ~ん!」

「姉さん、おめでとうございます」

「これで五人……みんな合格……」


 一部始終をどこかで見ていたのか、姉妹たちが続々と姿を現す。

 皆が長女を祝福しながら俺たちのもとへと集結してくる。


「みんな……ありがとう……本当に……」

「感謝するくらいなら離れなさいよ! そこは私の定位置なんだから!」

「私の場所と言われてもだな……名前が書いてあるわけでもあるまいし……」

「書いてるのよ! 魂に刻み込まれてるのよ!」

「ちょ、ちょっと……お前ら本当に……」


 話を聞くこともなく、二人の姉は俺の身体の所有権を巡って争い続ける。

 三人の妹たちはそんな光景をただ笑いながら見ている。


 まじで誰か助けてくれ……。本当に誰でもいいから……。


「いえ~い! アンナちゃん、おめでと~!」


 祈りはやはり通じなかった。今度は背後からこの世で最も嫌な声が聞こえてきた。


「あっ! なんだか楽しそうな事してる~! 私も混ざっちゃえ~! え~い!」


 その声が聞こえた直後、今度は背中から特大の柔らかい何かがむぎゅっと押し付けられた。


「ちょっと! お母様まで!」

「も~イスナちゃんったら~、いつの間に先生とこんなに良い仲になっちゃったの~?」

「全ては前世より定められていたことなの! お母様にはお父様がいるでしょ!」

「え~やだ~。だって今日は先生の気分だも~ん」

「あ、あの……本当にそろそろ……」


 俺の心境や立場などは知ったことかと、二人は柔らか物質を競い合うように押し付けてくる。

 ここまで来ると逆に男として見られていないんじゃないかというような気がしてくる。


「娘のみならず……俺の女にまで……」


 向こう側からまた殺気を孕んだ怨嗟の声が聞こえてくる。

 しかし、俺にはどうしようもないから怒りの矛先を向けられても本当に困る。


「あっ、嫉妬するダーリンかわいい~」

「あーくそっ! もういい! 野郎ども! 宴の準備をしろ!」


 魔王が場内に何度も反響する程の大きな声で叫ぶ。

 続いてどこからともなく地鳴りのような音が鳴り響いてくる。


「な、なんだ……?」


 困惑も束の間、備えられた門の奥から魔族たちが場内へと向かってなだれ込んできた。

 その中にはロゼやリノの姿も見える。


 そして豪華なものから粗雑なものまで、多種多様な料理などが次々と運び込まれてくる。

 一瞬の内に、がらんどうだった試験会場が魔族でひしめく宴会場へと様変わりしてしまった。


「ほらほら、先生はこっちこっち~」

「ダメよ、お母様! 彼には私が作った料理を食べてもらうんだから!」

「ははは……」


 親と子に左右の手を引っ張られながら、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


「待て、貴様ら」


 背後から凄まじい威圧感を伴う声。今度は一体何なんだ……。


「あっ、お母さん……」

「あら、ノイン。何、どうしたの~?」


 その声にフィーアが反応し、続けてエシュルさんがその名を呼ぶ。

 それは紛れもなくフィーアの母親のものだ。


「今宵、これと語り合うのは我だ。貴様は大人しくゆずりゃっ!? にゃ、にゃにする!?」


 威圧感がふんだんに含めれていた声が、途中でやけに可愛らしい声へと変貌する。

 何があったのかは見えないが、それは話の途中で脇腹をくすぐられたような感じだった。


「あはは! ノイン、独り占めはダメだぞ。あたしだって話したいことはいっぱいあるんだからな。なあ、先生? サンはちゃんとやってるかい?」

「ふわ~わたしも先生とおはなし~」


 距離感のやけに近いサンの母親に、煙のようにフワフワと漂うフェムの母親。


 今度は母親たちも続々と、もはや玩具と化した俺の周りに集まってくる。


 仕方ない。教え子たちが全員無事に大きな試練を超えたんだ。

 それなら俺もこのくらいの試練は軽く超えてやろうじゃないか。


 決意を固めて、母親たちに誘われるがままに死地へと赴く。


 それからひたすら酔っ払い達の相手をさせられる盛大な宴は三日三晩続いた。

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