第13話 学園生活⑥
重く鋭い、俺の渾身の峰打ちが、ボルトの胴に入り込み、その体を真横にくの字に折り曲げる。
肉が潰れる嫌な手応えと、ゴキゴキと背骨が軋む音が、刀身から伝わってきて、かなり強く入ってしまったことを実感した。
「カ……ッ、ハッ……」
零れ落ちたのは苦悶の声。ありえない衝撃に、肺から空気が抜け出ていく残滓。
刀を振り抜くと、鈍い、くぐもった声を上げて、ボルトは宙を舞いながら真横に吹き飛ぶ。
そしてかなりの衝撃と共に結界にその身を打ち付けた。
峰打ちは、いくら刃がない面で打ち付けるとはいえ、凄まじい衝撃は内包している。
それどころか、骨をへし折ることすらあるので油断ならないのだ。
加えて刀という武器は、形状的に非常に薄くできている。
刃がないからと言って、切れないとは限らないのだ。
案の定、帰ってきた手応えは、肉を潰していくような嫌な感覚すら伴っていて、恐らく簡単には復活どころか動くことすら叶うまい。
十分な手応えを覚えた一撃を噛み締めるように、俺は構えていた武器を下ろす。
「こんなところだろ。レア、後の処置はお前の管轄だからな」
「確認されずとも知っている。いちいち下らん節介を焼かなくていいだろうに」
俺の指示に、レアは文句を言いつつも的確に応急処置を施し、救護担当の職員に渡した。
「それで、どうだった? アイツは」
レアが感想を聞いてくる。まあ、感想というよりは改善点だが。
救護員に運ばれていくボルトの姿を一瞥し、視線を戻す。
「なかなかの物だ。槍の振り抜く速度はいざ知らず、的確に後者を使い分けていて、まさに
今の戦闘で読み取れた、ボルトの総評はとても高水準だ。
その技術面や実技面は、申し分なく強力である。
いかんせん直ぐに頭に血が上ってしまうのは減点ながら、それを補ってなおあまりあるその戦闘能力は、大きなアドバンテージなのだろう。
これはもしや、他の生徒たちの評価も改めるべきかもしれない。そう考えながらも、次の戦いに備えてクールダウン。
そうこうしていると、一人の男子生徒が前に出てきた。
「では二番手は僕が。相手になってくれるかい、リゲル君?」
そう言いながら前へ歩み出てきたのは、一人の男子生徒だった。
見覚えのない男の言葉に不信感を抱いていたのが分かったのか、一礼。
「ああ、すまない。僕はシグルド・アークヴィレムと言うものだ。よろしくね」
「……アークヴィレム、ね。四大公爵家の一つとは。驚いたな」
我が国、《リーンヴァルテ皇国》は、中央に集権化していない珍しいタイプの国家だ。
統治権は四つに分かれていて、それぞれが強力な戦士としての実力も持っていると聞く。
四つの権力は、「
この国皇は、四つの公爵家から一人ずつ、世代が変わるごとに代わる代わる選出され、その者が輩出された公爵家は皇家と呼ばれることになっている。
アークヴィレム家は、その四代公爵家の一家であり、先々代の国皇を輩出している。つまり今は公爵家として扱われているのだ。
まさかその家の者と出会えるとは。これもこの学園に入ったからだと言うのが頭に来る。
とまあ、それは
詰まるところ、アークヴィレム家は武門なのだ。強い存在に憧れない戦士は居まい。俺は戦士ではなく剣士だが。
俺はある確認を取るべく、レアに声をかけた。
「レア、
「ッ、お前! ……仕方ない、《壱》だけだからな。他を使えば即、斬る」
「……割と本気で言ってんだから恐ろしいよなぁ……」
帰ってきたレアの返事に、思わずため息が溢れ、肩を竦めてしまう。
ただ、欲しいものは手に入れた。
縛り有りだが、それはそれで一興だ。
俺はもう一度刀を構え、不適に笑みを浮かべた。
「いつでもいいぞ。掛かってこい」
「胸を借りるつもりで行くよ。霞め——《ロストエリシュア》!」
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更新遅れて大変申し訳ないm(_ _)m
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