第63話 それでも俺は・・・

ま、まさか梨沙が他の男といるなんて・・ なんか怒りがこみ上げてくる。なんか嫉妬っていうのか? とにかく悔しい。


「待て待て・・ まだ梨沙とあの男が付き合ってると決まったわけじゃない」


そう。俺の初恋の相手はあくまでも梨沙だ。だから他の男といるのが悔しくてたまらない。

しかもあの男がまだ梨沙の彼氏だと決まったわけじゃないし・・


「とにかく確かめないと・・」


俺は梨沙を尾行することにした。


「ああ〜 嫌な予感がするぞ〜」


梨沙を1日尾行していたのだが、梨沙はとても楽しそうだった。話も弾んでいて、笑顔が絶えなかった。


「くっそ〜 あいつ、あんな楽しそうにしてんじゃねえか」


なんか梨沙が他の男と喋ってるのって嫌だな。別に俺は彼氏でもなんでもない。こんなこと、俺が考えることでもない。でもなんか嫌だ。


「あれ? 快ちゃん⁉︎」


「り、梨沙⁉︎」


し、しまった。ぼーっとしていて気づかなかった。これはまずいぞ。


「な、なんで快ちゃんがここに?」


「えーっと・・ なんというか・・ その・・・」


「その・・ 何?」


ど、どうしよう・・ なんて答えよう・・


「そ、そういえばさっきの男は?」


「・・・・」


まずい。急な話題転換はやっぱり無理か?


「・・あの人は塾の先生よ」


「へ?」


「・・まさか快ちゃん。そのことが気になってつけてきたの?」


「い、いやぁ・・ それは・・」


ば、ばれてますね。やばいですね。落ち着かないと。焦ってはだめだ。


「ふぅ〜ん。私のこと、そんなに心配だったんだ❤️?」


「そ、そういうわけじゃ・・・」


「とりあえず中に入ろっか?」


「・・・・・はい」


この雰囲気、どうしよう。とても俺からは言い出せない。梨沙と他の男が仲良くしてたのが嫌でしたなんて言えねえだろ。


「まったく・・ 快ちゃんは優しいね❤️」


「その・・ 嫉妬っていうか・・ 俺らしくないんだけど・・・ 梨沙と他の男が仲良くしてるのが嫌だったっていうか・・」


「へぇ〜 私のこと。そんな風に想っててくれたんだ〜」


今ははっきりとした気持ちは伝えられない。だから俺はまわりくどく言う。そして言葉をにごす。


「その・・ 梨沙! 俺は・・」


「はいはい。もうわかったよ。今回は許してあげる❤️ 」


梨沙、多分お前は何もわかってない。お前が俺の初恋の相手だということを。そして今俺が考えていることも。


「そのかわり・・ 私と学園祭、周ってくれるかな❤️?」


「・・・考えとくよ」


「よろしくね❣️ さあ、この話はもう終わり! 帰ろ!」


「ああ」


梅雨の季節。俺の気持ちはめまぐるしく変化していく。それはまるで今日の天気のようだった。

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