第14話 自意識過剰なのは一人で十分だ

「ど、どういうことですか?」


「先ほど申し上げた通りです。あなたは私と付き合うのです」


俺たちは今、近くの公園にいる。みんなの前であんな事言われたものだからさすがに俺も恥ずかしくなって、学校が終わったら速攻帰ろうとした。しかし、門の前で待ち伏せされていて公園に連れて来られたというわけだ。で、今はこの状況。初めて会った女子に急に告白でもされてみろ。しかもお嬢様だ。誰だって驚くだろう。


「それって冗談ですよね」


「・・・ やはりわかりましたか」


やっぱりか。ちょっとだけ「本気です」ってオチも期待したんだけどなぁ。やっぱり現実は悲しいもんだ。


「なんでこんなことをするんだ?」


「それは・・・ 私が美少女すぎるからよ」


「は???」


やっぱりこの女。自己意識激しいな。お嬢様って感じだな。はぁ~ どっかの麗奈ってやつを思いだすぜ。


「私は今まで何百回と告られてきたのです。それも私の外見ばかりを見て。そこで私は困っていたのですが、あなたのような人を発見したのです」


「どういうことだ?」


まったく意味がわからない。しかも告られて困るとか。一回そんなセリフを言ってみたいぜ。


「だってあなた、根は良さそうなのにあきらかにモテなさそうで青春したことないって感じじゃないですか」


「・・・・」


そういうことか。こいつけんか売ってんのか?初対面の相手にモテなさそうはないだろう。俺だって。モテたいのに。チヤホヤされたいのに。ああー。年頃の男子の欲望がうずいてくる。


「だから、あなたに彼氏を演じてほしいのです」


まぁ、それなら仕方ないか。ちょっとぐらい戯言にも付き合ってやろう。


「まぁちょっとだけだぞ」


「はい。ありがとうございます。それと、あなた。小説を書いていますよね?」


「・・ああ。知っているのか?」


「ええ、まぁ。結構面白かったですわよ」


これがいつもだったら嬉しいだろうに。この状況で言われてもなぁ。


「それはありがとな」


「えぇ。別にいいのよ。私もちょっと小説を書いていてね。今度一緒に書かないかしら?」


正直こいつといたら疲れるし何が起こるかわからないが、まぁ楽しそうだ。ちょっとぐらい書くか。


「わかった。今度な」


「まあ。ありがとう❤️」


雪村が。いや、結衣が急に抱きついてきた。勘弁してくれ。俺の周りには何でこんなにも積極的なやつが多いんだ。結衣の髪のいい匂いと温もりが広がっていく。もうこれ以上は俺の心が耐えられないな。


「も、もういいだろう」


「あぁ。ごめんなさい」


顔真っ赤じゃねぇか。あんま無理すんなよ。


「じゃあ快斗君。また明日ね」


「あ、ああ。バイバイ」


なんか嵐のような出来事だったな。俺の最初の予想通り、結衣はやばい奴だったな。てかこれ妹に説明したら絶対怒るぞ。そんなことを考えながら結衣の帰る後ろ姿を見ていると何故か懐かしいような気がした。


「あれ?何でだろうな?」

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