第12話 キスも仲良くなる第一歩

「おはよう、あかり」


「おはよう、お兄ちゃん」


はぁ~。やっぱり学校がない日はいいな。俺もあかりも思いっきり寝坊したよ。起きたら11時だったからな。まぁ今日はあかりと小説を書く大切な日だ。一瞬たりとも無駄にはできないぜ。


「そういえば、あかりはいつもどんな風に小説を書いていたんだ?」


ずっと疑問に思っていた。引きこもっている割には感情豊かに書けている。この俺よりもずっとだ。俺は国語力ねぇから仕方ないが。


「別に、普通に書いていただけよ」


その普通ってのがわからんなぁ。俺とお前の普通は全然違うんだぜ。てかこいつ。自分の小説がどれだけ人気あるかわかってないだろう。俺の作品なんて危うく没にされるところだったのに。


「お兄ちゃんは何を考えながら書いてる?私はある人のことを考えながら書いているのよ。それがやる気になってるんだと思う」


なるほど。俺は自分のことしか考えてなかったな。てかあかりが考えてる人って誰だ?そんな人がいたとは驚きだな。例の好きな人ってやつかな。


「よし。思いついたぞ」


俺はふと思いつき、必死になって小説を書いた。1番大事な人、あかりのことを思って。


「ふーぅ。やっと書けた」


書き終わった時には夕方の5時をまわっていた。今回俺が書いたのは短編ものだ。大切な妹の為に優しい兄が奮闘するという話だ。まずはあかりに読んでもら・・・ やめておこう。ちょっとこれは恥ずかしい。何しろ俺の思いが色々詰め込まれてる小説だからな。この思いを伝えるのはもう少し後にしようか。


「お兄ちゃん。絵を描いたんだけど、どうかな?」


そういえばあかりは画力も一流だったな。もちろん俺は才能が全くないからな。


「おぉー すげぇ めっちゃ可愛いじゃないか」


「そ、そう?ありがと」


その絵は本当に可愛いかった。長い髪に丸い顔、優しそうな瞳にスタイルのいい身体。どれもが素晴らしい。


「まるで、お前みたいじゃねえか」


「も、もう。それを言っちゃうからお兄ちゃんは」


あかりは顔を真っ赤にしてそう言った。いや、別に変なこと言ったわけじゃないんだが。だって本当に似ているんだ。俺の前に2人も天使が。そんなやりとりをしながら俺は幸せにひたっていた。やっぱ兄妹はこうじゃなきゃな。


「お兄ちゃん。この前の私の好きな人ってわかる?」


ふいにあかりがそんなことを聞いてきた。そういえばそんなことを言っていた。うーん。誰だろうな。まったく見当がつかないぜ。


「まったくわからん」


「ふーん。わからないんだ」


何故かあかりはちょっと怒っていた。いや、さすがに俺でもお前の好きな人はわからんよ。


「私の好きな人はね。あまりパッとしなくて、特に飛び抜けた才能があるわけでもない。でも頼りがいがあって、優しくて、いざという時に必ず助けてくれる人なのよ」


あかりは好きな人はすごいな。俺とは真反対だな。あかりにそんな風に思ってもらえるなんて羨ましいよな。一瞬俺じゃないかと期待したじゃねぇか。


「誰がわかった?」


あかりがさっきよりも顔を赤くして聞いてきた。


「まだわからん。俺じゃないのは確かだな」


「もう。お兄ちゃんのバカー!」


バカって。俺今何か言ったか?お前の好きな人は多分一生かかってもわかんねぇよ。


「まぁとにかく、今日は小説作り一緒に手伝ってくれてありがと❤️」


妹からの頬にキス。やばい。俺もう死んでもいいかもな。


「あ、ありがとう」


「・・・・ やっぱり今のこと忘れて!」


あかりは部屋にかけ込んでいった。はぁ。やっぱり顔に出てたかな。俺が嫌ならキスしなければいいのに。なおさら傷つくぜ。てかさっきのキスはやっぱ照れる。もう寝れねぇじゃねぇか。


「はぁ〜 あかりの・・・」


「お兄ちゃんの・・・」


「バカ〜〜〜〜!!」




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