第10話 こいつ、めんどくせぇ~~

「おーい。あかりー。お前のクラスメイトの田中ってやつが来てるぞ。会うか?」


「絶対にい・や・よ」


ですよね~ この前はあそこまでしたから美香とも打ち解けたものの、今回は見知らぬ客人だしちょっと無理かな。


「麗奈ちゃんだったっけ。今日は無理そうだから、また明日来・・」


「わ~い、ソファーがある~。気っもち~」


おいおい。ここは俺んちだぞ。何自分の家っぽいこと言ってんだよ。


「ほら、お兄さんも横に座って❤️」


こいつは一体なんなんだ。俺を誘っているのか?とりあえず帰ってもらわなければ。


「とりあえず今日は帰ってくれ」


「それよりお兄さん。一緒に遊びましょうよ」


だめだ。こいつ全く話を聞いていない。


「プルル。プルル」


「???」


ん。俺の携帯だな。こんな時に誰からだ?


「もしもし」


「兄貴?」


電話の主はあかりだった。


「スピーカーにしてくれない? 私、電話だったら話せるかもしれない」


「OK。本当に大丈夫だな?」


「うん。多分・・・」


俺は携帯をスピーカーにし、麗奈の前に置いた。


「もしもし? 赤坂さんかな? ああ、呼びづらいからあかりちゃんって呼ぶね。私のことも麗奈って呼んでね」


「・・・う、うん」


やっぱ初めっからぐいぐいやってんな。ほら。あかりも反応に困ってるじゃねえか。


「あかりちゃんに聞きたいんだけど。なんで学校に来ないのかな?」


「・・・・」


やっぱりその質問からくるよな~ でも今は答えられないだろう。気持ちの整理が落ち着いてないと思う。


「じゃあ質問を変えるけど。今ここに来てくれない?」


「・・・それは無理だと思う」


「ふ~ん。じゃあこうするしかないね」


すると、急に麗奈が抱き着いてきた。


「お兄さ~ん キスとかしたことありますか~」


「・・っ。ど、どういうつもりだ」


「あかりちゃんが来ないなら~ お兄さんを今奪っていきますよ~」


やべぇ。髪の毛のいい香り。そして、胸に当たる柔らかい感触。速くなる心臓の鼓動。こ、これは、俺が耐えらんねぇ。


「兄貴には手を出さないで」


「何て? 聞こえないよ~」


「兄貴には手を出すな!」


あかりの怒った声が響き渡る。あかりが怒ったのを初めてみたな。


「もう、知らない!」


プーッ、プーッ。電話が切れた。


「おい! これはやりすぎだろ!」


「でもおかげで妹さんの本音が聴けたでしょ」


まぁ、確かにそうだが。てか俺にも謝ってくれよ。一瞬でも本気にしちまった俺がバカみたいじゃねぇか。


「正直、お兄さんは妹さんのこと、どう思ってるんですか?」


「俺は、命の次に大切だと思っている。俺の、たった一人の家族で大事な宝物だ」


「でも、お兄さんは別に学校に行かなくてもいいようなかんじですけど」


「俺は半年ぶりに会えた妹が大切だ。出てきただけでも第一歩なんだ。無理に学校に行かせようとは思わない」


「なるほど。少しだけ疑っちゃいました。妹さんと、変な関係なんじゃないかと」


「あいつは、・・・妹だ。恋愛対象じゃない。でも俺はあいつが大好きだ」


「なるほど。参考になりました」


俺も大人げない。ついつい本音がでてしまった。別にこいつに話す内容なんかじゃなかったのに。


「それでは、さよなら。また来ますね」


「・・・あぁ」


もう来なくてもいいんだけど。そう思いながら俺は麗奈を送り、二階に上がった。あかりが今の話を聞いてなければいいんだが。階段を上がりきると、あかりがいた。

はぁ~~ 最悪だな。






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