第5話 俺を困らせるんじゃねぇ~~
「ねぇねぇ、いるんでしょ」
「まぁ、いるのはいるが・・・」
妹のあの心の状況で会わせるのはさすがにまずいだろう。しかも、性格が合わなさすぎる。
「ちょっとトイレだ」
これはまずい。俺はそう判断して、あかりに電話することにした。
「出ない」
あかりがいっこうに電話に出てくれない。これはまずいな。
「もしもし」
「何よ兄貴、さっきから」
やっと出た。てか気付いてるなら最初から出ろよ。切羽詰まってるってのに。
「お前に会わせたい人がいんだよ。会ってくれるか?」
「絶対にい・や・よ」
「プープープー」
予想していた通りの答えだった。てか電話切るの早くね。俺だって妹ともっと話したいのに。
「快斗~トイレで何ブツブツ言ってんの?」
俺は恐る恐るトイレから出た。すると、
「今さっき妹と電話してたっしょ」
いやバレるの早えな。俺ってそんなに顔に出るのか?まぁいいだろう。問題はこの状況をどうやって乗り越えるかだ。あの妹に会わせるわけにはいかないからな。
「今妹はちょっと出かけててだな」
「二階の部屋見てくるわ」
はぁぁ~俺は相当顔に出ているらしい。てかまずい。どうしよう。会わせたらなにより俺の命が危ない。後で妹に何されるかわからん。
「きょ、きょ、今日のところは帰ってくれ。うめあわせはいつか絶対するから」
「じゃあねぇ~私の言うこと一つ聞いてくれたら許しちゃう」
何をお願いされるかわからないが、仕方ない。
「いいだろう。何か一つだけ聞いてやる。一つだけだぞ」
「やった~~」
妹を必死に守った俺、かっこいいなぁ。やばい。また顔にでてたかもな。美香に帰る準備をさせ、玄関まで送った。そういえば一つ聞いておきたいことがある。
「なんで俺の考えていることわかったんだ?」
「何年一緒にいると思ってるの。快斗は快斗でしょ❤」
顔を赤くして突っ立ってる俺をおいて美香は去っていった。
その日の夜、俺は妹に呼ばれた。こんな経験は初めてだな。恐る恐る妹の部屋に入ると、
「兄貴、今日はありがとうね」
妹の言葉に俺はきょとんとしていた。まさか、俺と美香の勉強をずっとみていやがったのか。こいつは一体何がしたいのだか。
「別に俺は何もしていないだろう」
そうだ。別に俺は美香に帰ってもらっただけなのだ。恐ろしい代償を払ってしまったが。
「だから、その、・・・とにかくありがと」
あかりは顔を真っ赤にして部屋から出てった。あいつ熱でもあんのかな。少し心配だが。妹を追いかけてリビングに行くと、ソファーで寝ていた。俺は近づいてあかりの寝顔を見ていたのだがこれがすごく可愛い。これが同級生だったら好きになっていたかもしれない。
「俺も仲直りできてありがとうな」
独り言のように言った。だが、あかりを起こしてしまったみたいだ。いや、寝ぼけているのか?ふいに俺に抱きついてきて、
「兄貴、好・・・」
ん、聞こえなかったな。
「あかり、何て言ったんだ?」
ともう一度聞いた。すると、あかりは完全に目が覚めたのか、
「わぁーー ど、ど、どうして兄貴がここにいるんだ」
「いや、だってさっきお前が部屋を飛び出していったじゃないか。
そういえば今さっき何て言いかけたんだ?」
「今さっきって?」
「ほら、兄貴、好」
「わぁーーーー 何でもない何でもない」
「でも・・」
「何でもないからーーー」
あかりはさっきより顔を真っ赤にして部屋に走っていった。本当になんて言ったんだろうな。やれやれ。まだまだ仲良くなるには時間がかかりそうだ。
「兄貴のバカ」
ん、なにか聞こえたような気がするが、まぁ気のせいだろう。
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