第6話 初デート
今日は日曜日だ。空は青一色の晴天。こんな日は小説でも書きたいな。なんてことを考えながら俺は遊園地の入場口の前にいた。せっかくの日曜日だったのだがこれには理由がある。つい昨日のことだ。
「ねぇねぇ快斗、明日遊園地連れてってよ」
「何が悲しくてお前を遊園地に連れて行かなきゃなんねぇんだよ」
当たり前だ。明日は貴重な日曜日。しかも、そろそろあかりと一緒に小説を書きたいしな。
「じゃあこの前のお願いってやつを使うわ。私と遊園地にデートに行ってちょうだい」
「・・・わかったよ」
「やった〜明日10時に遊園地に集合ね。絶対に来てね」
もう少し声を小さくして欲しいのに。周りの視線がすごく痛い。あとその笑顔はやめてくれ。俺の心がもたないだろう。それにしてもめんどくさいデートを受けてしまった。まぁこのようなお願いをされるような気はしていたがな。デートか。俺にとって初デートだな。俺もやるからには本気でやろう。
そして今にあたる。考えてもみたら美香相手に本気になるのもおかしなものだ。もう少し気を緩めておこう。
「おまたせ〜快斗。ちょっと待った?」
「いや、今来たところだ」
まさか30分も待ったなんて言えないだろう。それにしても視線がどうしても美香にいってしまう。上は俺たちの学校の制服、下は白のミニスカートだ。はっきり言って結構露出度高めだ。
「あー、今私に見惚れてたっしょ」
「べ、別に見惚れてねぇよ」
「まーた照れちゃって。」
俺は顔を真っ赤にしながら入場券を買いに行った。
「ねぇねぇ快斗、あれ乗ろうよ〜」
「ねぇねぇ快斗〜 あれ買って〜」
「快斗〜 次はあっちだよ〜」
まぁこうなるよな。気付いたら昼の1時だ。はぁ〜。時間って怖えな。俺は午前中振り回されてばっかだったな。
「そろそろ休憩しないか」
「ええ〜もう? しょうがないな」
俺はそこにあるベンチに腰を掛けた。美香は元気なものだ。勉強にもこれぐらい必死になってくれたらいいのだが。
「そう言えばさぁ〜 快斗って彼女いるの?」
「いるわけねぇだろ。デートだって初めてだよ」
「へぇ〜 じゃあこれが初デートかぁ」
美香はなんだか嬉しそうだった。俺、今何か言ったかなぁ。まぁいいか。
「快斗、次あれ乗ろうよ」
美香が指を指したのはこの遊園地最大のジェットコースターだった。
「えっと・・・ マジでこれ乗るの?」
「そうだよ〜」
ちょっとこれは怖いな。落ちるところとかほとんど90度じゃねえかよ。美香は平気なのか。
「今日はデートでしょ。一緒に乗ろ❤️」
「・・・ わかったよ」
また可愛さ負けした。あの笑顔はもはや凶器だな。
「このジェットコースターはたいへん揺れが大きいです。怖い方はしっかりとお連れ様と手を繋ぎ下さい」
アナウンサーの声が響く。え、これってそんなに怖いの?大丈夫かな。
ジェットコースターが出発する。俺の怖い気持ちとは反対にどんどん走っていく。もうちょっとで落ちるところだ。
「快斗〜 怖いから手握るよ〜」
え、嘘だろ。やべぇ、落ちるよりもドキドキするかも。
「キャーーー」
そんな高い声が響きわたる。俺はというと、
「ギャーーーーーーー」
落ちる+美香の手。やばい、これはもはや夢ではないのか。ドキドキが2倍になっていく。
「ふぅー やっと終わった」
ジェットコースターを降りた後は気まずくて俺からは話しかけられない。いや、考えてみろ。何故俺が美香にドキドキするんだ?こいつはただの幼なじみだろ。そう思うと、少しは気が楽になった。
「快斗〜 手握ってくれてありがとう〜 快斗もちょっとはドキドキしたかな?」
やべぇ。俺また顔に出てたかな。
「ま、まぁ。ちょっとだけな」
「へへ〜ん。照れてる照れてる」
やめてくれ。俺の心のメンタルがもたない。第一に俺は美香を恋愛対象として見たことないからな。
気付けば夕方の5時。
「そろそろ帰る時間だぞ」
「ええ〜もう帰るの? 時間って速いね〜」
俺たちは写真を1枚だけ撮って電車に乗り込んだ。電車の中ではおしゃべりをしていたのだが、いつの間にか俺も美香も寝ていた。気付いたらもう家の手前の駅だった。
「じゃあ、俺の家こっちだから」
「快斗、ちょっと待って。目をつぶって」
目をつぶる?嫌な予感しかしないが。まぁいいだろう。俺は目をつぶった。
「快斗、今日はありがとうね❤️」
頬に柔らかい感触。これはまさか・・・
「おい、美香! これってまさか・・・」
目を開けると美香はすでにいなかった。今のは気のせいだったのかな。この日の思い出は永遠に記憶に残るだろう。俺は夕日を背に家へ帰った。
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