第3話 ついに妹が・・・
俺は家に帰ると、まず2階に妹の様子を見に上がったのだ。
「あかり、いるのか?」
「・・・・・」
相変わらずの無反応だった。俺は仕方なく下に戻ろうとしたのだが、何とドアが開いて中から美少女が出てきた。
「久しぶりだね、兄貴」
俺は口をあんぐり開けた。まず、こいつ誰だ。こんな美少女、俺は知らないぜ。てか今こいつは「兄貴」って言ったよな。マジかよ。半年って怖えな。
「じゃあ」
すぐにドアが閉まった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て〜」
半年ぶりに会えてそれはないだろう。一瞬でも妹に惚れてしまった今の時間を返せ。てか今まで呼んでも出てこなかったのに、なぜこの瞬間に出てきた。
俺はうろたえつつも一つ聞きたかったことを聞いた。
「今人気のあるあの小説、作者お前じゃねえのか」
俺の小説の人生を奪ったあの憎き小説。そもそも俺の小説と作風が似すぎているのだ。しかも実話まで似てやがる。だから、これはもしやと思い聞いてみることにしたのだ。悔しいが、向こうの作者の方が腕は確かだしな。
「・・・・」
これは決まりだな。まさかあの小説の作者が一つ屋根の下にいるとはおもわなかった。しかも自分の妹だったとは。俺は思い切って悩みを打ち明けた。
「今、お前の小説のせいで俺の小説が打ち切りになりそうなんだ。そうすると、俺はお前と暮らせなくなる。お前は俺のこと嫌いかもしれないが、俺はお前とくらしたいんだ。お前の小説の腕は確かだ。だから俺と協力して小説を書いてくれないか。頼む」
「・・・・」
だめか。まぁしょうがないよな。半年以上会ってないんだ。俺はあきらめてリビングに戻ろうとしたそのとき、
「兄貴、ちょっと話を聞かせて」
え、マジで。いいのか。俺は驚いたが、感動もした。まさかあの妹が心を開いてくれるとは。
「ちなみにまだ兄だと思ってないし、心も開いてないからね」
心の言葉バレバレだったか。まぁいい。初めて入るあかりの部屋。ベッドの上には可愛いぬいぐるみや抱き枕が、棚には漫画や小説がぎっしり詰め込まれていた。机の上には、原稿が置いてあった。よく見てみると、「それでも私は兄が大好きだ」という文字と、「作者:匿名」という文字が書かれてあった。その下には可愛らしいイラスト付きだ。
「それ、私の原稿」
あかりはそっぽを向きながらそう言った。
「これ、お前が一人で書いたのか?」
「そうよ。何か悪い?」
いちいち突っかかってくるなぁ。そこが可愛いのだが。
「用件はさっき言った通りだ。俺と一緒に小説を書いてほしい」
俺は頭を下げた。そしてあかりの反応を待った。すると、
「何で?どうして私にそこまで構うの?私は兄貴の為に何一つしていない。むしろそのお節介が迷惑なのよ。小説家なんてそこら中にいるじゃない。もう私に構わないでよ」
予想外の言葉に俺はとまどった。なぜ妹にこんなに世話を焼くのか。そんなのあの出来事があった日から答えは出している。
「それは、お前が妹で俺が兄だからだ。可愛い妹の為ならなんでもできる。そして、俺は寂しかったんだ。父さんも母さんもいないこの家で。そりゃあお前はわがままで俺に何一つしてくれていない。でもお前に家族になってほしかったんだよ。お前がいるだけで俺は嬉しかったんだよ。それ以外に理由なんてあるわけないだろうが」
俺は若干怒鳴るように言ってしまった。気が付くと妹の目にはうっすらと涙があった。これは言いすぎたな。俺はなんて馬鹿なんだろう。妹と仲良くしたいだけなのに、逆に自分の言いたいことだけ怒鳴り散らして。これじゃあ兄貴失格だな。俺は静かに部屋を出ていこうとした。すると、
「兄貴、待ってよ」
あかりが急に抱きついてきた。髪のいい香り、そして心の温かさが伝わってきた。
「あのね、私も寂しかったの。パパもママもいなくなって。そして学校にも行けなくなった。でも兄貴は一生懸命私を大事に思ってくれた。本当は嬉しかったのよ。でも部屋から出ることはできなかった。そんな中、寂しさをまぎらわすために小説を書いていたの」
まさか、あかりがこんなに思い悩んでいたとは。すぐに気づいてあげられればよかったのに。なんか俺も目のまわりが熱くなってきた。
「兄貴、そろそろ離して」
よく見ると、あかりの顔が真っ赤になっていた。あれ、そんなに強く抱きしめたつもりはないんだが。
「とにかく、あなたのことは兄貴と呼ぶけどまだ認めてないから。でも心は開いてあげる。これからもよろしくね、小説パートナーさん❤️」
やっぱり妹が美少女なんて反則だ。
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