第4話 同級生と始まり

どうやら私の予想は的中したらしい。




目の前の男───もとい西園寺さいおんじ叶夢かなむ君が不審そうな顔をする。


その声は、私を訝っているせいか、いつもより低く、冷たく。



「お、同じクラスの……│舞萌琅まほろ來乃らな……」


思わず声が震えてしまった。



「ああ、舞萌琅か。こんな時間に何やってんだ?」


自身の腕時計へと視線を落としながら彼が問う。



何やってる、か……


公園で一人、許されるはずのない涙なんか流して。


私は本当に、何をしているんだろう。



「…………分からない……」


「……は?」


私の返答に、西園寺君は眉間に皺を寄せた。


当然のことだ。質問にちゃんと答えない私が悪いのだから。



しかし、その後も│だんまりを決め込む私に、彼は何かを察したらしく。それについてはそれ以上追究してこなかった。



「……まあ、理由が何であれ……


家庭問題とかじゃねぇんだったら、一人で彷徨ったりして、親とか心配するんじゃねぇのか?」


それは、とても心配そうな声色で。


優しさからの言葉だと、言われなくとも分かっているのに、酷く胸を締め付けて。



「っ……う、うぅ……」


堪えていた涙が、再び溢れ出した。


拭っても拭っても、それは止まることを知らず……



「!?お、おい!どうしたんだよっ!?


何か傷付けるような事を言ったんなら謝る、だから泣かないでくれ!」


急に私が泣き出したことに驚き、戸惑いながらも目の前に屈み込んだ彼。



───西園寺君のせいなんかじゃない。


そう言いたいのに、涙と嗚咽が邪魔をし、上手く言葉にできない。


せめて否定だけはしようと、首を横に振った。


しかし、彼には思うように伝わらず。



「ほっ、ほんとに悪かった!ごめん!」


彼は尚も、私に謝ってきた。



あたふたとする西園寺君と、首を振り続ける私。


そんな、傍から見れば彼が悪者に見えるだろう光景が、暫く続いた───




どれくらい経っただろう。


漸く落ち着きを取り戻した私に、ずっと付き添っていた西園寺君が安堵の息を漏らした。



「ごめん、なさい……」


落ち着いたと言っても、嗚咽は未だ治まらず、時々言葉が詰まりながらも私は言葉を紡ぐ。


「西園寺君のっ、せいなんかじゃ、ないよっ……」



話しても……良いことなんだろうか。


話したらきっと、迷惑をかけてしまう。


私は誰かに、甘えていい人間なんかじゃない。


そんな思いもあった。


けれど何よりも……


〝誰かに頼りたい〟そんな思いが心の大半をを占めていた。



「お父さんと、お母さっ、と、お姉ちゃん……っ


二日前に、事故に遭っ、て、もうこの世界に、は、いないの……っ」


俯いていても、西園寺君が息を呑むのが分かった。



「……親戚とかは、いないのか?」


恐る恐る、といった様子で西園寺君が問いかけてくる。



それは……


さっきまでのことを思い出して、口をつぐみ、黙り込む。



ああ、迷惑をかけてしまった。


こんなこと言っても、困らせるだけだと分かっていたのに……



「……ごめん、なさい。迷惑だった、よね?


今のは、忘れ……」


「───なら、俺の│うち来るか?」



私の言葉を遮って、彼は唐突にそう言った

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Future Pupil 彩桜 真夢歩 @mayuho0514

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