第11話 期末試験の前哨戦⑤
〜再試験当日の朝7時30分〜
「よし、朝の勉強もキリのいい所までやったし学校行くか。」
家を出る前にLINEをチェックする。ついさっき緒方からメッセージが来ていた。
「おっはよー!遂に再試験だね。それで、今日は学校何時に行くの?」
ちなみに、俺は緒方とLINEを交換している。さらに言えば、他の4人とも交換している。
「再試験は8時45分からだから、もう家出るよ。1時間前には着きたいし。」
緒方からのメッセージに返信するとスマホをポケットに入れ、学校に向かう。10分ほど歩いただろうか。校門が見えてきた。校門の前に女子が数人いた。誰だろうかとよく見ると、緒方たち5人だった。それに気づいた俺は校門へと足を走らせた。俺が来たことに気づいた緒方たちは手を振っている。
「おっはよー!!」
「ハァ...ハァ...。どうして...みんなが居るんだ...?」
俺は息を切らしながらも緒方たちに聞いた。
「どうしてって、応援しに来たんだよ。」
「だからわざわざ俺に学校に行く時間を聞いてきたのか。」
「そゆこと!」
緒方が笑顔で言う。
「それじゃ、再試験前に気合。入れとかなきゃね。」
楠木さんは、そう言うとカバンの中から鞭を取り出した。
「えっ?いやいやいや!ちょっ!それだけは...!」
「ぷっ!あはははは!冗談だよwやっぱ、小林君ってイジりがいがあるなぁ〜w」
「ほーら、唯。その辺にしときな?」
「はーいw」
鞭打ちされないと分かった俺は安心した。再試験勉強中も楠木さんは鞭をずっと持ってはいたが、実際に打たれたことはなかった。だが、サボったら打たれそうでずっとビクビクしながら勉強していた。
「小林さん、再試験頑張ってくださいね。社会は、とにかく覚えたことを焦らず思い出してください。」
「久保田さん...!ありがとうございます!思えば一番丁寧に教えてくれていた気がします!」
「英語は苦手な長文も最後まで読むんだよ?頑張ってね、ユースケ!」
「武田さん、ありがとうございます!」
その後も、数学、国語、理科の最後のアドバイスをもらった。
「じゃあ、頑張って。小林君。付け焼き刃ではあるけれど、全力を出してきてね。」
「はい!天王寺さんもありがとうございました!それじゃあ、行ってきます!」
「私たちが教えたんだから、全教科60点は取ってよ!取れなかったら...。」
「取れなかったら?」
「鞭打ちだー!」
「そ、それだけはご勘弁を!」
「冗談だよw」
またイジられた。次は、もうこの手には乗らないぞと心に誓った。
「では、頑張って来てください!応援してます!終わったらこの間のスタジオに来てくださいね!」
「ありがとう、緒方!」
こうして俺は、5人に見送られ再試験へと臨んだ。
〜数時間後〜
「そこまでっ!」
再試験が全教科終わった。答案は先生に提出して、採点されてすぐに返ってきた。
結果を受け取ると、そのままスタジオに向かう。そして、5人と合流した。
「おつかれ!結果はどうだった?」
「全教科...。60点以上...。取れました!」
そう言いながら結果の書かれた用紙をみんなに見せる。結果は、国語が66点、数学が62点、英語が72点、社会が69点、理科が70点だった。
「おめでと!頑張って良かったじゃん!」
みんなの表情が緩み、安堵していた。楠木さんを除いて。楠木さんだけは、不満気な顔をしていた。
「く、楠木さん、言われた通り全教科60点以上取りましたよ?」
「いや、そうだけどさ...。なんで、あたしが教えた数学が一番点数低いのかな?」
なるほど。それで不満気な顔をしていたのか。でも、言われた通り60点以上だったからいいのではないだろうか。
「やっぱりお仕置きが必要かな?」
真顔で鞭を手に楠木さんが言う。流石にこれは恐怖すぎる。本気で言っているようで怖い。
「まぁまぁ、ここスタジオだしさ。きっと次はもっと頑張るんじゃないかな!ねっ、ユースケ?」
「はっ、はい!もちろんです!」
楠木さんは持っていた鞭をカバンの中にしまった。
「まぁ、今回は美緒に免じて許してあげる。けど、また次一番低かったらお仕置き。」
「はい!これからも頑張る所存です!」
「やっぱ、イジるのって楽しいねwww」
またか。もうこの手には乗らないと誓ったのに...。
「次は期末試験、頑張りましょ。小林君。」
「また、よろしくお願いします!」
天王寺さんの一言で気合が入る。そう、これはあくまでも期末試験の前哨戦。本当の戦いはこれからだ。期末試験。俺は、一教科でも赤点を取ってしまうと進級できなくなってしまう。だから、何がなんでも勝たなくてはならない。
そして、また5人に勉強を教えてもらい、遂に戦いの日を迎えた。
第12話 「期末試験のその前に」に続く。
次回更新は3月22日(日)です。
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